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トラウマ女神のやり直し〜 隷属の女神の伝説/王国編〜 ♡♡♡TSして最強美少女になったはいいけど、心まで女になるなんて聞いてない!♡♡♡  作者: トンブタ
第1章 TS転生

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019-1-19_僕を買ってくれないか

「ちょっと、お兄さん、これ見てよ」


 彼が驚いた目をする。


「ど、どうしてしゃべることができるんだい?」


「あぁ、そっちね。魔法が切れてるんじゃないの? それより見てよ」


 そう言って、腰の高さで掌を上に向け、小さな火の玉を作って見せた。


「ほらっ! 凄いでしょ!」


 火の魔法ファイアーボールだ。コツを掴むまでは苦労したんだけど、イメトレの成果もあって魔力の扱いには少し慣れてきた。


 ところが、彼は口を開けたまま、次の言葉がなかなか出てこない。


 ん? 驚いてんの?


 彼の顔を見上げ、様子を伺う。

 すると、ようやく彼は反応を示した。


「……お、お嬢ちゃん、そ、それ、ま、魔法かい?」


「そうだよ、僕は魔法使いさ。でもね、内緒なの。奴隷商の人にもバレてないよ」


 そう言うと、彼は、眉毛を寄せながら口を半開きにして、また、動きが止まっている。


 あらら、固まっちゃったよ。これじゃ話が進まないんだけど。仕方ないなぁ……。


「……あのさ、お兄さん、やっぱり僕のことを買ってくれないかな?」


「え? い、いや、だから……」


「まぁ聞いてよ。お姉さんの売られ先にさ、僕を連れて行くでしょ、それで、お姉さんと僕の交換を交渉するなんてどう? 僕は魔法使いだし、相手さんも話に乗ってくれるかもしれないよ」


 彼は、片目をピクリと動かし、黙ったまま突っ立っている。


 なんか言ってほしいんだけど……。


「ねぇ、どうなの?」


 そうやって促すと、彼はようやく我に返った。


「す、凄いね、お嬢ちゃん。そ、そんなこと思いつくんだ。そうだね、魔法使いは珍しいよ。ぼ、僕も、同じこと考えようとしてたところさ。ハハハー」


 何だそれ? ちょっと、調子いいな……。


「……で、でも、いいのかい君はそれで? 貴族と言っても、何をされるのかわからないよ?」


 一応は僕の心配もしてくれてるんだ? それなら良しとするか。うむ。変な奴に買われて面倒になるより、貴族に買われるんなら上等。衣食住だって確保できそうだ。ウシシ、僕にもメリットはあるんだよ。貴族ってどんな生活してるのか興味あるしね。それに、いざとなったら逃げちゃえばいいだけだ。


 ニッコリと笑顔になる。


「もちろんよ、お兄さんっ!」


 あれ? なんか女の子っぽくなっちゃった。


「わ、分かった、今すぐ交渉してくるよ!」


 そうして、彼は慌てて通路の奥へと走って行った。


「ホント、素直な奴だな」


 しばらくして彼は笑顔で戻ってきた。

 隣には案内役の男も一緒だ。


「早く出してやってくれ」


「まぁ、焦るなって兄ちゃん。今開けるからよ」


 ドジ男君は、萎んだ巾着袋をポケットに仕舞い込み、小さくグッドサインを見せた。


 彼に、ありがとうポーズで満面の笑顔を向ける。

 すると彼は、一瞬赤くなって目を逸らした。


 アハハ。照れちゃったりして、可愛いな。


 案内係の男は檻の鍵を開け、僕を外に連れ出した。

 そして彼に一言。


「それにしても、いい趣味してんな兄ちゃん」


 そう言って、にやけた顔をする。


 ムカッ! どういう意味だそれっ!? ちょっと言葉に気を付けた方がいいんじゃないか。これでも食らってろ! 


「おじさん、お腹は冷やさない方がいいよ。イヒヒ」


 そう言って小さく指を弾く。


「えっ? うっ!」


 一瞬、驚いた奴隷商の男は、急に、お腹を押さえて奥へと走って行った。


「ご愁傷様っ!」


 奴隷市場から出ると、相変わらず乾燥した風が砂埃を巻き上げていた。


 娑婆の空気は旨い! なんてね。でもようやく出られたよ。


「馬を連れてくるから、ここで待っててくれ」


 彼はそう言って、建物の脇を奥へと向かった。


「馬で移動するんだね……」


 彼の背中を見送り、キョロキョロとあたりを見ていると、大きな幌馬車が一台、奴隷市場の前に停車した。すると、奴隷商の男が一人その馬車に近づいて行き、後ろを振り向いて別の奴隷商の男に声を掛けた。


「おい、奴隷狩りの奴らが来たぜ。お前も手伝え!」


「おう!」


 奴隷狩り? 人攫いかな? 奴隷商の奴らとは違うのか? 


 幌馬車には誰かが乗っていそうだけど良く見えない。


 少し気になるね……。


「お待たせ〜」


 幌馬車の様子を見ていると、彼が馬を引いて戻ってきた。そして、彼は、さっさと馬に跨り手を差し出した。


「ほら、掴まって」


「うん……」


 彼の手を握ると、力強く引き上げられて彼の前に載せられた。


「おぉ! 結構高い!」 


 彼が連れてきたのは栗毛の馬だ。大人しそうな馬で二人が乗っても身動き一つしない。


「僕、馬に乗るの初めてだよ!」


「そうかい? それじゃぁ、楽しい旅になりそうだ」


 彼は馬の手綱を短く持って、馬の首をポンポンと叩いた。


「よーし、出発だ!」


 彼の掛け声とともに、馬はゆっくりと歩き出した。行先は、ボズウィック男爵という貴族のお屋敷だ。馬ならここから二日くらいの距離らしい。これで、奴隷市場ともお別れだ。全くノープランだったけど、ようやくガイアの世界に足を下ろしたって感じだ。


 埃っぽい路地を抜けると、硬い砂地の大通りに出ることができた。

 道の両サイドには、帆布の屋根をしつらえた簡易な店が並んでいる。

 見たこともない野菜や果物、後は豆類を並べた店が多い。


 あれは干し肉かな? 串焼きの店もあるね。美味そう……。 


 丈の長い布を纏った買い物客がちらほらと店を覗いている。とは言え、それほど活気があるような町ではなさそうだ。その時、再び、数台の大きな幌馬車とすれ違う。


 さっきと同じ荷馬車だな。あれも奴隷狩りかな……? それにしても、人が普通に売られるなんて、これがガイアの世界なんだね……。


 彼は、馬を操りながら後ろから大きな声で話しかけてきた。


「僕の名前は、ダニールっ。ダニール・ポポフ。二十二歳だっ。君の名前は何て言うんだいっ?」


「ああ、僕の名前はエリアだよ」


「エリアっていうのか。よろしく、エリアっ」


「うん、よろしく!」


 ダニールって明るい性格だね。気が合いそうだよ。


 出発してそれほど時間がかからずに町の境界を出た。

 空は、抜けるように青く高い。

 乾いた風が吹き、銀色の髪がサラサラと流れて揺れる。 


 う〜ん、風が気持ちいいっ! 


 しばらく走って町から少し離れると、辺りは乾燥した草原地帯が広がり始めた。

 生えている草は背が低く、遥か遠くに地平線が見えている。


 あ〜、ワクワクするね。ようやく冒険の始まりだ!

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