081-5-7_ククルカンのククリナ(挿絵あり)
「ククルカン?」
聞いたことがない存在だよね。
「はい、ククルカンです。ククルカンは、羽毛のある蛇。スネークモンスターの最終進化形態です」
「へぇ、最終進化形態?」
やっぱり、ヴィースやカリスと同じだ。聞くだけでも凄く強そう!
でも、あくまでも見た目は少女のままだ。彼女の髪は、艶のある黒髪のスーパーロングで、お尻まで真っすぐに伸びていた。そして、前髪は眉毛の上で山型にぱっつんとカットされ、幼い印象を与えている。瞳は黒く、目尻が少し下がり気味で愛らしい顔立ちをしているけれど、ぷっくりと膨らんだ小さい唇には、真っ赤な紅をつけていた。そして、彼女の身長はそれほど高くはなく、僕よりちょっと低い。そういう少女っぽい体型は、彼女の巫女のような出立ちにピッタリとマッチしていて、白衣に藍色の袴、羽の模様が刺繍された薄紫色の透き通る千早を羽織り、草履を履いている姿は、巫女マニアには垂涎ものに違いない。きっと、精霊の気を感じないタイプの人には、巫女のコスプレ少女にしか見えないだろう。
しかし、緊急事態だったとは言え、彼女の同意なしに女神の祝福をしてしまった。そのことには、「最高の誉です」と喜んでくれたようだけど。
それだったら良かったのかな?
彼女は、恭しくお辞儀をし、「私に名前をくださいませ」と言った。
ああそうか、いつもの流れなんだ。
でも、いつも眷属になった存在達は名付けを求めてくる。
「名前を付けると何が変わるの?」
今さらだけど、そう思って彼女に聞いてみた。
「はい、名付けは、我々のような非物質存在を現実世界に留まりやすくいたします」
それを聞いていたエイルが、呆れたように言った。
「知らないで私の名前をつけたの?」
「はい、知りませんでしたけど何か?」
エイルの突っ込みに、いちいち反応しているとキリがない。それよりも、ククルカンの少女に名前を付けてあげよう。
え〜と、ククルカンだから……。
「わかった。それなら、ククリナっていうのはどう? 可愛いでしょ? あなたはククリナ、ククルカンのククリナよっ!」
すると、彼女が片膝をついて跪き、胸に右手を当てて言った。
「ありがとうございます。私は、ククルカンのククリナ。女神様の四の眷属にして、右腕となる者でございます」
そう言って、ククリナは少し首を傾けて微笑んでいる。
右腕かぁ? どう言う意味があるんだろうね? でも、ホント。ククリナは可愛いかも。さっきのも赦してあげよう!
そして、彼女は、目の前に近寄ってくると僕の左手を取り、「先程はご無礼をいたしました」と言って、突然、自分の白衣の懐を開き、彼女の右の乳房に僕の左手を押し当てたっ!
「わっ!」
そして、彼女は上目遣いで言った。
「……ですが、私の血潮は女神様のためにございます」
ククリナの仕草はあまりにも自然な流れだった。だから、抵抗なく彼女のおっぱいを触っちゃった。
柔らかで、温かい。それに、ちょっと、ククリナの方が大きいかも。女の子のおっぱいって、こんなのなんだ……。
ククリナが、一瞬、恥ずかしそうに目を伏せたので、ハッと我に返り、慌てて手を引いた。けれど、掌には、彼女の胸の感触が残っていて、彼女との特別な絆が出来たような気持ちになる。そして、ククリナは、開いた懐を整え、彼女が羽織っていた千早を僕に羽織らせてくれた。
「首輪をされた女性が一糸まとわぬお姿をしているというのは、あまりにも、目の毒ですので……」
彼女はそう言うと、自分の左手人差し指をペロリと舐め、「また、本能がでちゃいそうです」と言って、僕の身体に撫でるような視線を這わした。慌てて、千早の襟を引き寄せる。確かに、首輪だけして全裸の姿は、ちょっと背徳的すぎかも。
「ありがとう、ククリナ」
そう言ってククリナに礼を言うと、エイルが目の前に来て腰に手を当てて言った。
「スケスケで、エロさが際立ってるわよ」
「余計な事言わなくてもいいの! みんな女の子だし、いいでしょ。裸よりマシなの!」
ククリナの千早は、ありがたく借りることにする。ところで、さっきからアムが全然じゃべらない。気になって彼女を見ると、アムはのぼせたように顔を真っ赤にして、僕とククリナを見ていた。アムは僕の視線に気が付くと何かを思い出したように尋ねる。
「あ、あの、エリア様。先ほど、ククリナ様と、その……えと……、エ、エリア様が……。あ、あれは、何をなさっていたのでしょうか?」
「さっきの? あぁ、キスの事?」
アムが、内ももをこすり合わせてモジモジしている。耳が垂れてるし、尻尾も丸めている。その仕草、可愛い。
でも、何か、勘違いされてるみたいね。ちゃんと説明しとうこうかな。
