23 やり直せる
どうぞよろしくお願いします。
化粧っ気のない顔で紗栄先生が話し続ける。
「私はここにいるべきではない。
生徒達の合宿を、壊しかねないことをしてしまい、申し訳ありませんでした。
帰ったら、学院とも話をして……。
やめるにしろ、続けるにしろ、きちんと話をしますので」
田中先生は頷いた。
「わかりました。駅まで送りましょう。
荷物をまとめておいて下さい。送迎を頼んできます」
そう言って部屋を出て行く。
私は気になっていたことを聞いた。
「真理先生とは友人だったのですか?」
「友人になった、とでも言うかな。
彼女とは共通の友人を介して本当に、たまたま出会ったの。
その時、泉学院で理科助手をしているって聞いて、川上……のことを知れるかと、私から友人にならないかと声を掛けた。
川上のことを相談されて、実は高校、大学と一緒だったのを教えたのも私から。
彼女から若宮さん、あなたのことは聞いてた。
写真を見て、篠原になんて似ているんだろうと……。
真理に、川上の性癖というか、好きになる女性の容姿のこと、昔の写真を渡して伝えたりもしたわ……」
「それでファイルに写真が……」
「ファイル?」
私は苦笑する。
「真理先生、私にその写真を見せてきたの。
川上先生は女の敵だ! みたいなこと言ってきて」
「ふふっ、何?
彼女、学院をやめさせられたのよね?」
川上先生が言った。
「ああ、勤務態度に問題ありで契約更新しないことになって、そこで、トラブルを起こしてまあ、年度を待たずに辞めさせられた」
「そう……」
紗栄先生は寂しげに笑った。
「私、彼女のことを陰で笑ってた。
篠原に似てないと恋愛対象にすらならないし、相手にされてないのにって……」
真理先生も紗栄先生も、川上先生が好きになって、ちょっとくらい問題があってもいいわってくらい好きで、努力して……。
なのに、うまくいかなくて空回りして……、最終的に……。
私は前世の女官達を思い出した。
天人である兄『天帝』へ恋焦がれ、同じく天人である私には化け物を見るような目で見てきた。
性別が違うだけで、対象への思いは変わるのだろうか。
私が男だったら……、兄である天帝は私をさっさと殺していたかもな。
女だから、妹だから……、あんなことになったわけで……。
「紗栄先生は、真理先生とは違う。
真理先生は……、犯罪を犯した。犯そうとした、か。
共犯者も引き込んで、トモを狙って、傷つけて、トモにも川上先生にも身体や心にその後の平穏を奪う、傷を残そうとした。
紗栄先生はそこまでじゃない。
違うと思う。紗栄先生なら、ここから新しくやり直せると思う」
アキが真剣な顔で紗栄先生を見つめている。
紗栄先生は微笑んで頷いた。
「ありがとう、麻岡さん」
読んで下さり、ありがとうございます。
アキは相原がトモを好きだったことを知っていたので、付き合い始めは少々葛藤がありました。でも、そこから、時間を重ねて、恋人になったので。
それで、紗栄先生が川上先生を吹っ切ることはできるはず、と励ましたくなったようです。
息子の卒業式&謝恩会があり、午後の投稿はお休みします。
どうぞよろしくお願いします。




