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039-3-4_首長竜の願い

 その塔は、庭園の端の方にひっそりと存在していた。


 あそこに行けば、エリアの手がかりが何か掴めるかもしれない。


「よし、あの塔に行ってみよう」


 テラスから塔まで、百メートル弱はありそうだ。


「それにしても、見てるだけでワクワクしてくる庭園だね。後でゆっくりと散歩しよう」


 何だかウキウキ~。


 そして、階段を下りようとした。しかし……。


「あれ?」


 右足を出した途端、弾力のある反発があり、足を下の段に降ろせない! 


「どうなってるんだ?」


 体を少し前傾にして、もう一度試して見た。すると、今度は、頭が何かにぶつかった。 


「痛て! いや、痛くないか。でも、何だ? 何かあるよ?」


 手を伸ばしてみると、やはり、柔らかいものを触っている感触がある。透明な液状のシールドが、テラスの周りを囲っているかのように、壁を作っている。もう一度、手で、グッと押してみた。


 重い!


「押せば押す程、固くなるぞ」


 そのシールドは、力を加えるほど抵抗が強くなるようだ。


「何か仕掛けでもあるのかな?」


 魔力を流すとかどうだろう? この先は、魔法が使える者しか進めないとか、そんな設定があるんじゃないの? 


 そして、右手に魔力を込め始めた。しかし、その様子を見ていた首長竜に、止められてしまった。


「お止め下さい! このシールドはウィンディーネ様がいらっしゃらないと解除されません」


 彼に注意され、手に込め始めた魔力を止めた。


「そうなの?」


 目の前に塔があるのに……。


 まぁ、それなら仕方ない。無理して何か壊してもいけないし、残念だけど、あの塔に行くためには、ウィンディーネを探さなければならないようだ。でも、今日はいろいろと分かって収穫もあったし、ここには、次から、転移して来ることができる。一旦帰って、水の精霊ウィンディーネが居なくなったことを男爵に伝えることにしよう。


「じゃぁ、また、出直すよ」


 そう言って、お屋敷に転移しようとした。しかし、その時、首長竜が、何か言いたげな表情をしながら、一歩前に進み出た。


「女神様、お願いがございます。我ら湖の存在を女神さまの眷属にしていただけないでしょうか?」


 突然、何? 


「眷属?」


 眷属って言うと、お稲荷さんの狐とかのことだよね?


「何だい、僕の眷属って?」


 首長竜は眷属について説明した。


「はい。眷属というものは、各々、本分がございます。私の場合は剣となり、主人の敵を打ち滅ぼす事が役割でございます」


 あ~、なるほどね。眷属はそういう役割なんだ。


「え~と、そういう意味じゃなくて、何で君たちは眷属になる必要があるのかな?」


「はい。我々のような存在は……」


 首長竜は、改めて眷属になりたい理由を説明した。

 彼によると、彼らのような半霊半物質存在は、人間からの信仰を受けることや、主を持つことで、自分たちの存在目的が定まるのだという。


 う~ん、ちょっと難しいけど、何となく分かった。つまり、逆に言うと、目的が定まっていない場合、彼らのような存在は、善にも悪にもなりうるということだね。ある意味、魔獣になっちゃうってことかな?

 

 しかし、ウィンディーネの代わりが必要だという首長竜の言いたいことも分かるけれど、突然の申し出だ。


 まぁ、でも、いきなり断ることもできないよね。とりあえず、彼の話を聞いてみるか。


「立ち話も何だし、そこに座ろうか」


 そう言って、首長竜とともにガゼボに移動した。ガゼボの椅子は無垢材を使用した重厚感のある木製の椅子で、座面が程よくカーブしてあり、とても落ち着くことができる椅子だ。


 これ、座り心地いいね。


 彼は、テーブルの向かいに姿勢よく座り、手を軽く握って膝の上に置いた。そして、僕が彼の目を見ると彼が話し始めた。


「突然、お願い事を申しまして、大変失礼いたしました。実は……」


 彼は、最近、人間が良くないものを湖に捨てていると言って右手に握っていた物を見せた。


「この石でございます」


 彼が見せたのは、五センチほどの黒い石だった。その石は、細い六角形をしており、何だか気分が沈むようなエネルギーを纏っている。


「何だ、この石は? とてもネガティブなものだね。こんなものが湖に?」 


 首長竜によると、この石が湖底に大量に捨てられているらしい。しかも、この石が散乱している付近では生物がいなくなるという。さらに、彼の話では、湖の魔力がこの石に吸収されているということだ。そして、その影響が、徐々に湖の存在達に広がり出しているということのようだ。


 首長竜は言った。


「今、ウィンディーネ様の眷属だった者達の力が少しずつ減少しています。問題なのは、それに反して、魔獣が狂暴化していることです。このままなら、いずれ魔獣の力が勝り、湖の秩序が無くなりましょう……」


 彼は深刻な様子で話をした。もともとレピ湖の魔獣たちは、湖底で自然に発生するらしいけれど、魔獣の数は、自然淘汰により一定の範囲で抑えられているとのことだ。首長竜など精霊眷属達は、他の魔獣を餌にしている訳ではないけれど、生態系の頂点として増えすぎた魔獣を狩り、湖全体のバランスを取っているようだ。しかし、この石の影響で、生態系のバランスが魔獣よりに傾きつつあると言う。このままでは、さらに魔獣の狂暴化が進み、レピ湖が危険な湖となってしまうのだそうだ。そして、石の影響は、水の循環にも影響を及ぼすらしい。


「……もし、このまま放置すれば、湖が持つ水の浄化作用が損なわれるかもしれません」

「面白いかも!」


「続きが気になるぞ!」


「この後どうなるのっ……!」


と思ったら


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