29 反省
どうぞよろしくお願いします。
「川上も若宮にあまり構うな。
たぶん、ふたりの気持ちはお互いに向き合っていると思うけれど。
川上、若宮が卒業するまで、待てよ」
田中先生の言葉。うう、耳が痛い。
いや、ここで、その……、もう……。
しばらく、半年ぐらいなかったから、この調子で何もなく行けたらいいなとは思っていたんだけど。
いや、だったら、徹底的に川上先生を避けるべきで……。ああ……。
私も、川上先生のことが好きだから……、強く出られると、その、言うことを聞いちゃうところが……。
「……わかった」
川上先生が言ってくれて、ほっとした。
私からは言えなかったから。
うん、卒業まで、川上先生とはふたりきりにならないようにしよう……。
卒業まで1年半くらいだもんね。
夜、ホテルの屋上で望遠鏡を設営して、星や月を観察する。
月が綺麗に見えた。少し雲がかかっていたけど、それも綺麗。
望遠鏡で見ると星が大きく見えて綺麗だな。
すごく遠い所からすごい光年をかけて見えているとか不思議だよね。
星の話。
宮沢賢治だとサソリの火の話とか銀河鉄道は外せないよね。
北斗七星の柄杓の話とか、SFから何か話を探してくるのも面白そうだ。
文化祭の展示について思いを馳せながら、星を望遠鏡で見ていた。
月は大きく、クレーターがよく見えた。
月の模様の世界での受け取り方の違いとか、伝説とかもいいな。
桂男の話とかも面白いかも。
アキに言われた。
「トモが月を見ていると本当に似合うよ」
マユミが笑う。
「さすが月の宮」
「似合うって、私は月に住む妖怪か!?」
私は苦笑した。
『化け物』と唇を動かす女官達の顔が浮かんだ。
アキとマユミは違う。
でも、私と川上先生のこの関係をもし知ったら……。
彼女達は悲しむだろうし、彼女達を騙していたと非難されるのかもしれない。
月がやけに明るく思えて。
「かぐや姫はさ、月に帰ってどうしたんだろう?」
アキがぼそって言った。
「月からおじいさんとおばあさんを見てたんじゃないの?」
マユミの言葉に私は首を捻って言いかける。
「かぐや姫はあの時に死んでというか、魂的に生まれ変わって……」
なるほど、転生の転生?
脱皮のようだな。
やはりかぐや姫は妖怪の類かもしれない。
私は中学生達と望遠鏡を囲んで話をしている川上先生をちらりと見た。
もう前世の時の憎しみは……、ないと言うか、浄化されたと言うか。
心の奥に隠していた思慕の思い、兄に対してではなく、天人同士の、惹かれあい求め合うような、罪の意識を突きつけられるような思いが今は強く思い出される。
これは、今世に引っ張られているのか、前世の叶わなかった思いを……。
「どうしたの?」
アキが小さな声で聞いてくる。
本当にいろいろなことに気がつく、親友だな!
私はへへっと笑ってアキに抱きついた。
小さな声で言う。
「相原くん、アキのこと心配してたよね」
「うん? トモのことでしょ?
『そばにいてやりたいけど』とか言ってたじゃん」
「それはアキのことだよ。
彼はアキのことを心配しているよ。
アキのために『そばにいてやりたい』なんだよ。
本当ならアキを行かせるのを止めたいところ(だけど、私とアキが友達だとよく知っているから、アキのこともよくわかっているから、なんだよね」
「……そうなの、かな?」
「うん、私はそう思う。
それに、相原くんと川上先生、連絡先交換しているらしいんだけど、知ってた?」
マユミや他の子には聞こえないように小さな声で。
「え? そうなの?」
アキが驚く顔に私は苦笑した。
「そうらしいよ?」
読んで下さり、ありがとうございます。
そろそろ第5章は終わりです。




