107 ミノタウロス戦
「BUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
その瞬間、ミノタウロスはまるで銃撃にでもあったかのように激しくよろめいた。ミノタウロスの左腕は、二の腕部分から千切れたように吹き飛び、血の代わりに白い煙がもくもくと溢れ出していた。
片腕になったミノタウロスはもう手が付けれないほど暴れていた。
ミノタウロスにしてみれば、フラッシュで視界を潰されたと思ったら、今度は左腕をもぎ取られたのだ。それはパニックになっても仕方がないかもしれない。
それにしても、ダンジョンのモンスターってもっと無機質なイメージがあったけど、意外と感情豊かなんだな。
そんな場違いなことを思いながら、オレは口を開く。
「今だ! たたみかけろ!」
「かしこまりました」
オレの声にいの一番に反応したのは、ブリジットだった。彼女の声の後にはボウンッと弓の弦が複数回鳴る音が聞こえて、タタタッとミノタウロスの顔に矢が三本生える。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びをあげてミノタウロスに突っ込んでいくのは、長槍を構えたエロワだ。その穂先はミノタウロスの左足の甲を貫き、ミノタウロスを磔にすることに成功する。
「どっこいしょー!」
そこに飛び込んできたのがポールだ。彼は普段の言動からは想像もできないほど機敏な動きでミノタウロスに接近すると、担いだ大剣をまるでバットのようにスイングする。
ポールの大剣はミノタウロスの右膝にぶち当たり、その半ばまで断ち切った。
「BUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
ミノタウロスは悲鳴のような声をあげると、そのままどうっと前のめりに倒れた。さすがにポールの一撃は堪えたようだ。
だが、ミノタウロスの生命力は凄まじく、その状態でもまだ生きていた。
それどころか、まるでおもちゃをねだる子どものように残った手足をバタバタさせて足掻いている。
「アイスランス!」
そんなミノタウロスに無慈悲に撃ち込まれるのは、巨大な氷の杭だ。先にミノタウロスの左腕を奪ったシャルリーヌの得意魔法である。
アイスランスは、今度はミノタウロスの頭から胴体を貫き、ミノタウロスを串刺しにした。
ぼふんっと白い煙となって消えるミノタウロス。これで戦闘終了だ。
「皆様、お怪我はございませんか?」
戦闘が終わり、アリソンがみんなの体調を確認していくが、みんな無傷のようだ。
いくら十階層の階層ボスとはいえ、階層ボスを無傷で討伐できたのは大きいね。
ミノタウロスのいたボス部屋の奥には、小規模なドーム状の部屋のようなところがあり、その地面には幾何学的な魔法陣が光り輝いていた。帰還用の魔法陣だ。
オレたちは魔法陣の中に入らないようにさらに奥へ移動すると、今度は下り坂が現れる。これが第十一階層への道だ。
その下り坂の途中で、オレは足を止めて振り返った。
エロワ、ポール、シャルリーヌ、アリソン、ブリジット、みんながオレを見ている。
「みんな、ミノタウロスの討伐おめでとう。みんないい動きだったよ。特にシャルリーヌの魔法の威力には驚かされた。おかげで短時間でミノタウロスを撃破することもできたし、無傷での勝利だ。いい感じだね」
「当然よ」
そう腕を組んで言うシャルリーヌだが、ちょっと得意げな顔をしているのをオレは見逃さない。
たぶん褒められて嬉しかったのだろう。そういう素直な反応がかわいらしい。スクショ撮りたい。
「『洞窟』は全部で五十階層ある。この調子でどんどん進んでいこう。でも、適度に休憩も必要だ。ここはモンスターも来ない安全地帯らしい。ここで休憩していこう」
オレは率先して洞窟の地面に座ると、みんなも座り始める。いつもなら泥が付くから座らないだろう女の子たちも、みんな思い思いに座って足を延ばしていた。
オレは腰のマジックバッグから水差しとコップを取り出すと、エロワとポールにコップを渡す。
向こうでは、シャルリーヌが同じようにマジックバッグからポットとティーカップを出しているのが見えた。どうやら向こうはお茶を飲むらしい。
まぁ、オレたち辺境組は優雅なお茶よりも水をがぶ飲みしたい気分だ。
「かぁあー! 水がうめえ!」
エロワのコップに水を注いでやると、さっそくエロワがコップを呷る。まるで酒でも飲んでいるみたいでちょっと笑ってしまう。
「おかわりなんだなー」
「ああ」
ポールも一息に水を飲んだみたいで、すぐにおかわりを要求してきた。
オレはポールに水差しを渡すと、マジックバッグから昼食を取り出していく。
腹時計では、今は午後三時くらいかな。
「遅くなったけど、ここで昼食も食べようか」
「おおー! 待ってました!」
「食べたいんだなー」
「そうね。わたくしも準備するわ」
「ありがとうございます、シャルリーヌ様」
「わたくしもうお腹ペコペコですの」
「腹いっぱいは食べないようにな」
そんな注意をしながら、オレたちは昼食のサンドイッチを頬張るのだった。
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