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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
第1章 若宮朋佳
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29 天帝と妹

どうぞよろしくお願いします。

 私はすぐに他の兄弟とは遠ざけられた。

 天帝となった兄のそばに置かれたのだ。

 溺愛され、かわいがられて育ったのだと思う。

 それこそ、兄の手で甘やかされて。

 兄は青年の姿で成長が止まり、その後は老いることもなく……。

 兄以外の身内とは会うことはほとんどなく、幼かった私はそれが異常だとはわからなかった。


 私も天人の血の力のせいか、少女から女性らしくなったところで成長が止まったようだ。

 そうすると、兄は私をさらに外に出さなくなった。

 ガラス張りのような部屋を与えられ、幼い時はやさしく触れ合っていた兄が、私に近づかなくなり、外からずっと見ているようになっていた。

 周りにいるのは女官とたまに見かける護衛の者達。


 女官達から兄が妻を迎えることを聞いた。


 私は兄の妹だけど……。心がチクチクした。

 戸惑う私に彼女達は言った。


「天帝は姫様のことを妹以上に大切に思われていますね。

 しかし、大人となられ、稀少な天人の力を現した姫様には重要な使命がありますよ。

 天帝の決めた方に嫁ぐことです。

 先日、姫様をもらい受けたいと申し込まれた将軍がいたのですが、天帝は怒って退けたそうです。

 これから、そのような申し込みも増えましょう。

 天帝の稀少な天人の血筋を伝える姫として、いつかは天帝のためにどこかへ嫁がなくてはなりませんよ」


 そうか……、兄のためなら……。

 私は苦笑しつつ頷いた。

 兄のためなら他人に嫁いでもいいと思いながら、兄に妻ができるのは心がチクチクする……。

 なんだこの気持ちは……。


 私は兄から離れなければと思った。

 そうすれば兄のことは兄と思えるような気がした。

 気持ちが落ち着けば、他の者へ嫁ぐように兄から言われても、微笑んで受け入れられると思った。


 ただ、兄は私が離れるのを許してはくれなかった。

 私は不安定な気持ちを抱えて過ごすことになり………。


 そんな時、護衛と女官の中に、天帝の私への対応が異常だと、離れた方がいいと告げてきて、私をここから逃がすことを計画してくれた者がいた。

 私は彼らに縋った。


 結果、彼らは捕えられ処刑された。

 そして、私のいる部屋は常に水で満たされるようになった。

 何人なんぴとたりとも近づけぬ、会話すらできないように。


 その時、わかった。

 兄は、天帝は私を妹として見ているのではないと。

 腹違いとはいえ兄と妹。

 実際に手を出すことはできないから、こうして閉じ込めて、自分だけの物として……。

 眺めて、心の中で私をめちゃめちゃにしているのだ。


 私の心は毎日揺れた。

 あなたが喜んでくれるならあなたの金魚でいい……と思えた時もあれば、自由にして欲しいと思ったこともある。

 ならばいっそ、触れて、好きなようにしてくれてかまわないから、その後にあなたの手で殺してくれと願ったことも……ある。


読んで下さり、ありがとうございます。

処刑された人は天帝の暗殺を目論んでいた一派の手の者です。

逃げることを諦めるよう罪悪感を与えるために、妹には何も教えないという……。


次回でラスト! 夕方、投稿して、完結予定です。

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