029-2-10_ 新しい家族
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しかし、そこでダニールが言葉を挟んだ。
「そうなんです。この子に掛けられた奴隷の魔法は切れてるんですよ。そうだろう? エリア」
ダニールの奴、間がいいのか悪いのか。まぁ、それで押し通そう。
「はい、そうです。魔法が切れちゃってるみたいで。あっ、僕の名前はエリアって言います。そして、彼はダニール。イリハ様のご病気も、僕の父さんが同じ病気だったのでたまたま知っていただけですよ。少し治療魔術が使えることがうまくいったようです」
どうだろう、ごまかせたかな。実際には、父さんはガンだったんだけどね。
男爵が言った。
「エリア様と仰るのですね。しかし、あの御業がたまたまですか? い、いえ、何かご事情がおありなのでしょう。これ以上の詮索はいたしますまい。それより……」
「イリハって呼んでっ!」
イリハが突然話に入ってきた。
元気が戻ったね。
「だって、女神様でしょ。私、女神様とお友達になりたいっ!」
あはは、どうしよう。なんて言おうかな~。
すると母親のローラが言った。
「あなた、私からもお願いでございます。エリア様はきっと、女神様とご縁が深いお方ですわ。私にとってもイリハにとっても、女神様そのものです。エリア様にずっとお屋敷に居ていただけるようにお願いしてください」
ローラはそう言うと、ハンカチで鼻を押さえながら、真っ赤な目で僕に笑った。男爵は、腕組みして大きく頷いている。
う~ん、なんだか、展開が読めなくなってきたぞ。ダニールも様子を見ているようだな。
しかし、当初の予定ではマリーナと僕を交換する計画だったのだ。
よし、それなら予定通り話をしてみるか。
「あの、男爵様、私たちがこのお屋敷を訪れたのには理由がございまして、実はその、一昨日ですね、男爵様が買われた奴隷の女性なんですが、もしよろしければ、僕と交換してもらえないかと……」
そう言うと、男爵が執事の方を見た。すると、執事が、「ただいま、離れで控えさせております」と男爵に説明した。彼の報告を受けて、男爵が僕たちに理由を尋ねてきた。
もう、こうなったら正直に話そう。ダニールの話だけ。
そして、僕とダニールが交互に、ここまでの経緯を全部を説明した。説明を終えると、男爵がとてもフレンドリーな表情になって話し始めた。
「わかりました。それならどうでしょう、エリア様はそのお歳で自律している大人のように感じますが、生活の拠点はあるのでしょうか? エリア様さえよろしければ、イリハの姉として私たち家族のそばでずっと一緒に暮らしていただけないでしょうか? そして、昨日連れてきた彼女は彼にお返ししましょう」
それを聞いてイリハが手を胸の前で組み、祈るようにして僕の返事を待つ姿勢になった。
イリハさん、目がちょっと怖いですよ。
しかし、その隣では、目に力を滲ませて彼女の母親が祈っている。
ローラ夫人もねっ!
でも、どうかな~、冷静に考えるとこの上なくいい方向のような、マリーナも帰ってくることだし、ダニールも喜ぶだろうしねぇ。僕はというと、安心安全衣食住が手に入る訳だから、断る理由が無いように思うんだけど……。でも、これだけは言っとかないとな。
「一つよろしいでしょうか。実は、僕の首に付いているチョーカーは、隷属の首輪と同じ、というか、それよりももっと強力な呪いのようなものなので、外れる事もありません。そのような人間が、男爵様のお屋敷をうろつくなどというのは、世間体が悪いというか、その……、ふさわしくないんじゃありませんか?」
男爵が、ハッ、となった。そして言った。
「先程のご無礼はお赦しください。実は、私どもの家訓として、奴隷は持たないということを決めておりまして。理由は、我が家系は代々セリア教を信仰しており、そのセリア教が奴隷制度を認めていないためなのですが、奴隷に身を落とした人間の中には、能力が高く素行が良好なのに不可抗力で奴隷にされてしまった者もおります。必要な人材を求めて奴隷を購入することはありますが、屋敷に入ってもらうときには、隷属魔法を解呪し、全て通常の使用人として扱うことにしています。ですから、エリア様が奴隷でない以上、隷属の首輪があろうとなかろうと問題はないのです」
そういことか。
ここにいるメイドも、もしかしたら奴隷だった者もいるかもしれない。だから、どのメイドもこれほど忠誠心が高いのか。
それなら返事は決まりだな。
しかし、隣のダニールが手を挙げた。
何のつもりか分からないけど、はいっ、ダニール君!
「それならば、私も無礼をお詫びしなければなりません。私は、奴隷を買うようなご貴族様はみな、奴隷から搾取しようとする方々ばかりだと考えてきました。しかし、男爵様のお話をお伺いして、もしかしたら、マリーナは、ようやく自ら選択できる人生を手に入れられるのではと思っています。ですので、先程のエリアとマリーナを交換する提案は取り下げます」
「そうなのっ!?」
ちょっと待ってよ。それなら今までの苦労は何なのよ? でも、ダニールの言うことも一理あるのかな? いやならマリーナはいつでも辞めればいいわけだし、自由で仕事もあって安全とくればね。
男爵がダニールに向かって言った。
「それなら私だけが得をすることになるが」
男爵がそういうと、ダニールは、「では、できますならば……」と言って自分の考えを提案した。
「私は料理人ですので、こちらで私も使用人としてお仕えさせていただけないでしょうか? 私もマリーナの近くに居たいのです」
そうか。それならマリーナとも一緒にいられるし、いいかもね。でも、ちょっと虫がいいんじゃないかな。
男爵が言った。
「なるほど、しかし、ボズウィック家の台所を任せるためには相応の技術がないとな。では、こういうのでどうだろう、料理長に君の腕前を見てもらって、許可が下りれば君を召し抱えることにしよう。もし、その結果がどうあれ、君の借金は私が立て替えてあげることとして、君の彼女も、私が責任をもって使用人として召し抱えようじゃないか」
「よろしくお願いします」
ダニールが即答した。
いいのかそれで? マリーナと結婚できたのに。いや、そうと決まったわけでもないか。彼女も実家のしがらみとかあったら、前の夫に、また何をされるかもしれない。それなら、彼の意思を尊重して応援することにしよう。
そして、僕も。
「男爵様、奥様、イリハ様、男爵様のご提案を喜んで受け入れます。僕をよろしくお願いします」
するとイリハとローラ夫人が同時に、男爵が少し遅れて言った。
「イリハって呼んで!」
「母とおよび下さい!」
「女神さまから父と呼ばれてみたい」
なんだこの親父。そっち系か。僕は美少女だから要注意だ!
これは、ちゃんと言っておくほうがいいな。
「それでしたら、イリハ様はイリハと、奥様はローラ夫人と、男爵様は男爵様とお呼びさせてもらいます。僕のことはエリアと呼んでください」
ローラ夫人と男爵がちょっと残念そうだが分かってほしい。とてもじゃないが、父や母とは呼べない。何故なら、僕の中身は二十五歳独身童貞男なのだから。
言わないけどね。
その後、男爵家の使用人を紹介してもらったり、屋敷の中を案内してもらったりして時間を過ごした。男爵家のみなさんは、家族で教会に行ったようだ。イリハの回復を女神様に報告しに行くと言っていた。
そして、この日は夜になり簡単な食事をいただいた後、ダニールは使用人部屋に、僕は客室に泊まらせてもらうことになった。




