16 長袖
どうぞよろしくお願いします。
「大学の写真?」
鈴永さんが怪訝そうに言ってから、はっとして「え? いつ?」とさらに聞いてきた。
私は苦笑しつつ、答えていく。
「前に……、真理先生に見せてもらったことがある。
真理先生のお友達が川上先生と高校と大学で一緒だったって」
「何で若宮先輩に?」
「うーん、私に川上先生のことを注意するつもりだったみたい。
その、元彼女がたくさんいるような男の人だからって。
それも、その、黒髪ロングで色白のなんか雰囲気が……似ている人が多くて」
「……若宮先輩が、その?」
「そうだね。私も、紗栄先生もそうじゃない?
だから、注意したかったのかも」
「元彼女のひとり?
運命の人じゃないの?」
小野田さんがぼそりと言った。
紗栄先生は彼女達に、そういう話をしていたのか。
拗らせているというか、病んでいるのかもしれないな。
「お互いに思っていないと、運命の人とはいえないんじゃない?
さあ、遅くなっちゃったね。寝よう!」
私は話を終わらせるという意思表示を込めて、明るくそう言った。
時計を見て驚く! もう11時!?
私達は慌てて歯を磨いて、布団に入った。
次の日、7時起床。うーん、いつもよりはゆっくりだけど、昨夜が遅かったから。でも、気合い入れて行こう!
7時半から朝食なので忙しい。大部屋の洗面所は小さいのひとつだけで混んでたので、かなちゃんとまいちゃんとかのんちゃんを誘って廊下に出た。廊下に大きめの洗面所というか小学校みたいな大きな金属製の流しに蛇口が4つ並んでいて、鏡も貼られてる。スキー合宿とかあるからだろうな。
洗顔を済ませ、化粧水と乳液をつけて、日焼け止めを塗っていたらかなちゃんに聞かれた。
「とも先輩は化粧しないの?」
「基本はね、しないかな。
さすがに家族でいいレストランに行くとか、そういう時は服に合わせて少しするよ」
「化粧してドレスアップしたとも先輩、見てみたいな」
私は笑って答えた。
「うーん、レアだね。なかなかない」
朝食を食べる。朝のブッフェは和食と洋食のおかずが並んでいて、自分で選ぶ朝定食みたいな感じかな。私は洋食にして、パンをトースターで温めた。
うん、ソフトフランスバンみたいなの美味しい。
食べ終えたらロビーに集まり、今日行く森林公園の話を聞く。
森林公園はさくら先輩とゆかり先輩がいろいろ調べてくれてて、私とマユミはちょっと気が抜けるというか、久々に参加する側になれた。
9時にロビー集合。
バスで20分ぐらい。
長袖、長ズボン着用。
水筒、帽子、忘れずに。
途中ではっとした、私の薄手の長袖、カーディガンだった。
「困ったな……」と呟いてしまう。そして、みんながいるんだけど、仕方ない。
川上先生の所へ行く。
「川上先生、あのカーディガンが私の長袖なんだけど」
川上先生は一瞬考え込んでから言った。
「まだクリーニングから戻ってきていない。4階に上がったら、エレベーターホールで待っててくれ」
私は頷いた。
みんなでどやどやとエレベーターに乗り込んで4階へ。
部屋に気持ち急ぐ川上先生を見送って、私はその場で待つ。かなちゃんが気にして一緒にいてくれる。
川上先生が戻ってきた。手に薄い水色のシャツを持ってる!?
学院で着ているのをよく見たことある……。
「まだクリーニングから戻ってない。このシャツ貸してやる」
私はシャツを受け取り、長袖なのを一応確認する。
「まあ、羽織には使えるけど……。んー、じゃあ、お借りします」
「大きさは大丈夫か?」
「羽織るなら大きくても大丈夫。
袖はめくればいいし。
ああ、汚したらごめんなさい」
何故か汚してしまいそうな気がして、先に謝ってしまった。なんでだろ?
シャツを片手に抱えて大部屋に戻ると、鈴永さんが「川上先生のシャツ!?」と言ってきた。
ああ、そうか、担任で……、よく見てるんだな。
読んで下さり、ありがとうございます。




