6 想像
どうぞよろしくお願いします。
少しするとホテルのバスが到着した。
私は運転手さんに手で合図してドアを開けてもらった。マユミと一緒に挨拶する。
「泉学院中高の自然科学部と文芸部です。
どうぞよろしくお願いします!
準備ができた子からバスの乗ってても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。他のお客様はいないので、このバスは貸し切りです。車内の方が涼しいですから、どうぞ!」
運転手さん、若い男性だ。やさしい。いい人そうで良かった。
「バスの中の方が涼しいから! 乗れる人は乗っちゃって!
マユミ、中で人、数えて!」
マユミとアキに先に入ってもらうと、そこにいた子達はどんどん乗ってくれる。順調!
田中先生と横川先生が乗り込み、横川先生が乗降口で振り向き「川上先生!」と呼んだ。
もう、お客さんは乗っちゃっててっ!
……あれ、ふたりばかり足りない気がする……。誰……、まいちゃん!?
さっき、話したけど、そういえば……。
周囲を見回して確信する。売店にはいないのを確認。ああ、トイレかも!?
トイレの周囲が木陰で涼しいとか言ってた記憶が蘇る。
かなちゃんが「荷物預かります」と私の荷物を預かってくれる。
本当にいい子!
「ありがと! ちょっとトイレ見てくる!」
やっぱり! トイレの前のベンチにいた! まいちゃんと中一のかのんちゃんだっけ?
「もうバス来てるよ!」
「えっ、あ、すみませんっ!」
「いや、時間的には今ちょうど集合時間くらいだけど」
私は苦笑して「もうみんなバスに乗ってるの、バスの方が涼しいから」と伝えた。
まいちゃんとかのんちゃんが走りだし、私も後を追って行き、ふたりをバスに乗り込ませる。
バスの外には手ぶらの川上先生だけだった。
「すみません! これで全部です!」
運転手さんに声を掛け、奥の席のマユミに手でマルを作り首を傾げると、手のマルで返事してくれた。
全員乗り込めた。ほっ。
荷物……、かなちゃんのとこかな?
かなちゃんの席に行こうとしたら、一番最後に乗ってきた川上先生に腕をつかまれ、前の席に引っ張られる。
「荷物、ここ」
「え、あ、先生が?」
「座れ」
なんか納得いかなかったけど、まあ、私が座らないと出発できないし。
私の荷物を持ち上げてそこに座ると、荷物を膝の上に乗せた。
「では、出発しまーす」とバスの運転手がのんびり言ってバスは動き出した。
うう、川上先生の隣……。私は窓の方を見た。
首がぎぎっと固定されそう。荷物が膝の上で身体ごと向けないんだよね。
ため息をつく。
「お疲れ様。頑張ってるな」
「……係なので」
車窓は緑の山が遠くに見える。大きな川の橋を渡っているところだ。
後ろの方でみんなが楽しそうにおしゃべりしてるのを聞きながら、私は心臓がバクバクしてきた。
な、何を話したらいいんだ!?
そもそも……、話さなくてもいいか!? それ不自然!?
「何か怒ってる?」
「怒っては……、うーん、川上先生と横川先生がお客さんなのが、ちょっとイラっとしてる」
「お客さん?」
「うーん、自然科学部の子達のことあんまり気にしてないし。
横川……、紗栄先生はひとり部屋にしろとか言い出すし」
「ひとり部屋?」
「はい、ゆかり先輩達が入るツインをひとりで使ってもらうことになりました。
川上先生達の部屋の隣です」
はっ、もしかして……、そういうこと!?
私は顔を強張らせて川上先生を見た。首痛い。
「……何を想像したのかわからないが、隣の部屋には死んでも入らん」
「……殺されて連れ込まれたりして」
川上先生がククッと笑った。
私は少し気持ちが落ち着いてきた。
そうだ。これは学院の合宿なんだもん。先生と生徒で過ごすべきだ。気持ちもね。
読んで下さり、ありがとうございます。
急に短編を思いついて半日で書き上げました。1万字ちょいの読み切りです。
異世界の普通の平民の女の子のお話しです。『初恋にさよならを』
最初はとんでもなく不快な兄弟愛(女性にしてみちゃ、こんなのに巻き込むな、ふざけんなよっ!)って構想だったのに、おかしいな。ハッピーエンドな話になりました。兄弟愛、消滅しました。
ああ、こちらも頑張ります。
これからもどうぞよろしくお願いします。




