11 わかってるのに
どうぞよろしくお願いします。
川上先生が独り言のようにぼそぼそ言った。
「俺は……、ずっと愛する人というか、ひとりの女性を思ってた。
待ってたというか。どこの誰なのか、本当に現れるのか、いるのか……。
わからないまま、そのイメージに近いと感じた人に好意を感じるような……。
そのイメージに若宮に会うまで一番近かったのが篠原で……」
紗栄先生が苦笑する。
「じゃあ、篠原も川上の本命じゃなかったってこと?
だから、裏切られてたとわかっても責めなかった?」
「ああ、まあ、いい気持ちではなかったけれど。
彼女ではなかったんだと思っただけだ」
「川上でも傷ついたのね」
「当たり前だよ。俺のことなんだと思ってるんだよ」
紗栄先生は隣に座る私を見て微笑んだ。
「ってことらしいわよ」
私のために?
確かに好きな人が、前に好きだった人の話を聞くのは……。
知りたいのに、知ったら知ったでもやもやが残るだろう。
だから、川上先生の言葉を引き出して、もう終わったことだと確認してくれてるような……。
「紗栄先生、ありがとうございます。
聞かなかったら、ずっと気になってただろうし。
聞いたら聞いたでもやもやしそうだった。
紗栄先生と川上先生から聞けて良かった、です」
紗栄先生は私の頭をやさしく撫でてくれた。
「こんな男に待っていられたなんて、災難だったわね。
でも、もしかして、あなたも待っていたか、追いかけてきたの?」
私は首を振った。
「いいえ、そんなことは全く思いもしませんでした!」
私の言葉に川上先生が「若宮っ!」と小さく呻くように言い、紗栄先生が笑った。
「いい気味!
私達のこと振りまくったせいよ!」
「……付き合いたいって言われて、付き合って、やっぱり違うっていうの何が悪いんだ?」
「その気がないならOKすんなってことよ!」
「俺はその気がないって言って、でも、それでも試しに付き合って欲しいと言われて」
私は紗栄先生と川上先生の口論を止めた。
「もう、ふたりともやめてよ。
川上先生も紗栄先生も!
どっちもどっちだから!」
「どっちもどっち?」と川上先生が言って。
私は重々しく頷いた。
「告白されて付き合ってすぐに『ない』と振るのも、自分の容姿まで、その彼の好みに寄せて告白し続けてというのも……。
どっちもどっちっていうか……。
どっちもないっていうか……」
紗栄先生が取り乱してマユミに怒鳴って掴みかかってしまった後、川上先生から紗栄先生との話を聞いた部員達は、みごとに半分に割れていたと思う。
川上先生の立場で考えた人、紗栄先生の立場で考えた人。
まあ、どちらも……だと思う。
そのふたりに私が言える立場ではないけれど……。
私も……バカなことしてる。
「私も今、バカなことしてるって、わかってる。
ダメだってわかっているのに、そう動いちゃったこと。
なんとなくわかるような気がする。
だから、ふたりのこと、私は呆れながら、否定できない」
私の言葉に紗栄先生が笑った。
読んで下さり、ありがとうございます。




