9 心の気配
どうぞよろしくお願いします。
石探しに夢中になって、私は川の方へ近づいた。
濡れた小石が綺麗。水に濡れると色が変わって見える石もあるよね。
しゃがみこんで石を見て拾っていると指に触れる川の水が気持ちがいい。
「若宮、いいのがあったか?」
川上先生がそばにしゃがみこんできて、話し掛けてくる。
私はにこってしたけど、何も言わなかった。
私の手の小石に川上先生が手を伸ばしてきて、でも触れることはなく「きれいだな」と言った。私は手のひらに石を乗せて、先生にもよく見えるように……。
その時、たくさんの声が聞こえた。声と人の気配に振り返る。
川を見下ろすプチ土手の道に自然科学部のグループがいて、紗栄先生が無表情で……、私と川上先生を見ていた
視線の中でかなちゃんが慌てて立ち上がりよろけた。
「かなちゃん!」
思わず立ち上がって叫んだ。
その時、足元の石ががらってなって、私もよろけそうになり一歩下がった。すぐ後ろに川上先生がいて、腕と肩を掴んで支えてくれた。
身体に先生の手の力強い感触。背中が先生の温かさを懸命に感じている。だめなのに……。
紗栄先生の表情が……、無表情なのに気配が変わったというか、何か変わったのがわかった。背筋がぞわっとした。
田中先生が「おーい! 水晶探しができるみたいだぞ!」と声を掛け、自然科学部の子達も川原へ下りてきた。
私は川上先生に一度、身体を預けるみたいになったが、先生の方に向き直りしっかりと立った。
「ありがとうございます」
そして、かなちゃんとさおりんの所へのところへ向かう。アキもこっちに来てくれた。
「……紗栄先生の顔見た!?」とアキが言って。
「見た見た。何かびびってしてた」と何故か興奮するかのようにさおりんが言った。
「はい、無表情も怖いですけど、何か……、こわ」とかなちゃんが怖そうに……。
「えっと、確かに背筋がぞっとした」
私もあの瞬間の気配というか殺気というか……。
怖いな、と思った。
もしかしたら、私もそういうものが漏れ出ているのかもと思ったら、自分自身も怖いと思った。
紗栄先生が川原をおっかなびっくりという感じで歩いている。
「健司!」と呼んだ。それは……。思わずという感じで。
私は身体が少し震えた。
周囲の子達もぎょっとする子と、何か紗栄先生から話を聞いているのか「きゃあ!」と歓声を上げる子もいた。
「あ、ごめんなさい、つい……」
紗栄先生が自分の言動を謝りつつ、川上先生の腕に手を伸ばした。
私の心は平穏を保とうと……。そう、動揺しちゃってたんだよ。悔しいことに。
川上先生はさっと身体を引いた。そして、田中先生の方へ大きく動いて、紗栄先生から離れた。
紗栄先生の手は空中で握りしめられ、私達の方を見た。そして、私を睨んだ。
やっぱり、真理先生が何かしら、話をしたんじゃないの!?
私はちょっと顔が強張ったけれど、紗栄先生をしっかり見返した。だって、私は川上先生のただの生徒だから。
「『健司』って……。この生徒達がいる所で言うかな!?」
アキが呆れたように言って、私は苦笑してしまった。
「やっぱ、元彼女だよね」
少し川原で過ごしてから、ホテルに戻り、夕食を今日は6時から頂く予定であるとみんなに話す。これは夜に展望テラスに星空を観に行くから。
夕食後8時にロビーに集合、バスに乗り展望テラスに行く予定!
バスで移動なので集合時間をしっかり守ることとみんなに伝える。
そして、山の上で夜、涼しい、寒いこともある。そこでじっとした状態で星を見る。身体が冷えない服装をしなくてはいけない。気持ち温かめな服装で、厚めな上着は絶対に持っていくようにと。
川上先生も話をしてくれて、展望台にはホテルの他のお客様や、違うホテルやペンションのお客様も来ている場所なので、静かにすることと注意を伝えてくれた。向こうで温かいお茶がサービスで出ることも話してくれた。
さっき、残ってそういう話を聞いてくれてたのかな?
私が、川上先生と紗栄先生が自然科学部の子達を気に掛けない、仕事しない……、なんて文句言ったから!? 働いてくれてる?
読んで下さり、ありがとうございます。




