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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
第5章 若宮朋佳
118/190

20 回収

どうぞよろしくお願いします。

「若宮!」


 川上先生の声がして、私は助け起こされ、抱きしめられる。

 ちょっと抱きしめるのはやめてよっ!


「紗栄先生を上にあげないと!」


 私は怒ったように言って、川上先生の手を振り払うと紗栄先生に向かう。

 

「いい加減にして!

 ほら、池から出る!!」


 そう言いながら手を伸ばし、池の中に座りこんでいた紗栄先生を立ち上がらせようとした。

 川上先生も来て、もう片方の腕を掴んで、ふたりで紗栄先生を池から出した。途中、ボート乗り場のスタッフさんが駆け付けて来てくれて、手伝ってくれた。


 池から出て、道まで戻ると、ちょっとぞっとした。

 池、深くなくて良かった。

 私、泳げない。

 そう、前世では水の中でも苦しくないから泳げたけど。今世は息しなきゃだから、無理!

 しかも、汚れてる水とか……、無理、絶対無理。

 

「大丈夫ですか!」と大きな声がして人が駆け付けてきてくれた。

 警備員な感じの人だ。


 ボート乗り場のスタッフさんが怒鳴り声と揉めている様子に気づいて連絡してくれたよう。

 川上先生が「ちょっとトラブルがありまして……」と説明しようとしてる。

 私はマユミを見た。スマホを握りしめて泣いてる。

 慰めたいけど、私、濡れてて……。


「マユミ、大丈夫だから!

 ソウヤ君と電話中だったんじゃない? 心配してるかも!?」


 その時、マユミがはっとスマホを見て耳を当てたので、ソウヤ君が折り返し掛けてくれたのかもしれないと思った。


 少し間があって、中学生チームと田中先生が現れ、この状況に驚いている。

 アキ達もボートから降りて急いで駆け付けてくれたみたいで、みんな合流したみたいになる。


「どうしたんだ!?」と 田中先生が叫んで、アキが説明してくれた。


「ボート乗る人と池の散策組に分かれて。

 川上先生とトモとマユミは散策に……」


 電話を終えていたマユミも、震える声で説明してくれる。


「私、電話したいところがあって。

 トモと先生と少し離れてもらって。電話終わるの待っててくれて。

 そうしたら、紗栄先生が急に現れて『電話で私の悪口を言っているんじゃないっ!』って、飛び掛かってきて。

 トモと川上先生が助けてくれたんだけど、トモが服をつかまれて、紗栄先生と池に転がり落ちたみたいに!

 川上先生とボート乗り場のスタッフの人が助けてくれたの……」


 警備員らしい人が困ったように田中先生に言う。


「警察、どうしますか?

 見ていたスタッフによると仲間内のケンカにしては、突然で一方的だったと……」


 田中先生と川上先生が顔を見合わせた。

 問題にするにしても、警察絡みになると……。

「こちらで対応します。助けて頂きありがとうございます」と田中先生が言った。

 ですよね……。ああ、またトラブルだよ……。

 とりあえず、濡れちゃった私達はホテルへ強制送還だろう。


 田中先生が言った。


「横川先生は俺と……、麻岡、申し訳ないが頼めるか?

 川上と若宮は大丈夫だな……。

 この5人で一度ホテルに戻る。

 ……予定通り、時間まで頼めるか?」


 最後の方の『頼めるか?』はゆかり先輩とさくら先輩に向けられていて、「はい、大丈夫、予定通りランチは各自の予定で予約もないし。帰りの足だけ?」とさくら先輩が素早く返事してくれた。


「ホテルのバスにまた森林公園に戻ってもらえるように頼んでみる。

 ダメなら5人でタクシーでも……」


 ゆかり先輩が心配そうに言った。


「この状態で!?」


「まあ、どうなったか、連絡は入れる。頼んだ」


「わかりました! 気をつけて」


 さくら先輩とゆかり先輩が頷いた。が、『大丈夫? 何があったの!?』と目が私に訴えかけてる。

 私は大丈夫と言うように頷いてから、紗栄先生を支えて歩き出した。だって、私はもう汚れちゃってるからね。

 とりあえず、駐車場まで戻らないと。


「田中先生、運転手さんに電話で聞いてみてもいいんじゃない?」


 私は田中先生に声を掛けた。


「あ、そうだな」


 田中先生は電話を掛け始めた。

読んで下さり、ありがとうございます。

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