070 『嘆きの地下墳墓』
朝食を食べ終わったオレたちは、ダンジョンの入り口のある学園の裏側へと足を踏み入れた。
大きな校舎に日の光が遮られて影になった校舎裏は少しジメジメとして涼しい気がした。
「じゃあな。お互いがんばろうぜ」
「おう」
「がんばるんだなー」
エロワとポールと別れ、フェルディナンたちの集まる場所に行くと、オレが最後のようだった。
「遅れました」
「いやいや、まだ時間は過ぎていないよ。殿下、集まりました」
「うむ」
エリクの言葉にフェルディナンが頷く。
「そろったな。皆もわかっていると思うが、今日はダンジョン攻略の本番だ。今回は『嘆きの地下墳墓』に挑戦することになる。目指すは『嘆きの地下墳墓』の完全攻略以外ない。各員、一層奮励努力せよ。エリク」
「はっ! では、これから皆の持ち物を確認するぞ。まずはジゼルからだ」
「はい」
三年生のエリクが、チームメンバーの持ち物をチェックしていく。
「確認終わりました。不足はありません」
「よし。では先生方に報告してダンジョンに潜るぞ」
いよいよダンジョンか。『ゴブリンの地下王国』以外では初めてのダンジョンになるな。
その後、フェルディナンが見知らぬ先生に準備が整ったことを報告すると、待つことなくオレたちがダンジョンに潜る番になった。
『嘆きの地下墳墓』の入り口は、まるで廃線になったボロボロの地下鉄への入り口のように地下への階段が続いていた。空気が一段と寒くなり、薄っすらと黒い瘴気が漂っているような気がしてくる。何かが腐敗したような臭いが微かにした。
「エリク」
「はっ! 皆、マスクを着けろよ。松明に火を。……よし、アベル、気を付けて進んでくれ」
「ああ」
事前の会議で、オレがチームの先頭を歩くことに決まっていた。盾を持っているからね。何かあった場合も防御ができるからだろう。
まぁ、オレの実力を信頼してもらったって思おう。
マスクを身に着け、松明に火を着けると、いよいよ『嘆きの地下墳墓』の中へ入る。地下へと続く階段の先には錆の浮いた鉄の両開きの扉があった。
後ろを確認するように見ると、フェルディナンが大きく頷くのが目に入った。
「いきます……!」
軋んだ音を立てる扉を開けると、もあっとした湿った空気が体を撫でていく。その瞬間――――。
「うっ!?」
「くっさ!?」
思わず呻いてしまった。後ろからジゼルの悲鳴のような声も聞こえる。
マスクに付けた匂い袋のいい香りも貫通して腐敗臭がなだれ込んでくる。
二年生、三年生の先輩から苦笑するような雰囲気を感じた。
二年生、三年生の先輩方は知ってたんだろうなぁ。この臭さを。そりゃマスクが必要だと言うはずだよ。
「止まっていても仕方がない。進むぞ」
「はい……」
フェルディナンの声に押されるようにオレはダンジョンの中へと歩き始める。
あれだけダンジョンを楽しみにしていたのに、正直、もう入りたくない。こんなに臭いなんて思いもよらなかった。
それでも、オレは松明を片手に歩いていく。
『嘆きの地下墳墓』の中は日の光が届かず、どこまでも暗い。そんな空間を松明の明かりを頼りに進んでいく。
ゲームでは、松明なんて用意しなくてもくっきり通路が見えたし、もちろんこんな不快な腐敗臭なんて感じなかった。これも現実ならではの苦労になるのだろうが……最悪の気分だ。
オレは今までこういったゲームとの差異を楽しんできたのだが、今回ばかりは楽しめそうにない。
「はあ……」
無意識に大きなため息が漏れていた。
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