058 一人反省会
「うーむ……」
エルネストとの決闘の後、オレは一人、男子寮の自室で反省会をしていた。
ベッドに腰かけ、エルネストとの決闘を思い返す。
「みんなは褒めてくれたけどなー……」
そう。三年生のエルネストに勝ったことで、みんなが褒めてくれた。すごいと言ってくれた。
オレとエルネストの体格を見れば、オレが圧倒的に劣っている。十代前半の二歳差は、絶望的なまでの体格差だった。
ボクシングで例えるなら、フェザー級とヘヴィー級が試合するようなものだ。
たしかに、そんな体格の差を跳ね退けての勝利は賞賛されるべきなのかもしれない。
だが、オレはエルネストとの決闘の内容に納得がいっていなかった。
とくに、オレがエルネストの懐に潜り込もうとした緒戦。決闘の趨勢を決める大事な局面。あの時、オレはエルネストに勝つ気満々だった。なんなら一撃で倒してやるとも思っていたくらいだ。
だが、その結果は散々だった。
エルネストのレイピアに突きまわされて、あえなく足を下げてしまった。
レイピアが初めて戦う武器だったことを考えても、いくらなんでも他にやりようがあるだろと今ならば思う。なにも真っ正面から戦うことだけが戦いのすべてではないのだ。
そして、自分から踏み込んだのにもかかわらず、生まれて初めて味わったレイピアの刺突から逃げるように後退した。
もしこの時、エルネストが魔法ではなく、レイピアでの追撃を選択していたら、オレは何もできずに負けていたかもしれない。
その後のエルネストの魔法攻撃の対処もあまりいいところがなかったな……。
風魔法は初めて見たけど、それにしたってもう少し工夫して戦うことができたはずだ。
その点を踏まえて……。
「決闘の中身は三十点ってところかな? 勝てたから笑い話で済むけど、もし負けていたら……考えたくもない……」
レイピアも風魔法も初めて相手にした。初めてのことなのだから上手くいかなくても仕方がないと思う心もある。
だが、そんな泣き言は勝負の世界では通用しない。
今回は命のやり取りがない人間との戦いだったが、野生のモンスター相手に待ったもルールもない。負ければ命を含めてすべてを失う。そんな世界だ。油断はするべきじゃない。
「やっぱり、何が相手でも勝てるように強くならないとなぁ。くそっ! 最強になりてえ!」
オレはべつに金持ちになるだとか、偉くなるだとか、人気者になるだとか、そんなことを求めているわけじゃない。
ただただ強くなりたい。
それは前世からの夢だった。
男の子なら誰もが憧れる最強の男。
月日が経つにつれて現実を知り、みんながその夢を諦めてしまった。
かく言うオレもその一人だ。
最強になりたいという思いは次第に現実に押し潰され、埋もれてしまっていた。
「だが……!」
だが、この世界ならば!
オレだけが知っているこの世界の秘密。レベルやステータス、隠しダンジョンに隠しアイテム。裏技、レアアイテム、攻略プラン!
オレはこの『ヒーローズ・ジャーニー』の世界で知らないものはない!
この世界ならばあるいは、オレは最強になることができるかもしれない!
「やってやる! やってやるぞ!」
オレはベッドから立ち上がると、拳を高く突き上げていた。
「こうしちゃいられないな! さっそく訓練だ! それと、早起きして朝にも訓練しよう! エロワとポールも誘ってみるか? あいつらも辺境の男だし、きっと最強になりたいよな!」
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