052 決闘リターンズ
「先ほどの決闘は無効だ! 同じ条件で決闘を受けてやろう」
「え?」
テオドール、お前は何を言ってるんだ?
「先ほどのって朝のだろ? あれはコランティーヌ先生が立会人だから、正式なものだぞ? それに、クラスメイトたちも見ている。それを無効だなんてさすがに無理があるんじゃないか? 今頃、先生が辺境伯に手紙を書いてるぞ?」
「くっ! まあいい! だが、お前には先の決闘の条件の白紙を賭けた決闘を受けてもらう! これは絶対だ!」
「なるほど……」
さすがに辺境伯に怒られると思ったのだろう。何が何でも決闘したいらしい。
だが……。
「つまり、ヴィアラット男爵家の独立、辺境の貴族たちへの借金の帳消し、土下座での謝罪。この三つを白紙にしたいわけだな?」
「そうだ!」
テオドールが屈辱そうな顔をして噛み付くように吠えた。
「じゃあ、それと同価値のものを要求してもいいんだろ?」
「ふんっ! せいぜい高望みをしてみせろ!」
こいつ、一度は負けたのにすごい自信だな。おそらく奴の隣にいる上級生が関係しているのだろうが……。
しかし、どうしたものか……。
本来ならば、入学初日にテオドールに絡まれるのは、主人公のイベントなのだ。
なんでオレに絡んでくるんだ?
オレが主人公になったという線はないだろう。オレは主人公が持つべきギフトを持っていない。
なんでテオドールだけ本来のシナリオとは外れた行動を取るんだ?
このあたりを聞かせてもらおうか。
「その一、オレが勝ったら、テオドールにはある質問に答えてもらいたい」
「そんなことでいいのか? いいだろう」
「その二、今後ヴィアラット男爵家に対して不利益なことをしないこと」
「ふんっ! いいだろう」
「あとは……」
あとはべつに要求することなんてないんだよなぁ。
ヴィアラット以外の貴族領も独立というのはさすがに望み過ぎだし、辺境貴族の辺境伯への借金も帳消しにした。
望めばテオドールの廃嫡もいけるかもしれないが、次に嫡子になる奴がまともかもわからない。それなら、条件を付けたテオドールの方が御しやすいだろう。
「どうするか……。シャルリーヌは何か欲しいものとかある?」
「わたくしも特に……。アベルが欲しいものがないのでしたら、金銭を要求したらいいんじゃないかしら?」
「金銭か」
父上も王都での生活はなにかと金銭が必要とか言っていたし、ちょうどいいかもしれない。
「どれくらいの金額が妥当かな?」
「わからないわ。アリソンならわかる?」
「そうですね……」
シャルリーヌに話を振られたアリソンが、指を顎に当てて考える。
「でしたら、先ほどのお話にあった辺境貴族の借金の合計金額を要求してみてはどうでしょう?」
「なるほど……」
自分たちが貪っていた分だけ罰を受けるということか。因果応報って感じで気持ちがいいね。
「いいね。そうしよう。聞いていたな?」
「わかっている。もういいな? 決闘はここ闘技場でおこなう。立会人にはコランティーヌでも呼ぶ。決闘の形式は一対一だ」
その時、テオドールが醜悪な笑みを見せた。
「紹介しよう。俺の決闘の代理人であるエルネスト・ラシーヌ先輩だ! 三年生でも上位の使い手にして、今年の武闘祭の優勝候補だ!」
「一年生の決闘に顔を出すなど大人げないと言ってくれるなよ? テオドールくんたっての願いだからね」
そう言って軽薄に笑うエルネスト。
「そんなの卑怯よ!」
「恥知らず!」
「そうなんだなー!」
「辺境伯の嫡子がそんなこといいのかよ!?」
「うるさい! これが戦略というやつだ。そんなに言うなら、お前たちも上級生を連れてくるんだな!」
シャルリーヌたちからあがる非難の中、テオドールは太々しく笑って答えた。
テオドールがエルネストと一緒にいる時点でなんとなくそんな気はしてたが、やっぱりそうだったか。
しっかし、なんでテオドールは主人公に仕掛けるイベントをオレに仕掛けてくるんだ?
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