061 朝練②
「シッ!」
鋭い呼気と共にブリジットが左右の手に持つ短剣の連続攻撃を放つ。
それを迎え撃つのは大剣を持った縦にも横にも大きい巨漢、ポールだ。大剣を盾のように使って器用にブリジットの攻撃を捌いていく。
「ハッ!」
正面からは崩せないと判断したのだろう。ブリジットは左右にステップを踏むと、なんとかしてポールの守りを突破しようとする。
それに対するポールは不動だ。動揺することなく、最低限の動きだけでブリジットの攻撃を防いでいく。
オレも父上によくやられたものだ。
どうやらポールとブリジットでは、ポールの実力がブリジットを凌駕しているらしい。
「チッ!」
埒が明かないと思ったのか、ブリジットが大胆な行動に出た。今まで以上にポールに踏み込み、フェイントを仕掛ける。
だが――――。
「そこなんだな!」
「ッ!?」
持ち前の素早さを活かしてポールの背後に回り込もうとしていたブリジット。しかし。その顔の前でポールの左フックが止まっていた。
ポールの勝ちだな。
「ま、参りました……」
「ありがとうございましたなんだな」
ふぅーと大きく息を吐くポール。
ポールの得物は幅広の大剣だ。ポールに聞いた話では、オレの父に憧れて大剣を選んだようだ。体格に恵まれ、力持ちのポールにはもってこいの武器だね。
まったく、父上の影響力はすごいな。
そして、意外だったのはブリジットだ。
まさか、ポールのような巨漢と真っ正面から切り結べるほど胆力があるとは。かわいい顔して意外と豪胆らしい。
ブリジットの武器は二本の短剣。そして、どうやら短弓も使うらしい。器用な奴だね。
エロワもポールもブリジットも、ゲームではオレと同じく名前も登場しないモブキャラだ。当然、オレには彼らのステータスや武器適正、ギフトの有無や使えるスキルに関する知識はない。
もしかしなくても、ゲームで登場した主要キャラよりも弱キャラだろう。
でも、彼らだって生きているし、強くなろうと頑張っている。
オレはゲームに登場したキャラはもちろん好きだけど、こういうモブキャラのがんばりというのが堪らなく愛おしく感じた。
オレ自身がモブキャラに転生したからそう思うのだろうか?
わからない。
でも、できることならこいつらの努力が報われてほしいなと思った。
勝負の付いたポールとブリジットの向こう。二人の少女が向かい合ってグラウンドに座っているのが見えた。シャルリーヌとアリソンだ。二人とも目を閉じて静かに息をしている。二人とも、今は瞑想中だ。
ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』では、主人公は学園での行動を選択することによってステータスが伸びる。瞑想することによって最大MPを増やせるのだ。
シャルリーヌは氷と炎の魔法使い、アリソンは神聖魔法が使えるからMPの最大値を増やすことは重要だ。手数が増えるのはそれだけで有利になるし、MPの回復アイテムの多くがMPの最大値の割合で回復する。
MPの最大値が多くなると、それだけ恩恵も多いのだ。
オレもMPを増やすために瞑想しないとな。
「じゃあ、次は相手を代えて模擬戦しよう。オレはポールと、エロワはブリジットとやってくれ」
「わかったんだなー」
「よし、やっか!」
「よろしくおねがいいたします」
途中、シャルリーヌが瞑想中に寝ていたというハプニングがあったが、オレたちは、そのまま朝のホームルームが始まるまで朝練を続けた。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。
下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。
☆1つでも構いません。
どうかあなたの評価を教えてください。




