059 朝訓練のお誘い
わたくし、シャルリーヌ・ブラシェールの婚約者アベル・ヴィアラットは、とてもマメな人だった。
「おはよう、三人とも」
朝のホームルーム前の教室。今朝も朗らかに挨拶をしてくるアベル。その頬は少しだけ上気していて、タオルで顔の汗を拭いていた。
どうやら今日も早朝から訓練をしていたみたいね。
「おはようございます、アベル。エロワとポールもおはようございます」
「おは……」
「なんだな……」
アベルは活き活きしているけど、その隣に座るエロワとポールはぐったりとしていた。たぶん今日もアベルに付き合って早朝から訓練をしていたのだろう。
辺境の人たちって武術を鍛えないと気が済まないのかしら?
一度早起きして、アベルたちの訓練を見たことがあるけど、なかなかハードなのよね……。アベル自身が神聖魔法を使えるから、死ななきゃいいみたいな荒っぽい感じだったし……。
「今日も訓練していたの?」
「ああ、やっぱり朝練はいいよ。頭がシャキッとするし、今日一日の準備運動には持ってこいだ」
「準備運動……」
視線を横に移動すると、机に突っ伏して肩で息をしているエロワとポールがいるのだけど……。とても準備運動という運動量には見えないのだけど!
「そうだ。シャルたちも明日から一緒にどうだ? いい運動になるぞ?」
「ぇ……」
アベルが爽やかな笑みを浮かべて、わたくしたちを朝の訓練に誘ってきます。
わたくしは思わず助けを求めるように後ろにいるアリソンとブリジットへと振り返りました。
アリソンはいつも通りキリッと、ブリジットは少しだけ眠そうにしています。
「二人とも、どうしようかしら?」
「アベル様の腕前はかなりのものです。ご一緒に訓練することで、何か得られるものがあるかもしれませんよ。シャルリーヌ様は朝が苦手ですので、苦手の克服にもつながるかと」
アリソンが、キリッとした表情のまま答えます。
「ちょ、ちょっとアリソン」
しれっとわたくしが朝に弱いことを暴露するなんて!?
「シャルリーヌ様、女子寮での朝のぽやっとしたシャルリーヌ様も大変かわいらしいですが、淑女としては隙を見せすぎかと。この機会に早起きを始めましょう」
「もー! アリソンが言わなければアベルにはバレなかったじゃない!」
たしかにアリソンはいつもキリッとしていてかっこいいけど、わたくしにはそんなのは無理よ。だって、早起きするくらいなら、少しでもお布団の中で寝ていたいんですもの。
わたくしは最後の希望、ブリジットを見上げます。
「ブリジットはどう思いますの?」
「え? ああー……」
声をかけると、ぼーっとしていたブリジットがようやく動き出した。
ブリジットもわたくしと同じく朝に弱い民。きっと朝練なんて望まないはず。
「いいの考えなのではないですか? 体を動かすと、自然と目も覚めてきますし」
「ぇ……」
まさか、今にも寝てしまいそうなブリジットからそんな言葉が出るなんて!
まったくの予想外ですわ。これではお断りする理由が……。
ちらっと後ろを振り返ると、爽やかな笑みを浮かべているアベルと目が合いました。
「シャルリーヌはどうする? 無理にとは言わないけど」
「はぁ……。わたくしも朝の訓練に参加しますわ……」
ああ……さようなら、わたくしの朝のまどろみの時間……。
「やった! シャルリーヌは魔法を使えるから、参加してくれると助かるよ」
「もー……」
ズルいわ。そんな輝くような笑顔で言うなんて。
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