164-8-31_水の精霊の声
しかし、次の瞬間、その私は、一瞬で水になってしまった。身動きが出来ず言葉も出ない。
でも、今、私に呼びかけた! それに、あの言葉……もしかして、水の精霊……?
池の端まではもう少しだ。水は膝下のところまでの深さで、もう、四、五歩足を進めると、池から出ることが出来る。
でも、今の声が気になって……。
すると、池の中央に、また、水柱が上がり、人の形に変わった。
「まただっ!」
ところが、今度は色が着かず、青い水のままの状態だ。しかし、水で出来てはいるけれど、その造形は、まるで、芸術家が作成したブロンズ像のように、細部が省略された少女像の様だった。その少女像は、髪の毛の形状まで表現されていて、長さはお尻まであり、裸の小さな女の子の姿をして、水の上に立っている。
何? 水の精霊……なの?
「我は、女神ガイアの眷属であり、水の精霊である」
また、声がしたっ!
男とも女ともつかない声だ。しかし、少女像が、口を動かして話している訳ではなく、その方向から声が聞こえてきている。そして、また、パシャンッと音を立てて水に還ってしまった。
やっぱり、水の精霊だ。
「あなたが、水の精霊ウィンディーネなのっ?」
今、少女が立っていた方向に向かって叫ぶように聞いた。すると、今度は、池の端の十時方向に、水の少女像が現れた。
「我は、水の精霊。ウィンディーネは、我の一部……」
そこまで声が聞こえると、また、少女像が音を立てて水に還る。そして、また、現れた! 次は三時方向だ。
「女神ガイアの子よ……」
(パシャンッ!)
そして、また、水になった。水の精霊は、言葉を発するたびに、少女像として水の上に形を現す。次は、池の中央からやや左だ。
「我を受け入れるがよい……」
(パシャンッ!)
そして、また。次は、三時方向!
「我を……」
(パシャンッ!)
次、十二時!
「そなたの体内に受け入れよ」
(パシャンッ!)
そして、次は、池の中央に現れた。ところが、今度は、少し大きい。それに、少女像じゃないっ!
色が……着いた……。
「また、私だっ!」
その私は、両手をだらりと下げたまま、水の中に立ち、無表情でこちらを見ている。さっきまでの少女像のようでは無く、本物の肉体だ。
初めに現れた私と同じだわ……。
その私は、私と同じ華奢な肩をしており、両脇の下から、ほんの少し外へと丸みを帯びた曲線は、お椀のようにまだ膨らみの小さな乳房の輪郭を形成し、締まりのある脇腹からは、シャンパングラスの曲線をなぞるようにウエストを形作ると、おへその上部でクイッとくびれを描いている。さらに、そこから反発するように、再び、少女らしい量感の骨盤へと緩やかな盛り上がりを見せ、そのまま、しなやかな太ももの張りを表現して、引き締まりながら下降していく。
おへその下はなだらかな丘になっていて、その先の、ぷくぷくとした膨らみが、恥じらう事なく露わにされている。その、繊細で柔らかそうな膨らみは、合わさった中心線が周囲よりほんの僅かに赤く色づき、初々しくも艶々しい。
美しく……愛おしい……私の身体だ……。
その私は、左手を徐々に上げ、左乳房に手を当てた。そして、ゆっくりと回すように動かしながら、今度は、右手を、下腹部へと移動する。さらに、右手の中指を、おへその下の窪みの奥へと差し込んで、ゆっくりと、小さく上下に動かした。
な、何を……してるの? ど、どうして、セルフプレジャーを、私の前で……?
これは、アリサとの秘め事なのに、水の精霊が、なぜ、それを知っている?
その私は、少し眉を寄せると、唇を噛んだ。
ヤバい! こっちまで、ジンジンと熱くなりそう。
そのまま、池にしゃがみ込んだ。
しかし、その瞬間、その私は、また、一瞬で水に還って消えた……。
自分のあんな格好を見るなんて、恥ずかしい。でも、今の光景は、決して、不快なものでは無かった。
私の身体……。
美しく、神聖な授かりものだ。大切にケアをしなければいけないもの。傷つけないように丁寧に、身体の求めには素直になりたい。そして、今、見せられた行為は、私が、私を癒すため、自分に対して誠実になって、自らに赦しを与える行い。それは正に、セルフヒーリングなのだ。
それにしても、水の精霊は何でこれを私に見せたんだろう? 何か意図があるはず……。
さっき、水の精霊の言った言葉が耳に残る。
”我を、そなたの体内に受け入れよ”
もしかして、精霊が言った "たいない" って……胎内。
子宮のこと? だったりして……。で、でも、いきなり……婚姻儀礼ってそういうことなの? ちょっと、それは……。
全く、心の準備ができていない。
どんなふうにするの? 痛くないのかな? 身体は、どうなるんだろう? 妊娠なんてしないよね?
女の子の身体になってから、いつかこの日が来るとは思っていたんだけれど、いざ、その時になると、慎重になってしまう。
「どうしよう……?」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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