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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
第5章 若宮朋佳
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22 無駄じゃない

どうぞよろしくお願いします。

 洗面所が脱衣所兼ねてる。

 私は風呂を見て、洗い場があることにほっとした。ユニットじゃなく、トイレとバス独立タイプだった。


「お湯溜めとくね!」


 ざっと湯船をシャワーで流し、栓をしてお湯を溜め始める。

 脱衣所に戻り脱ごうとして「汚れた服はどうしようか?」とアキに話し掛けた。

 アキは洗面所を示して「一応ここに置いておく?」という。


 私と紗栄先生は濡れて汚れた服を脱いだ。紗栄先生は全部。私は下着はセーフだったので濡れた服と下着は分けて置いた。


 紗栄先生に先にシャワーを使ってもらい、頭から洗い始めてた。

 確かに上から下へ洗いたいよね。

 私は洗面器があったのでそれで湯船のお湯を汲んで、足と手をボディーソープで洗って流した。

 紗栄先生が洗っている間に、お湯が溜まり、先にお湯に浸からせてもらった。

 バトンタッチで紗栄先生が風呂に入ると、私が身体を洗う。濡れてないけど飛沫が飛んでたかもだから、頭も洗った。


 先に紗栄先生が出て……。田中先生は一度部屋を出たみたい。

 部屋の方でアキが紗栄先生の着替えを見守ってる。

 一応、紗栄先生の精神状態を気にしての対応だ。

 思ってたより、大丈夫そうだけど、突発的に何をするか、自分自身を傷つける可能性だってあるだろう……。

 私は風呂を出て、下着を身につけると脱衣所に置いておいてもらった荷物からTシャツと短パンを引っ張り出して身につけた。


「ドライヤーで髪、乾かそう!」


 声を掛けて紗栄先生に洗面所に来てもらうと、髪を乾かすのを手伝った。

 アキがその間に田中先生に電話をして、田中先生と川上先生がこちらのツインに来る。

 私は髪を乾かしてから、風呂場で先生の服を濯ぎ、絞って洗面器に入れた。

 次に自分の服を濯ぎ、絞って、これは洗面所に置いておく。

 あー、川上先生のシャツ……。これも一緒にしておく。


 部屋に戻ると、4人で何やら深刻そうな話をしている。

 結局、紗栄先生は帰ることになったようだ。

 学院と紗栄先生の家族には連絡がついたそう。

 まだ昼前で午後の特急に間に合うので、それで帰るという。

 だいぶ落ち着いている。

 なんかもっと危機的な感じになることも覚悟していたので……。


「川上……。

 よくわかった。私は篠原にはなれないし、彼女にも、若宮さんにもなれない。

 それは努力しても、なれないってことに」


 紗栄先生のすっぴんは童顔でかわいかった。高校生の時の面影がある。


 川上……。健司じゃない呼び方。

 それは友達だった時の呼び方なのかも!?


「横川、俺の方こそ、すまない。

 君からの告白を……、大学の時、軽く扱った。

 真剣に考えてたかというと……、友達の延長のようなそんなノリで、横川がたぶん俺が好きであろう女性の外見になろうと努力しているのには気がついていた」


「私の努力は見てくれてたんだ。

 でも、最初から、無理だったってこと?

 好きになってしまって、努力したこと、最初から、全部無駄だったってこと……」


 私は苦しくなったけど、私が口を出す問題でもない。

 どうしよう……。


「……俺は、前の、高校の時の横川の方が友達として好きだったよ」


 川上先生がぽつりと言った。

 紗栄先生は苦笑しようとして、でも顔が歪む。


「ずるいなあ。

 友達としては好き。

 ちゃんと失恋できない。

 それで、もがいて、何年無駄にしちゃったんだろう……」


「無駄なんかじゃないと思う」


 アキが急に言った。


「紗栄先生、学院では仕事ができるかっこいいきれいなお姉さんだった。

 全部、その篠原とかいう友人のマネじゃないでしょ。トモのまねでもない。

 それは紗栄先生が努力して身につけたものなんじゃない。

 ただ……、華奢な感じになろうとダイエットしたりするのは賛成できないけど」


 紗栄先生が苦笑した。


「そうね。若さが眩しかった。

 高校生の時は私もそうだった。思い出したわ。自分らしく、いた時のこと。

 田中先生、川上先生、御迷惑をおかけしました。

 私、帰ります。

 伊藤さんに、謝っていたと伝えてください。

 あの時は、みんなが私のことを無視して、その変な人というかそういう目で見ていると思って……。

 伊藤さんが電話で楽しそうに笑っているのを見たら、感情が爆発してしまいました……」


読んで下さり、ありがとうございます。

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