8 抑えてない
どうぞよろしくお願いします。
結局、私達は川上先生の車に乗ることになってしまった。
私が渋っているのを見て、紗栄先生が苦笑して言った。
「大丈夫。私が一緒だから。
川上、私、若宮さんと一緒に降りるから」
そこまでわかってもらえてるなら、大丈夫かな。
「はい……」
私は頷いて、駐車場に歩いて行く。
車に乗り込む。私と紗栄先生が後部座席に乗り込んだのを見て、川上先生の目が細くなった。
やめて欲しい……。
車が動き出すと紗栄先生が言った。
「車の中で話すのが一番問題なさそうね。
川上、高校で流れてる噂、気づいてないの?」
「噂? なんか、性格の悪い子がトラブルをってやつか?」
紗栄先生がため息をつく。
「それ、言われてる子は若宮さん。
トラブルになってると言われてる子が伊藤さん」
「……え?
あ、だから、さっき、伊藤が、手伝ってくれたとか、なんか言ってた?」
私は口を挟んだ。
「はい。
たぶん元は、マユミが山室さんにこのバスケの大会に一緒に行きたいと言われたことで、なんか、マユミが困ってて、私が用事があるから一緒ではなく現地集合で、と言ったの。
それのことを、たぶん、意地悪だと言われたんだと思う。
その話から、マユミのことを私が利用しているとか、その子分にしてるとかそういう話になって。
それで、その……」
「伊藤さんは自然科学部でしょ。伊藤さんを利用して、若宮さんが川上に近づこうとしてるとか、ね」
頷く。
なんとなく川上先生を見られなくて、視線を外したらバックミラー越しに目が合ってしまった。笑ってる。もう!
「それで若宮は、俺にツンツンしてたんだ」
「ツンツンって!
ああ、怒りを感じてた。
こっちは噂のことを考えて、関わらないように行動してんのにって!」
「まあ、川上は当事者だから、言われることないわよね。
気づきにくかったはず。若宮さん、許してやって」
許すも何も、何もしないでくれた方がありがたい。
私は小さくため息をついた。
「……篠原のこと。
若宮さんはどれくらい知ってるの?」
「……高校の時の同級生?
川上先生から告白して交際してた。一番交際期間の長い恋人?
写真も見たけど、髪が長い時の私に似ている気がした」
紗栄先生が頷いた。
「そうか、見た目も知っているのね。
自分に似ているって、なんか嫌な気持ちだったんじゃない?」
「……それは、まあ。
中学の時から、川上先生、私のことを贔屓してるんじゃないかって言われてたから……。
私がその好きな異性の見た目のタイプで、それなら、川上先生は……」
「そうね、教え子に邪な思いを抱くとんでもない教師だわ」
「邪って……。う、確かに、それはそうなんだけど……」
そこまで言うのは、なんだか……。
「ふふっ、かわいそうって?」
紗栄先生が笑ってた。
「合宿の時……、川上が若宮さんのことを大切に思っているのがわかった。
まあ、抑えつつも邪な思いも抱いてると思うけどね。
それに、若宮さんは気づいて、……揺れてる。
そんな感じがした。
田中先生も気にしてたしね」
ああ、うん、なんて言っていいかわからない。どうしよう……。
この人は全然抑えてない。
それに、私は……。
私は真っ赤になり俯いてしまった。
読んで下さり、ありがとうございます。
今日はこの後、午後仕事で投稿できずになります。
どうぞよろしくお願いします。




