071 『嘆きの地下墳墓』②
『嘆きの地下墳墓』の中は、石造りの通路が迷路のように広がっていた。
通路には横穴が掘られ、その横穴には死体が安置されている。ヤンの話では、この死体は誰かの遺体というわけではないらしい。ダンジョンが作った模造品というわけだ。雰囲気を盛り上げるために設置されたオブジェクトみたいなものだね。
まぁ、その臭さは本物なんだけどね。おかげで鼻が曲がりそうだよ。
「せあっ!」
「やあああああ!」
カクカクと歩くスケルトンにシールドバッシュを叩き込み、オレがぶっ飛ばしたスケルトンにジゼルが拳を叩き込む。
スケルトンの頭蓋骨が、まるで花火のように弾け飛んだ。
ゲーム的な設定だが、拳は打撃属性の物理ダメージであり、スケルトンには効果抜群だ。
それに、ジゼルとの連携もやりやすい。薄々わかってはいたけど、こいつは戦い慣れているな。おかげでサクサクスケルトンを倒せるよ。
「よくやった。皆、ドロップアイテムを探せ」
すべてのスケルトンを倒すと、フェルディナンが指示を出す。もうチームのリーダーはフェルディナンで決定だな。
「殿下、今回はドロップアイテムはないようです」
「そうか」
フェルディナンがオレとジゼルを見た。
「アベルとジゼルと言ったな? お前たちの動きは素晴らしい。とても一年生とは思えないほどだ。今回の実習で、我々二年生、三年生は一年生の指導を任されているのだが、お前たちに教えることはなさそうだ」
「「ありがとうございます!」」
フェルディナンにお褒めの言葉を賜り、オレとジゼルはハキハキと答える。オレとしては社交辞令のようなものだと思ったのだが、ジゼルは感激したように頬を赤くして、その瞳には涙を溜めていた。
庶民が王族に褒められるとこんな感じなんだな。オレとしてはあんまり王族に対する敬意とかないから参考にさせてもらおう。
「では、進むぞ」
「はい」
戦闘が終われば、オレたちはまた隊列を組んで『嘆きの地下墳墓』の通路を進んでいく。
オレは先頭に立って進むのだが、通路の分かれ道ではオレがどちらに進むか決定する。
二年生、三年生はもうダンジョンの道順を知っているので、敢えて一年生に進む道を選ばせるのが通例らしい。
普通の一年生はダンジョンの正しい道順など知らないだろうが、オレは前世で何度もプレイした結果、ダンジョンの正しい道順を覚えていた。
オレもダンジョンに潜る前は適当に道を選んでお茶を濁そうと思ったよ?
でも、このダンジョンは臭過ぎるんだ。肌に感じる空気もまるで粘りけを帯びているようで気持ち悪いし、オレは一刻も早くダンジョンを出たい。
オレはなりふり構わず前世の知識を総動員して、正しい道を選び続けた。
その結果。
「アベル、お前の勘は素晴らしいな。よもや一度も迷わずに第二階層にたどり着くとわ」
「大したものです」
フェルディナンとエリクが驚きを滲ませながら褒めてくれた。
「ありがとうございます」
目の前に広がる下層へと続く階段。この階段を下れば、『嘆きの地下墳墓』の第二階層に行けるはずだ。
この頃になると鼻が慣れたのか、あまり臭さを感じなかった。こうなるってわかっていたら、敢えて間違った道を選んでもよかったな……。
「さっそく第二階層に向かうぞ。各員、気を引き締めろ」
「はっ!」
フェルディナンの号令で、オレたちは第二階層に続く階段を下っていく。
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