051 闘技場
「広いわね。ここは何かしら?」
放課後。オレたち六人は、学園の中を探検していた。
今いるのは、まるでローマのコロッセオのような石造りの建物だ。人がいるのか、中からは歓声のようなものが聞こえてくる。
「こちらは闘技場ですね。主に武術や魔法の習練に使われる建物のようですわ」
「へー」
アリソンは手帳に視線を落としながら答える。事前に情報収集したのか、アリソンは行く先々で部屋の説明しをしてくれた。物知りだね。
「中に行ってみましょ」
「ああ」
「そうじゃなくて。ちゃんとエスコートしてよ」
「わかった」
シャルリーヌをぎこちなくエスコートしながら、オレたちは闘技場の中に入っていく。
「アリソンちゃんは物知りだね。なんでそんなに知ってるの?」
「寮で先輩方から聞きましたので」
エロワがアリソンに話しかけながら一歩近づくと、アリソンはエロワを避けるように一歩遠ざかった。
エロワ……。強く生きろ。
「へ、へえ! すごいね! す、すごいね!」
「ありがとうございます」
エロワの褒め言葉のボキャブラリー不足が露呈し、アリソンは冷たい瞳でエロワを見ていた。
エロワは玉砕だね。ドンマイ。
「…………」
「…………」
その後ろではしずしずと歩くブリジットと、彼女に何度か話しかけようとして結局話しかけれないポールがいた。
ポールが話しかけようとしているのは雰囲気でわかるだろうに。敢えてその空気に乗らないということは、ブリジットはポールと仲良くする気はないという意思表示なのだろうか?
これはポールも玉砕かもなぁ。
「わあ!」
トンネルのような薄暗い通路を抜けると、一気に視界が開けた。
丸く区切られた空の下、たくさんの生徒たちが戦闘訓練をおこなっていた。主にタイマンをしているようだな。
剣や槍、弓。さまざまな武器が振るわれ、魔法の輝きが闘技場を彩っている。
みんな戦闘能力向上に熱心なんだね。なんだかオレもやる気が湧いてくる光景だ。
このマンディアルグ王国では、個人の強さが貴ばれる傾向が強い。
なんでも、初代王はモンスターを狩りまくってこの地に平穏をもたらしたという言い伝えがあるからだ。
それ故に、建国以来モンスター退治は貴族の義務とされているのだ。
だが、ご先祖様ががんばったからか、ここ最近は状況が変わりつつある。
モンスターの出現が少ない王国の中央部分では、モンスター退治するための武力よりも財力や権力の方が重要視されることが少なくない。
中央の貴族は辺境の貴族を野蛮や礼儀知らずと蔑み、辺境の貴族は中央の貴族を遊び呆けていると非難する。そんな状況が静かに深刻化していた。
今はまだお互いに口だけだが、手も出るようになったら最悪だよね。王国が二つに割れちゃうかも。
まぁ、そんな大きな問題は、モブのオレには関係ないけどさ。
そのあたりは主人公にがんばってもらいたいところだ。
「あのタイの色。上級生ね」
「へー」
シャルリーヌの言葉にちょっと感心する。学年でタイの色が違うんだ。なんだか日本の学校みたいだ。制服も日本の高校生みたいだし、この世界は日本の影響を受けているのかもしれない。
それにしても、一年生はホームルームの後、解散してしまったけれど、上級生はこうして自主練習しているみたいだ。
個人の武を貴ぶ気風は昔からあるから、それが受け継がれているのかな。それとも、中央貴族と辺境貴族の摩擦に気が付いた人間の政策だろうか?
「お前たちは!?」
「ん?」
声の方を向けば、テオドールがいた。
だが、テオドールだけじゃない。細身で長身の男と一緒だ。タイの色が違うから上級生だろう。
どこか見覚えのある男だった。
たしかこいつは……。
「予定とは違うが、探す手間が省けたというものだ。おい、アベル! 決闘だ!」
「決闘?」
薄々そんな気はしてたけど、テオドールはまた決闘がしたいらしい。
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