065 自主練とダンジョンイベント
「ふぅ……。ここならいいかな?」
その日の夜。オレは男子寮を抜け出して、グラウンドの片隅に来ていた。見つかったら怒られるので、自室の窓から抜け出してきた。自室が一階で助かったよ。
「さて、やるか」
オレが怒られるのを覚悟で外に出てきた理由。
それは、一人で剣技を磨くことにある。
自覚はしているが、オレはそんなに器用な方でもなければ、物覚えがいい方でもない。むしろ泥臭く努力して、何度も反復して体に覚え込ませ、やっと覚えられるくらいだ。
そんなオレが学園でテオドールやエルネストに勝てた理由。
それは、今までモンスターを倒してきて身体レベルが高かったこと。そして、幼少期から武術を磨いてきたことにある。
ようするに、人よりも早く走り出したから先頭を走っているだけで、オレは決して足が速い方ではないのだ。
そんなオレにとって、日課ともいうべき鍛錬をサボることはできない。うかうかしてたら、後ろから抜かされてしまうからね。せっかく作ったリードだ。このまま先頭を走って最強にたどり着きたいところだ。
そのための努力なら惜しまない。
「ふっ! せあっ!」
いつもより抑え気味に声を出し、右手に持った剣を振るう。月光を浴びて刀身が闇の中で白く浮かび上がり、なんだかテンションが上がった。
今のオレ、けっこうかっこいいのでは?
ダメだ。邪心は捨てよう。
思い出すのは、アンセルムが見せた芸術的な剣捌き。頭にしっかり刻まれたその動きをトレースするように剣を振るう。
そして、次は剣が襲ってくると仮定し、その剣を捌くイメージで剣を振るう。シャドーボクシングみたいな感じだね。
「いや、こうか? なるほど。こうか」
そして、少しずつ改悪と改善を繰り返していく。アンセルムがやってるのを見た時は、もう少し簡単そうに見えたんだけど、やってみるとかなり難しい。やっぱり目で見るのと実際に自分の体で動かすのでは難易度が桁違いだ。
「せあっ! せあっ! せあっ!」
月明かりだけが照らすグラウンドの片隅で、オレは一心不乱に剣を振るった。
◇
朝練からの学園の授業。それが終われば一人で自主練習。そんな日々が二週間も経ったある日。重大ニュースが飛び込んできた。それが――――。
「今から一週間後、皆さんには学園のダンジョンに潜ってもらいます」
「おぉー!」
「ふぉー!」
「ついにきたのね、この時が……!」
「ダンジョンだなんて、大丈夫かしら?」
コランティーヌ先生の言葉に、教室の中に興奮したような声と不安そうな声が響き渡る。
「皆さん、聞いてください。今日はダンジョンに潜る時のチーム分けをおこないます。今回は、三年生、二年生の先輩たちと合同の縦割りチームで潜ってもらうことになります。各学年二人ずつの計六人のチームになります。まずはこの箱の中に入った――――」
ついにきたか。ダンジョンイベント!
実はこの学園の敷地内には、三つのダンジョンがある。
コランティーヌ先生の話を聞く限り、今回はゲームでのシナリオ通り、一番難易度が低いダンジョンに行くようだ。
そして、箱に入ったクジでチームを決めるのも一緒だね。この時、主人公には右か真ん中か左を選べる三択の選択肢があり、シャルリーヌ、マルゲリット、そして錬金術師の男の子、バルナべの中からパートナーを選択できる。
まぁ、パートナーに選べるのは、いずれもこれまで主人公に接点のなかった高位貴族で、将来仲間になるキャラクターとの出会いのイベントだね。
このイベントで、ジゼルとギーのどちらが主人公かわかるはずだ。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。
下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。
☆1つでも構いません。
どうかあなたの評価を教えてください。




