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040-3-5_水竜ヴィシャップ(挿絵あり)

 首長竜は、あまり感情を表に出さないけれど、それでも、彼が、この事を深刻に考えているという事は伝わってくる。


「そうなんだね……」


 これは、自然にも人間の生活にも悪影響が出るような話だ。この話は、王国の問題でもあるので、男爵にも伝えないといけない。


 それにしても……。


「どうして、君たちはウィンディーネの眷属でいられなくなったんだろうね?」 


 首長竜に聞いてみると、彼は、突然、ウィンディーネとの繋がりが断ち切られてしまったと言った。しかし、彼には、その理由が分からないらしい。そして、彼は、はっきりと断言するように言った。


「精霊様が、眷属の契りを解除されるなど、普通はあり得ません」


「なるほど」


 それなら、ウィンディーネが居なくなったことには、よほどの理由があると言うことか。しかし、このままの状態なら、元眷属たちは益々力を無くしてしまう。


 逆に僕の眷属になると力を維持できるということなんだね。それなら、承諾したほうがいいのかな? 


 首長竜が嘘を言っているとは思えない。わざわざ、僕に挨拶をしようと考えたくらいだから、むしろ、誠実だ。


 彼は正直そうだしね。


「分かったよ。君たちを僕の眷属とすることを承諾しよう」


 すると、首長竜は、「感謝いたします」と言って、背中の大剣を脇に置き、椅子から降りて右足を立てて跪いた。そして、右腕を胸に当て、少し顎を上げて目を閉じた。


 ん? 何だ、突然?


「どうしたの?」 


 そう言うと、首長竜が言った。


「眷属の契りを」


「ち、契り? 何、その姿勢? 何待ってんの?」 


 意味が分からず、動こうとしない僕に、首長竜が言った。


「私に契りの接吻をお願いします」


 せ、接吻?


「な、何?、眷属の契りって、キ、キスの事なの?」


 首長竜は、何も言わずに頷いた。

 

「ちょ、ちょっと、待ってよね。キスするなんて聞いてないよ」


 どうしよう? もう、返事しちゃったじゃないか。キスなんてしたことないし、ちゃんと言ってよね! 初めてなんだからね、僕は。で、でも、キスって、ど、どこにするんだよ?


「あの~」


「唇です」


「だよね~」


 いや~、でもね~、この人、男でしょ。僕は見た目は女の子だけど、気持ちが男のまま……のはずで……イケメンなんだけど、うう~、どうする? 


 首長竜が薄目を開けた。


 その涼しい目で見られると、なんだか変な気分になるからやめて。


 うじうじしていると、彼に優しく手を取られた。そして、引き寄せられ……。


 く、来る、来る、来た、ヤバい、うっ! んんっ! ゾワゾワするっ! 


 目を閉じた瞬間、彼の唇が触れた。それは、一瞬のことだった。


 こ、これが……唇に触れる感触……。


 イリハの時は子ども相手だったし、ちょっとだけだったから何も意識しなかったけど、い、今のは……。


 彼の唇の滑らかで柔らかい反発を自分の唇の先に感じた瞬間、強張っていた身体が脱力してしまった。頭も空っぽになって、ちょっと、また、お腹の下あたりが熱い。


 うぅ~。この感覚は慣れない……。


 首長竜は、ゆっくりと僕を押し戻し、今度は、右腕を自分の胸に当て、頭を深く下げた。しかし、その途端、彼の胸のあたりが青白く光だした! そして、それが全身に広がると、完全にその光に包まれてしまった!


「眩しいっ!」


 な、何が始まったんだっ!? 


 腕で顔を覆いながら薄目を開けて見ていると、その後、光は真っ白に代わり、そして、徐々に収まっていった。しかし、光が消えた後も、彼は同じ姿勢のままで、何かが変化した様子はなさそうだ。


「ん?」


 しかし、立ち上がった彼は、何かさっきと雰囲気が違う気がする。ポカンと彼を見ていると、気が付いた。


 目の色だ。


 彼の目の色が濃い青に変わっていたのだ。それに気が付いた瞬間、さらに、彼が大きく変化していると悟った。


「す、凄いよ、威圧感が桁違いになってない?」


 すると、彼が言った。


「私は、女神さまの一の眷属にして女神様の剣となる者、水竜ヴィシャップでございます」


「水竜?」 


 さっきまでは首長竜って言ってたよね。もしかして進化したのか? 


 彼の説明によると、女神のエネルギーはこの世の最高のエネルギーであり、その眷属になることで、その存在たちは最高の進化形態となることが出来るらしい。そのため、彼は、水棲竜族の最高形態、水竜となったそうだ。


 そうなんだ。ちょっと、一気に進化し過ぎじゃないか? 


 首長竜が水竜になって、どれほど強くなったのかは良く分からない。でも、これで、彼の弱体化を止められたわけだ。まぁ、とにかく、無事に終わった。


 キ、キスなんて、た、大した事無いね。へへっ。

 

「ん?」


 待てよ? まさか、他の存在とも全部キスする必要なんて無いよね? 


「もしかして、他の存在ともキスを……」


「そんな必要はございません。私を通して契約が終わっております」


 彼はそう言ってくれた。


「よ、良かったよ。全部の存在となんて、とてもじゃないけど、唇が腫れちゃいそうで、どうしようかと思っちゃった。ハハハ」


 彼の言葉を聞いて安心した。


「それなら、他の眷属も進化したんだね?」


 そう彼に聞いてみると、彼ほどではないが、個体により、多少の進化をしているはずということだ。とりあえずこれで、生態系のバランスがすぐに崩れることはないかもしれない。


「も、もう用は……済んだよね?」 

 

 水竜は平然と、「はい」と答えた。


 「それなら、戻るとするか」


 眷属契約の余韻で心が落ち着かないまま、古代遺跡から転移して最初の岩に戻った。湖面に戻ると、自らを水竜と名乗った彼は本来の姿を現し、なんと、本当に厳つい顔をした水竜になっていた。しかも、湖の上に四本足で立っている。


「忍者かっ!」


 大きさは首長竜より一回り小さくなっているけれど、身体の色は黒っぽい色から、濃紺でメタリックな色に変化している。見るからに頑丈そうな皮膚で、全身から神々しい気があふれ出ていた。半霊半物質の存在である首長竜と比べると、今の彼は、全霊の存在。精霊と言ったほうがいい。四大元素の精霊と言われる水の精霊ウィンディーネと同格かどうかは分からないけれど、とてつもなく進化したのは間違いない。僕の本当の女神の力はまだ覚醒していない。でも、何とか眷属たちを進化させられたようだ。


 これで良かったんだよね。


ーーーー

挿絵(By みてみん)

ヴィース

AI生成画像

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