054 エルネストとの決闘②
決闘の開始と共に、オレは腰から剣を抜いて、盾を前にかまえて走り出す。
相手はレイピアも魔法も使えるオールラウンダーだ。こちらから距離を詰めなければ、延々と魔法攻撃を喰らうことになる。
エルネストは迫るオレに対して、迎え撃つようにフェンシングのような構えを取った。
オレとエルネストでは体格が違う。先手は身長の高いエルネストが取る。
「ッ!?」
その時だった。レイピアが予備動作もなく動き出す。大きくしなって、まるでヘビが噛み付いてきたようだ。
レイピアの先端はまるで魔法のようにオレの持つ盾を避けると、首に向かって伸びてきた。
「ぐッ!」
慌てて首を避けると、レイピアはまた軌道を変えてオレの右肩を刺した。
刃物で切られた時特有の鋭い痛みが走る。
レイピアはオレの右肩の骨まで達していた。
オレは痛みを堪えて右腕の剣を振るう。レイピアの細い刀身を叩き折ろうとしたのだ。
だが、レイピアはまるで飴細工のようにぐにゃりと曲がると、エルネストの手元へと戻っていく。
これがレイピアか。知識では知っていたが、こんなにも戦いづらいとは……!
「よく避けたものだね。でも、次はどうかな!」
ファーストヒットに気をよくしたのか、エルネストが次々とレイピアを振るう。
そのすべてがオレの持つ盾を器用に避け、オレの体に突き刺さる。
「ぐぅ……」
レイピアのような武器がこんなにも脅威になるとは思わなかった。
レイピアの刀身はぐにゃぐにゃにしなるほど柔らかく、しかし、その攻撃力は高い。
突きに特化した刃先は鋭く、想像以上に深く体に突き刺さる。急所を突かれれば、即死しかねない。
なんとか急所を避けながら、レイピアの間合いから離れた。
「逃がさないよ! ウインドカッター!」
その瞬間、視界の一点が景色が歪む。魔法が来る……!
オレは思いっきりサイドステップを踏むと、大袈裟なくらいの間合いで回避行動を取った。
すると、エルネストから一直線にオレが先ほどまでいた場所の地面が切り裂かれる。
「ちっ!」
なにも見えなかった……。これが不可視の刃、風魔法か。
「ヒール」
「それ!」
ヒールを唱えると、それに被せるようにエルネストがウインドカッターの魔法を放つ。
オレはまた大袈裟なくらいの距離を取ってウインドカッターを回避した。
「まだまだいくぞ!」
エルネストを中心に、大地に幾筋もの切れ目が走る。
ウインドカッターが見えず、余裕をもって回避するのを続けていると、だんだんこちらの体力も削れてきた。
ウインドカッターを嫌って近づけばレイピアの嵐。間合いを取ればウインドカッターの連射。まったく、羨ましくなるくらい強い戦術だ。
「だけど、もう十分かな」
オレは回避をやめて立ち尽くす。
「諦めてしまったのかね? まあ、一年生にしてはよくがんばった方だと思うよ。さあ、立会人に棄権を申し込みたまえ」
「諦める? 何を諦める必要があるんだ? 勝負はここからだよ」
「……根拠のない強がりかな? 物わかりが悪い奴は嫌いだよッ!」
エルネストがオレに左手を向けると、まるで空間が歪むような光景が見えた。
もう何度も見たウインドカッターの発動風景だ。
「これで終わりだ!」
ついにエルネストの手からウインドカッターが発射される。
オレは剣を上段に構えてその時を待った。
――――今だ!
「せあっ!」
その瞬間、感じるのは吹き飛ばされそうなほどの風の塊。ウインドカッターの魔法の中核だ。
それを斬る!
ウインドカッターの魔法はたしかに不可視の刃だった。だが、不可視なのは刃だけで、魔法の中核は景色の歪みとして現れる。むしろファイアボールよりも魔法の中核が見やすい。
あとはそれを斬れば、ウインドカッターの魔法は霧散する。
このようにね。
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