078-5-4_目覚めの兆し(挿絵あり)
空には雲がなく、月は眩しいほどに輝いている。
綺麗な満月だな……。
月の光を見ていると、意識がぼんやりとし周囲の音が消え去っていくような感覚になる。すると、いつの間にかとても冷静な自分になっていることに気が付いた。
何だろう……この感じ……? でも、今から放つ大魔法に集中できて丁度いい……。
五感の感覚がクリアになっていくと、心臓の鼓動がいつもよりも大きく聞こえ始めた。目を閉じて意識を心臓に向けてみる。
これは……。
瞼の裏にイメージが浮かんだ。
心臓が見える。そして、心臓は、全身に血液を巡らせ、血液は、枝分かれした血管の中を通っていく。イメージが流れるに任せていると、次に、血管の中を移動するような映像に切り替わった。血管は、フラクタル構造のように、肉体の先端に向かって、同じ形状をしながらどんどんと細分化されていく。
美しい……。
血管の中を勢いよく流れる赤い血液細胞は、新鮮な空気と純粋なガイアのエネルギーを纏い、それらを組織の隅々まで適切に運び届けているのが分かる。
細胞たちが……生まれ変わり続けているんだ……。
それにしても、何で、今、このイメージが見えたのだろう?
不思議な気持ちを他所に、身体の方は、突然、胸のあたりが熱くなり、肌を撫で上げられたようなゾワゾワとした感覚が、つま先から頭のてっぺんまで走り抜けた!
うぅーーっ! こ、これは、つ、強い! い、意識が……持っていかれそう!
目をギュッと閉じたまま、歯を食いしばって全身に力を込める。
クッ! あ、あの時と同じだ!
この感覚が来ると、とにかく、収まるまで耐えるしかない。しかし、しばらくするとその感覚は徐々に収まってきて、ようやく、身体の力を抜くことができた。
ふぅ〜。今のは、凄かったな。
初めてこの感覚を経験したのは、レムリアさんに、僕の内面のエリアに向かって叫ばれた時だった。しかし、今のは、その時よりももっと強い感覚がやって来た。今も、胸の中心が熱い。でも、そのうち収まるだろう。
そう思っていたのに……。
「な、何で? 身体が光り出しちゃってる!?」
熱くなっている胸のあたりが青白く輝き出し、その光は強くなって、自分でも眩しくて目を開けていられなくなった。すると、胸の熱い感覚が、血管を通って手足の先まで広がり、全身が温かくなっていく。そして、自ら発する光の中でとても大きな安心感に包まれた。
ど、どう……なったの……かなぁ〜? な、なんだかとても、リラックスするよ〜。
光の中にいると思考が働かず、ただ、あるがままに、そこにいる。そんな気分になってくる。そして、しばらくその感覚に身を委ねていた……………………。
ーーーー。
その後、どれくらい経ったのかは分からない。しかし、徐々に身体の感覚が戻り始め、ゆっくりと目を開けた。
あぁ~、光が消えていく。もう終わったんだ。
まだその感覚に身を委ねていたい気持ちを残しながら、ゆっくりと目を開けた。どうやら、光は収まってきたようだ。満月は、まださっきと同じ位置にある。
なんだ、一瞬だったみたいだ。でも、今のは何だったのかな?
エイルが唐突に言った。
「ちょ、ちょっと、エリア様……大きくなってるわよ。いろんなところが!」
「何言ってるの、エイルは。意味が分かんないよ」
まだ、余韻が残っていて身体がリラックスする。そのまま宙に浮かびながら、両腕をだらりと下げていた。風が髪を靡かせる。
ふぅ~、お風呂上りみたいで気持ちいい〜。
顔にかかる髪を手櫛で後ろに流す。
……ん? 何だ、今の違和感? 何か変だった?
髪を梳かした手を目の前に持ってきた。そして、その手を見る。
「えっ?」
いやいや、違うでしょ。
一旦、目を閉じた。そして、もう一度、目を開ける。
……?
なっ? ど、どうしてっ!? て、手が大きい? な、何で!? ま、まさか……。
そして、自分の身体をゆっくりと見下ろした。すると……。
「う、嘘っ!? せ、成長してる……」
そう思った途端、胸の鼓動が高鳴るとともに、一瞬、自分の身体のことを別人格のパートナーのように感じてしまった。そしてそれは、恥じらいながらも誇らしそうにしている。
こ、こんな……マ、マジ? な、何か、とっても自分の身体が愛おしいんだけど……。
恐る恐る、両手で胸の上から順番に撫でおろしてみる。
お、おっぱい……だ。ふ、膨らんでる! お、女の子? そりゃそうよね。え、え〜と、大きさは……て、掌に収まるくらい。ちっちゃいの? で、でも、か、可愛いかも。
さらに下の方へ。
お腹も、へっこんで……。や、やせ気味かな?
もう少し手をずらして、その下も。
こ、ここは、ダメっ!
そして、太ももを触って、そのまま手を後ろに回し、膝を屈めてお尻のほっぺを下から上に擦った。
お尻、まだ、小さめだけど、でも、本当に大人になってる……。
「何で?」
夢を見ているのかと思うくらい、おかしな現実だ。それに、やっぱりとても誇らしくて嬉しい。どういう訳だろう。
お、女の子らしくなったから?
すると、今度は、お腹の下が熱くなるあの感覚がやってきた。それがどんどん込み上げてくる。身体中の血液がそこに集まってきているように熱い。
だ、大丈夫なの、これ?
ジンジンとする感覚が波になってやってくるみたい。
何? ちょ、ちょっと落ち着かないんだけど……。
その感覚から気持ちを逸らそうとしても、どうにもならない。しかし、何とかやり過ごすしか他に方法がない。
ううっ! この身体、ど、どうなってるのかな?
ドクンッと心臓の音が鳴り、まるで、全身を覆っていた透明の殻を一枚脱ぎ捨てて、新しい自分に変わったような感覚に襲われたっ!
な、何? 何? 何が起こってるの?
そんなことしたことないけれど、まるで、脱皮したかのような気分だ。
ふうっ~~~。も、もうっ! ホントに何だか、おかしいっ! おかしいよっ! だ、だって、まるで……気持ちまで……お、女の子になっちゃってるよーーーっ!?
エイルが言った。
「スタイルいいわね、エリア様」
ーーーー
「えっ?」
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