6 意外な名前
どうぞよろしくお願いします。
紗栄先生が首を振って言った。
「ふたりとも制服だから、外食するのはやめた方がいい。
コンビニで適当に買ってきたから、それを準備室で食べましょう」
わあ、すごい配慮!
紗栄先生ってすごいな。
「ありがとうございます!」
私は大きな声でお礼を言った。そして、川上先生を見た。
なんか凹んでる?
でも、確かに噂もあるし、ね。
あまり目立つことはしない方がいい。
理科室の鍵を閉めてから、理科準備室に移動。
おにぎりやお惣菜系パンや菓子パンなどを紗栄先生が並べてくれた。
「選んだ物、お金払います」と私は言ったんだけど、「大丈夫よ。これくらい。ふたりにはお詫びもしたかったし」と紗栄先生が笑って言ってくれて、私は厚意に甘えることにした。まあ、私だけ『払います』とごねるのも変だもんな。
さっきドリンクは私から選んだから、マユミから選んでもらう。
マユミはメロンパンとハムチーズパンを選んだ。
甘いのとしょっぱい系、うん、なんかおいしそう。
私は梅のおにぎりと悩んで鮭のおにぎりにした。
川上先生がおにぎり三個。サンドイッチとチーズクロワッサンを紗栄先生が引き取って、これで全部分けることができた。
「食べ終わったら、車で行こう」と川上先生が食べながら言った。
みんなで行けば、そんな噂に悪影響じゃないかな?
私は紗栄先生に「一緒に行きましょう! アキ喜ぶ!」とお誘いする。
そうだよ、確か高校、バスケ部とか言ってたよね!
「ええ……、大丈夫なら」と紗栄先生は川上先生を見た。
川上先生が頷く。
良かった。私ももう少し紗栄先生と話がしてみたい。
川上先生の車に乗り、体育館へ!
で、助手席に紗栄先生に乗ってもらう。
やっぱり誰かに見られて、助手席に若宮さんが~!! なんて言われると、とてもまずいと思うんだよね。
川上先生は何だか目を細めて私を見てたけど、無視します。
一年振りのT区体育館。
女子の大会は12時スタート、で場所も去年と同じ。
私は「前回と同じ所だね」とみんなに言って、先頭を歩いた。観客席まで行くと、下のコートでバスケ部が試合前練習をしているのが見えた。
私達は席に座らず、一番前に行き、手すりから下を見た。
「トモ! マユミ! 紗栄先生も来てくれたの!」
アキが気づいてくれてうれしそうに叫び、手を振ってくれる。
「帝もいるじゃん!」「えー、川上先生と横川先生って……」なんて他の部員もこちらを見上げ、ざわざわ声が上がる。
は、このふたりが噂になるのは、いいかもしんない。前から付き合ってるという噂もあったしね。
いや、紗栄先生には悪いか……。
その時「若宮さんって伊藤さんを利用してるんだってね」という声が観客席の方から聞こえた。後頭部で聞いたから、誰だかわからないけど、高校生だろう。
ちょっと気持ちが落ち込む
その時、マユミが私の左手をきゅっと握った。そしてアキに呼びかける。
「アキ!! トモ、私のために学校に一緒に来てくれて、作業手伝ってくれてたんだ!」
アキが微笑んでこちらを見上げるように「いいね! 楽しそう!」と返事してくれた。
アキは朝から一緒だったから知っていることなんだけど、マユミが私の噂を気にして、他の部員や周囲の人に聞かせたくて、言ってくれた言葉だとわかった。
マユミが私に笑いかける。私も微笑み返した。
それから、上の方の空いている席に4人で座る。
「川上先生、下に行かないの?」
私は聞いた。去年、下にいたよね?
「今回はいいんだ」
どういうこと?
アキ達がいたからとか言ってなかったっけ?
去年と条件はほとんど変わってないけど?
「何がいいのか、全くわからないな?」
私は首を傾げて呟くように言った。
紗栄先生が笑った。
試合途中、ソウヤくんと相原くんも合流。みんなでアキを、泉学院バスケ部を応援した。
ふふふ、アキのシュートがけっこう決まり、泉学院勝利スタート!
親善の大会みたいだけど、勝つのはうれしい。
その後も勝ったけど、最後の試合だけ、競り負けてしまった。惜しかったー。
最後に簡単な表彰式があって、それから解散なんだって。
親善だから順位とか優勝とかはないんだけど、講評があって、アキの名が出て褒めてもらえた。
やったね。
アキはバスで学校に戻るから、観客席から手を振って送り出す。
遅ればせながら川上先生と紗栄先生にソウヤくんと相原くんを紹介する。
川上先生とは去年の文化祭で一度紹介してる、か。相原くんは本当に連絡先を交換してるのか?
ソウヤくんが「あー川上先生っすか! 文化祭でちょこっと……」と言った後「やっぱり……、帝慶ですか?」と言った。
やっぱり、なんか憎めないチャラさ加減。でも、帝慶って?
川上先生も少し怪訝そうに「ああ、俺もそこの横川もそうだ」と答えてる。
「……同じ年度あたりに篠原雅、いませんでした?」
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