006-1-6_ 加護
う〜ん、それにしてもレムリアさん、自信満々な雰囲気だけど、それってそんなに凄い加護なのかねぇ?
「何? あんまり食いついてこないわね」
心の声を読まれちゃった?
「だって、女神の英知が何だか分かりませんし……」
「当然でしょ。今から説明するんだから」
そ、そう言う事、早く言ってよね。でも、今度は、説明ちゃんとお願いしますよ。
「女神の祝福って加護は、女性性を活性化させることで、最強の加護になるの」
「女性性を活性化?」
「ええ、女性体験の積み重ねってことね。ガイアの歴史上、この加護持ちが何度か生まれているのだけど、彼女たちの足跡が女神降臨の逸話となって各地に残っているわ。それくらい稀有な加護なのよ」
「ホントですか?」
う〜ん、逸話かぁ。知られざる話って事だよね。じゃぁ、世間の人たちは加護持ちを女神だと勘違いしていたということだな。それなら、女神と同等ってことじゃないの? そりゃ凄そうだ。でも、そもそも女神ってそんなに強いのかな?
「本当よ。これだけは言っておくけど、女神の祝福加護があれば、全ての魔法が使い放題なんだから! しかも、魔力は無尽蔵に利用できるのよっ! 凄くない? それだけじゃないわっ、自分に向けられた魔法も、殆どの場合レジストできるの。完璧でしょ! まぁ、魔法を覚えるにはそれなりに努力が必要なんだけどね」
ほ、本当に? そ、それなら……。
「む、無茶苦茶凄いですね……」
魔力が無尽蔵で、しかも相手の魔法も無力化できるなんて、怖いもの無しだ! ただ、使う方は努力が必要ってのが気になるけど。つまり、最初から覚えているというわけではなさそうだな。
「それなら、どうやって魔法を使えばいいんです?」
「そんなの決まってるでしょ。イメージよイメージ! 魔法は、頭でイメージするのよ。つまり、イメージできるものなら、何だって魔法にできるって事よ!」
「そ、そうか、それなら、いろいろと魔法を創造できそうです!」
「でしょ!」
ウシシ……これは色々とイメージが湧いちゃうよ。
「もう少し魔法の説明を加えるとね、ガイア世界で人間が魔法を使うには二つの方法があるの。一つは魔石技術を使う方法。そしてもう一つは古来からの方法よ」
「なるほど」
「で、古来の方法は精霊や妖精との契約なんだけど、そうなれば、使える魔法の性質も、契約した精霊や妖精の性質に依存することになるわ。ここまで言えば、私が何を言いたいのか分かるわね?」
「分かります分かります! この加護は契約不要。つまり、魔法に関してオールマイティだってことですよね!」
「そうっ!」
いや、これは本当に凄いかもしれない! 魔石技術っていうのも気になるけど、今は置いておいて、それよりも、女神の祝福、なかなかにチートのようだな。ふむふむ。まぁ、加護の概要は分かったよ。これを駆使すれば無双で間違いないな。
しかし、問題はさっきの転生体験のことだ。いくら魔法が際限無く使えるって言っても、あんな状況から抜け出せるんだろうか。こっちの魔法だって、もしかしたら、レジストされてしまう技術があるかもしれない。それに、小さな子どもなんだし、あの続きだったらあっさり死んじゃうってことにならないよね?
「え〜と、質問してもいいですか?」
「何でも聞いてちょうだい!」
「じゃぁ、さっきの身体が動かなくなった体験はどういう状況だったんですか?」
レムリアさんは、サクッと言う。
「奴隷商に攫われたところよ」
「ど、奴隷商?」
奴隷なんだいきなりっ! ドラマの話を聞いてるんじゃないですからね! ノンフィクションなんでしょ、これは?
「さっきの子どもなんですけど……」
「あの女の子ね。十八よ」
「え? え〜〜〜っ! こ、子どもですよね?」
「十八歳って子どもなの?」
「い、いや、違いますけど、で、でも、確かに小さい身体だったような……」
「竜族」
「何ですか?」
「あの身体は竜族の身体よ」
「竜族? 人間ではなくて?」
「まぁ、ヒューマンという区分にはなるわね。でも、竜族は特殊な種族でね、生命力が強く、魔力との親和性が他の種族とは比べ物にならないの。肉体も強靭だから多少の事では傷もつかないわ」
「本当に?」
「嘘つく訳ないじゃない。でも、その分、成長はゆっくりしてるかしら。二十歳を超えても、見た目はそう変わらないんじゃない? と言うか、歳をとっても同じようなものだわ。まぁ、女神の祝福加護があれば関係ないんだけど」
「そうなんですか? ちょっと意味が分かりませんが、いや、でも、十八歳って、どう見てもまだ……」
「それは偏見よ。ガイア世界じゃ、何事も前世の基準で判断しない方がいいわね。それこそ、デミヒューマンと呼ばれる種族の多くは、外見で年齢なんて判断できないんだから」
「デミヒューマン? モフモフ獣人とかもいるんですか?」
「当然よ。それにしても、竜族の資質に女神の祝福加護が加われば、さっき言ったように間違いなくとびきりの美人になるから、先々が楽しみね」
「そ、そうですか……」
と、とびきりの美人……ぼ、僕が……。
「……そのためにも、そうね……満月の夜には、月光浴をお勧めするわ。フフフ」
フフフ? 月光浴がいいの?
「じゃ、じゃぁ、あの竜族の身体に転生するとして、で、でも、結局は奴隷商に捕まったところから人生が始まるんですよね?」
「そうよ。だから?」
「だ、だから、い、一応、じゅ、十八の女の子が奴隷にされちゃうんですよね? あの子の明るい未来が見えないんですけど?」
「大丈夫。女神の加護が、あ・る・か・ら」
「いやいや、そんな言い方しても一緒ですよ。あの子に転生したときの、衣食住の心配がごっそり抜け落ちてますけど〜!」
「どうにかなるって、そんな事」
「そ、そんな事って……」
ホント、行き当たりばったりというか、適当というか、段々レムリアさんの性格読めてきたよ。もしかしてレムリアさん、生活力無いタイプなの? 大丈夫かな? いや、大丈夫じゃないよきっと!
しかし、僕の叫びはレムリアさんに届かない。
う〜む、仕方ないな。これ以上細かな事をレムリアさんに聞いてもダメそうだ。でも、気になっていることはまだ他にもある。
「エリアってどういう人物だったんですか? レムリアさんとの関係は?」
そう言うと、彼女が、一旦、口を閉ざした。
「……」
ん? あれ?
そして、彼女は少し間を開けて話し始めた。
「……それは……私から話すことはできないわ……」
「そう……なんですか?」
もしかして、これ聞いたらダメなやつ?




