30 恋人
どうぞよろしくお願いします。
「朋佳さんも、申し訳なかったね」
川上先生が申し訳なさそうに言う。
「いえ、でもファミレスの駐車場で、逃げようとする男の人を、ぶん殴ってつかまえてくれたのは先生だと聞きました。
助けてくれてありがとうございます」
アキからも田中先生からも聞いた。
アキ曰く『川上先生、やさしそうな顔して、戦う時は戦える男だった。見直した』とのことだ。
「あの時は……、本当に怒って……。
ぐったりしている若宮を見て、本当に……、頭にきて……」
「でもさ、先生が殴っちゃったのもあって、警察に届けにくくなったんじゃ?」
「でも、大切な……生徒を傷つけられて、冷静でいられるか!?」
「先生! 落ちついて! はい! 車の運転中!」
私と先生のやり取りをなんだか微笑ましそうに見ている母に気がついて、私は黙った。
その後は、学校のこととか、高二の行事とかそんな当たり障りのないことを話して……。
マンションに到着し「ありがとうございました。明日は普通に登校します」と川上先生に伝える。
明日は終業式だもの。
先生の車がぐるっと回って道路へ出て行く。
「私も川上先生なら……、あなたの恋人としてありだな」
母がそう言って、笑った。
「何ですと!? とっかえひっかえですよ!?」
私の言葉に「それは昔のことでしょう」と一言言ってから続けた。
「今はだめだけど、卒業しても、その気持ちが続くようなら、告白してすっきりするのもいいかもね」
「……うーん。これから……かな」
私はうれしい気持ちを抑えて、しかめっ面で答えた。
終業式。
私は普通に登校した。
朝、改札を出て少ししたら、アキと合流して一緒に歩く。
「おはよう!」「おはよう、トモ!」
普通に挨拶して……。
「アキ、本当にありがとう。
アキがいなかったら、どうなってたか……」
「……最初はなんか探偵の調査みたいで面白いとすら思ってて、真理先生が何をしようとしてたのかわかった時は震えちゃったよ。
そんなことを考える人が、私達のそばに先生としているってことが怖いよね。
そういうことも考えさせられたし、トモを守れて、本当によかった」
「うん、ありがとう。相原君にもお礼伝えといて!」
「うん。ふふっ」
「何?」
「私と相原というか、ナオって呼んでるんだけど、付き合うことになった」
アキが照れっと言った。
「えー!! おめでとう!
私のおかげ!?」
「なんでトモの……。
あ、まあそうかもね」
「ふふふっ、なんかうれしい。
相原君、本当にいい人だから。
えっ、ということはマユミもアキも恋人持ちかぁ……。さびしいのう……」
ちょっとがっくりして見せる。
「トモには帝がいるからいいじゃん。
なんかそういうお互いに秘めた恋もいいんじゃない?」
私は返事ができず、苦笑した。
読んで下さり、ありがとうございます。
相原素直なので、愛称はナオです。
あら、どっちも出席番号早そうな名前だった。




