16 高二の文化祭は……
どうぞよろしくお願いします。
そしてイヤホンを渡された。
イヤホンがだめならヘッドホンがあると言われるが、私達はイヤホンで大丈夫だった。
耳に装着し、周囲か暗くなる。すると……、皿の割れる音。前に着物を着た女性が後ろ向きに座っていてぼんやりライトアップされる。
『いちまーい、にまーい……』皿がカチャカチャいう音も聞こえる。
お菊さんだ!
『……きゅうまーい。ああ、いちまい、足りない……』
その時『ザシュッ!!』という刀で斬る音がイヤホンから聞こえて、まるで自分が斬られたみたいなっ!
「やっ!」と身を縮こませてしまう。
はっとしてステージを見るとお菊さんの首だけが上から私達を見下ろしていて……!
ああ、黒い布で下を隠しているんだ……。わかっているのに、音が、怖い。
強制的に聴かせられるからだ!
今度は後ろから足音が聞こえてきた。微かに床が軋むような古いけど広い家の中にいるような音っていうの?
マントなようなものを羽織った人物がランタンのようなものを持って歩いてくる。私達の脇を通って前の方へ歩いてきて、ステージまでたどり着くとランタンの明かりを消した。
暗い中こちらに振り向くと稲妻のようなライトの光、そして音。
音が後から来るのがなんかリアル。音と同時にマントを後ろに落とす。ぼんやりした光の中でドレスの前は血塗れだった。
『私は吸血鬼カーミラ。あなたの血を頂くわ』その直後に暗転し、何か吸いだすような音が首元の近くで聞こえて思わず首筋を押さえてしまう。
ぞわってする。こわっ!
風の音。なんか涼しい、気のせいかと思ったら、本当にひんやりした風が吹いてきてた。
風の音に合わせて、雪女がしずしずと舞台に登場した。アキだ!
風の音が……、吹雪を連想させる。
冷たい目で私達を見下したように見てきたと思ったら『私を見たことを誰にも話してはいけません。話したら……命を貰うよ』と耳元で声が響き、暗転したとたん、ヒヤッとしたものを首に押し当てられて「ぎゃっ!」となった。
何? あ、誰かそばにいたのか!?
学校のチャイムの音、ざわざわした子ども達の声、トイレの流す音。
トントントンとノックの音に続いて『花子さん、遊びましょ!』と子どもの声が響いた。
『はーい』というか細い声が聞こえるが何も起こらない、何、何!?
私達はキョロキョロ回りを見回してしまう。
ステージに動きがあった。
誰かが蹲っている……。
薄暗い中、赤いスカートで赤いランドセルを背負った少女がゆらりと立ち上がり、ライトアップ。
不気味に微笑んでこちらに手を差し伸べて来る。
『何して遊ぶ?』という声が耳に響いた。その声は途中から反転したような変なノイズになり、私達にはトモだとわかっているのに背筋がぞぞぞってした。
『パン!』という音が響き、明るくなると、花子さんは消えていた。
ああ、なんか身体が強張ってる。
ソウヤを見ると顔色が白い。
私は慌ててイヤホンを外した。
音がこんなに怖いなんて……。
スナオくんも「アキと若宮さんだとわかったんだけど、怖かった……」と言った。
出口でアキとトモが笑ってた。
「どう? 怖いバージョン、マジ怖いでしょ!」
トモが言って、ソウヤが「怖いバージョン?」と聞き返す。
「うん、怖いバージョンとそんなに怖くない小学生向けバージョンがあるんだよ」
トモの言葉に「何それ、そっちも見たいんだけど!」とソウヤが言って、スナオくんが苦笑した。
「怖くないバージョンは小学生向けだから、ダメ」と雪女の格好のアキが言った。
「それにしても……、トモちゃん思い切ったね。そんな短いスカート履いてるの初めて見た」
ソウヤがトモの足を見て言った。
「うわ、セクハラです!
この男! 命取ります!」
アキが言ってソウヤが「ごめん、許して!」と叫び、みんなで笑った。
読んで下さり、ありがとうございます。
これで第6章マユミ視点は終わります。
次はまたトモ視点に戻ります。
これからもどうぞよろしくお願いします。




