008-1-8_奴隷落ち(挿絵あり)
何度見ても、やっぱり小さい手だな……。ホントにこれで十八なの? 髪をつまんで目の前に引っ張ってみると。へぇ〜、結構、長い髪だ。背中まであるストレートか。色はシルバーで、メタリックな感じ。とても光沢があって、珍しい色だ。ん? 服は白いTシャツ――ワンピ? 違うか。着古されて色が褪せている。でも、汚れてはいないね。大人用のTシャツかな。
裾から右手を入れて、肩から腹にかけて確認する。
う〜ん、やっぱり子どもだよね。下も同じような色の半ズボンだ。ズボンをめくってその下を確認すると、どうやらパンツは履いていないようだ。
このズボンがパンツなの?
そして、一番気になるところ。
ズボンの下に右手を突っ込んで……と思ったけど――無防備な女の子に悪さしている気分になって――止めた。
足元を見ると、一応、靴を履いていた。その靴は皮でできているようだけれど、かなり薄いものだ。そして、もう一つ気になるのが顔だ。僕は、どんな顔なんだろう? 顔を手で触ったところで、どんな印象かさえ分からない。
あ~、早く鏡を見たいんだけど……。
ペタペタと自分の顔を触っていると、栗色のボブをした正面の女と目が合ってしまい、思わず視線を逸らす。
本当に、みんな奴隷なんだね。
檻の中にいるのは僕を含めて五人だ。女と男が二人づつ。
この人たちも攫われてきたのかな?
しばらくうつむいていると、その女性もうつむいた。また目が合わないようにこっそりと様子を見る。歳の頃は二十代半ばくらいに見える。前世の僕と同い歳くらいだ。ちょっとやつれているけれど、優しそうな美人さんだね。
その隣に座っているのは、四十歳くらいのメイド服を着た女性。
後の男二人は、手前が料理人の格好をした三十代くらいと、一番端の男は二の腕に文字のようなタトゥーをした年配。どの奴隷も、生気がない様子で、力なく鉄格子にもたれたり、膝を抱えて座ったりしている。
気分がどんよりするね。
横を向いていると、また正面から視線を感じる。チラッと見てみると向かいの女性が悲しい目をしてこちらを見ていた。
何だろう? 気になるんだけど。
あんまり見つめるから、思わず僕も彼女をじっと見つめてしまった。
何か言いたい事でもあるのかな?
すると、彼女はそっと両手を伸ばしてきた。
どうしたんだろう? 僕のことを抱っこしたいって仕草だよね。知らない人だけど、無視するのも何だかなぁ。
女の人だし、危険もなさそうなので立ち上がって女性の前に進んだ。すると優しく抱き寄せられて、膝の上に乗せられた。僕の後頭部が彼女の顎あたりに当たっている。女性は頬を押し当てるようにして僕をギュッと抱きしめた。
彼女の甘い匂いと体温が伝わってくる。
何だか照れ臭い。でも、人に抱っこされるのって、久しぶりだ。こんなに温かいんだったっけ……。
しばらく彼女に抱かれたままじっとしていると、今度は湿ったものが頬に伝ってきた。顔を離して見てみると、彼女の目から涙が流れている。
僕の為に泣いてくれているの? でも、さっき、転生してきたばかりだし、悲しい気持ちでは無いんだけどね……。
手で彼女の涙を拭ってあげると、彼女が僕を見つめる。
辛そうだね……。
そしたら、彼女はまたギュッと僕を抱き返し、肩を揺らして泣いた。声は出ていないけれど……。
ところがその時。
ん? 何これ?
心臓がドキドキする。どうしたんだろう? ちょ、ちょっと急に悲しいんだけど。で、でも、これ、じ、自分の気持ちじゃないっ! これって、この人の感情じゃないのっ!?
いきなりの事で戸惑ってしまったけれど、慣れてくると段々冷静になってきて……。
僕の中に彼女の記憶が流れてきたんだね。これも加護の力か。それにしても、なんて事だよ。この人、夫に売られてしまったみたいだ。ん? 浮気がバレたの? う〜ん、浮気でもない? よく分からないな。でも、男の人といるところを見つかって奴隷商に売られちゃったんだね。あぁ、子どもが一人いたのか。なるほど、僕を見て子どものことを思い出したようだね。いや~、それにしても、ちょっと驚いちゃった。人の目を見ると、記憶や感情まで読み取れるのか。
彼女が落ち着いたので、そっと彼女から離れようとした。すると、隣のメイド服の女性奴隷が横にずれて、僕を彼女たちの間に座らせた。そして、その女性は僕の頭を撫でながら優しい笑顔を向けた。
奴隷なのに優しい人もいるんだね。
二人の女性は、両方から手を繋いでくれた。二人にそれぞれ笑顔を向けると、二人とも涙を流してしまった。
やっぱり僕のことは不憫に思うんだね、きっと。
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ホントにこれで十八か?
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