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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
第5章 若宮朋佳
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28 おとなしく

どうぞよろしくお願いします。

ちょっと長めです。

 マユミが慌てたように言った。


「大丈夫です! 私は! そりゃ怖かったけど。

 紗栄先生、学校辞めるの?」


 川上先生が首を捻った。

 うん、そこまでじゃないよね。


「一応、生徒に対して暴力をふるってトラブルになったことは学校へも報告した。

 上の判断だな」


「呪われた理科助手のポスト……」


 アキがぼそっと言って、私と田中先生と川上先生はギクッとしてから笑ってしまう。

 他のみんなもなんか笑っている。


「何!? ミステリーからオカルトへ!?」


 ゆかり先輩が面白そうに叫んだ。

 確かに、理科助手にトラブルが続いていると言えるか……。原因はひとつなんだけど。

 中一が首を傾げているのを見て、中二が「前の理科助手の先生も川上先生にすっごく言い寄ってて、なんか突然辞めたんだよ」って、うん……、中学生にそんなこと教えていいのだろうか。でも、まあ噂で聞くよりかはいいのかな?


 田中先生が言った。


「川上先生への学生の時からの恋愛感情が続いていて……、川上先生が断っても断ってもということだったんだな。

 それで、家族の方に信頼されてるのを利用して学院にまで就職して。

 川上先生が自分を認めてくれるのを待っていたのか?

 しかし、断られ続けて、冷たくされ、周囲の女子高生に逆恨みってとこか?」


 私は頷いたが……、少し悲しくなって首を振った。


「どうしたの?」とアキが聞いてくる。


「うーん、紗栄先生、高校と大学では別人かというくらい容姿が変わってて。

 自分がどうなりたいかというより、川上先生の好みの女性像になるためにすごく努力していたんだろうなって。

 努力しても手に入らないものを欲しがるのは……。悲劇なのかなって。

 相手があるものは努力しても……、難しいね」


 私はそんなことをアキに言った。


「努力しても手に入らないものか……」


 アキに言ったのに、川上先生が呟いたから、驚く。


「でもさ、いやだって言ってるのに、お前のために努力してんだから受け入れろって押しつけ続けられて、外堀を埋められて逃げられなくなるのも、相手にしてみれば悲劇じゃない?」


 アキがスパッと言うから、笑っちゃう。


「そうだね。どちらにとっても悲劇だ。救いようがないね」


 私は『救いようがない』という言葉に前世の時の兄との関係と、そして今のバカなことをしている自分と……。なんだか突き放したいような、でも、仕方がないと認めてあげたいような、複雑な気持ちになった。


 紗栄先生のツインにはゆかり先輩とさくら先輩が移動することになり、私は高校の大部屋に移動することになった。

 かなちゃんと鈴永さんと小野田さんの仲も良くなったみたいだし、まいちゃんは仲良しのかのんちゃんがいるから大丈夫よね。



 高校の大部屋に荷物を持って行くと、さおりんとマユミが大歓迎してくれる。

 その後、みんなで空いている食堂で天体観測についての話を聞いた。

 あのバスの運転手さんが望遠鏡の使い方とかスライドと実物を使って教えてくれる。

 このホテルに勤めるようになって、趣味だった天体観測や星空観察に特化した観光のアイデアを出して取り組んでいるとか。地域的にも町おこしっていうか、展望テラスの星空観察はけっこう成功してると思う。

 夜の天体観測楽しみだな。

 今日は少し雲が出るかもな天気予報だけど、月が綺麗に見えそうだということ。

 昨日の月、ゆっくり昇ってきてたもんな。

 星空観察の時は月が細い方が夜空の星がもっと綺麗に見えそうだな。


 ホテルの屋上なので、8時半からと集合が遅め。

 夕食後、高校生の方は先に風呂に入っちゃおうかという話になった。

 私はすでに日中、池に落ちて風呂に入り着替えてたので、パスした。


「温泉なのに?」とアキに言われた。


「うーん、今夜はいいや」


「……そう」


 アキの返事がちょっと怖い。

 そう、今、みんなの前で裸になるのが怖い。

 いや、だって、最後までしてないとはいえ、川上先生とあんなことになった後だし……。


 みんなが入浴に行っている間に、田中先生と川上先生のツインに行き、服と靴を確認させてもらう。

 服は乾いてたので回収。川上先生にシャツも返した。

 靴は……、もう少し、かな。そのまま、干し続けることにする。


「高校生達は大部屋にいるのか?」と田中先生。


「いえ、みんな風呂に行きました」


「……若宮、今回は伊藤と横川先生のトラブルに、若宮が伊藤を助けようとして……という話になってる。

 学院としては、若宮がトラブル続きという印象にどうしてもなる。

 ……おとなしくしていろよ」


「私はおとなしく……」と言いかけて、黙る。

 うーん、おとなしくしているつもりだけど、なんか、その、田中先生は気づいたのだろうか?


読んで下さりありがとうございます。

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