「アム、さっきのは女神の祝福と言って……」
一応、説明したけど、アムは分かってくれただろうか。でも、悪いけど、今はアムの相手をしている場合じゃない。ククリナに、どうしてあんな大怪我を負っていたのか事情を聞かないといけない。
そして、ククリナから話を聞くことにした。ククリナが説明を始める。
「そうですね。もう、あれから三年くらい経ちますでしょうか……」
ククリナが言うには、あるとき、数人の人間が火口湖にやってきて、木箱を一つ神池に投げ入れたらしい。ククリナは、普段、実体化していないので、人間からすれば彼女の姿が見えない。そのため、人間たちは、神池の神々しさにも恐れを感じることなく、それから何度となくその行為を繰り返したようだ。ククリナも、始めのうちは人間たちが何を捨てたのかあまり関心が無かったらしい。何故なら、もともと、彼女は、神池を守護するための存在では無かったからだ。
「私は、この地のエネルギー的な循環を整えるものとして、イグニス山の山域全体に影響を及ぼす役割の存在でございました……」
彼女の話では、ガイアの活動を補助するためのエネルギーポータルの一つが、ここ、イグニス山を中心にした山域にあり、彼女は、そのエネルギーポータルを守護する存在として、遥か昔に、エネルギー体として発生したらしい。その後、ククリナもこの山域の影響を取り込み、地を這う蛇としての性質を帯びるようになったのだそう。
非物質存在って、そんな風に生まれるんだ。知らなかった。面白いね。
一方、人間は、美しく荒々しいイグニス山に畏敬の念を抱き、火口湖の神池が信仰の対象になっていったということだ。そして、そのうち、イグニス山に大蛇が住むということが囁かれ始め、神池の信仰と合わさって、ククリナは、神池の大蛇として、人間たちから勝手に崇められる存在になった。そのため、ククリナにとっては、神池への人間の行為などには、あまり感心が無かったと言う。もちろん、イグニス山域の自然エネルギーは、ククリナを生み出す程の規模なので、火口湖は、その一部であるとは言っても、濃密な自然エネルギーが蓄積される場所のようだ。しかし、人間が何かを神池に投棄する行為は、収まるどころか、エスカレートしていき、とうとう、ネガティブなエネルギーが際立ってくると、ククリナも見過ごすわけには行かなくなってきたらしい。人間たちの行為は、この山域全体の清浄な自然が破壊されることにつながり、ひいては、ガイアに良くない影響が及ぶ。そのため、ククリナは火口湖の水を浄化しようと考えたようだ。その時期には、既に人間の投棄行為は収まっていたものの、火口湖の水は完全に変質してしまっていたのだそうだ。そこまで行くと、もはや、ククリナの浄化魔法で回復できるものではない。そう悟ったククリナは、自らの身体に取り込んで浄化しようとし、あろうことか、湖底に沈む魔石を呑み込み始めたというのだ。
それで、あんなことに……。
ククリナのお腹にあった魔石は、百本ほどだったけれど、きっと彼女は、何回かその行為を繰り返していたに違いない。
「危なかったんだからね。無茶にも程があるよ」
ククリナにそう言って注意すると、彼女はベコベコと何度も頭を下げた。
まぁ、何とか事なきを得たから良かったことにしよう。しかし、やっぱり、黒い魔石は意図的に捨てられたみたいだ。さっきのベネディクト・ヒールで、湖底の魔石も浄化できているから、いずれ、この火口湖も元の力を取り戻すはずなんだけど問題は、火口湖がどのくらいの時間で回復するかだ。
小麦の種は、既に黒い魔石に侵されているので、それを浄化する必要がある。もし、回復までに時間がかかるなら、種の浄化はイグニス山の浄化エネルギーは活用できず、別の方法を考えなければならない。
その事をククリナに聞いてみると、火口湖のエネルギーが元の状態に戻るまでには一年以上の時間が必要とのことだ。
それなら、今年の種まきには、全く間に合わないよね。
それと、湖底には浄化されたとは言え、人工魔石が残ったままだ。何か変な影響が出ないとも限らないからちゃんと取り除いておかないといけない。一旦、教会に引き返してセシリカと相談した方が良さそうだ。
そろそろ、戻ったほうが良さそうね。
夕刻も過ぎて、寄合が始まる時間になっている。
「教会の様子はどんな感じかな?」
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ククルカンのククリナ
AI生成画像
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