表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/144

140-8-7_婚姻儀礼(挿絵あり)

 しかし、アクアディアは、大事なことを忘れていたとばかりに言った。


「あ、そうそう。エリアさんの場合は一つ注意が必要でしたのよね」


 折角、やる気になっていたのに……。


「注意って何の事?」


 彼女が両手を身体の前に軽く広げると、そこに、水かがみが現れた。ソファから立ち上がってそれを覗くと、そこには、種を割って出たばかりの黄緑色をした双葉の植物が映し出されていた。


「僕のクリトリアだ」


「エリアさん、もし、これを飲んで、気持ちが昂ってしまったら、私が、静めて差し上げることもできますよ?」


 女性は、にこやかに微笑んでそう言った。


「やっぱり、気持ちが昂るのはこの植物のせいなんだ?」


「はい。エリアさんの場合は、心が男性ですから、必要と言えば必要なもなのですが、何んというか、この花があると、身体の感覚が鋭敏になりやすいようですね。神経が集まっている様な所は特に、フフフッ」


 うううう。 


 で、でも、やっぱりそうか、先程からの不安の原因。身体が成長すると、どうにも抑えがたいあの下半身が熱くなる感覚がやってくる。あの昂りは、クリトリアを飲まされたからだったのだ。


 ムゥ、あの謎の女性は、僕に何てものを飲ませたんだよ、まったく。


 しかし、原因が分かったからと言って、あの感覚が無くなる訳ではない。何とか気持ちを逸らせながら慣れていくしか無さそうだ。


「もし、気持ちが昂っても、自分で何とかします」


 何言ってんだろう、僕。つい、釣られて恥ずかしい事言っちゃった。


「あら、残念」


 女性は、首を少し傾げてそう言った。そして、彼女は雰囲気を変え、柏手を軽く一つ打つと、「では、よろしいですか?」と言って、立ち上がった。


「エリアさん、これから行うのは、水の精霊のイニシエーションです。もちろん、女神様のご加護をお持ちの方しか受ける事ができません。どうぞ、あちらをご覧ください」


 そう言って、女性は庭園の奥を手で指し示した。彼女の示した方向を見ると、広場の様な場所の真ん中に、白い扉がひっそりと立っているのが見える。


「あれは......」


「イニシエーションの地、水たまりの岩屋の入り口です......」


「水たまりの岩屋?」


「ええ、そうです。このイニシエーションは、水たまりの岩屋の最奥まで、一人きり、赴かねばなりません。そして、あなたが無事に水たまりの磐座に辿り着いた時、イニシエーションが完了するのです......」


 アクアディアはそう言うと、少し目を細め、しばらくの間、その扉を見つめていた。そして、彼女は話を付け加えた。


「……途中、幾つか試練となる事が起こるでしょう。しかし、あなたが転生した意味を理解していれば、正しい選択が出来るはずです」


 試練があるのか……。


「僕が転生した意味?」


「そうです。エリアさん。あなたは、困難な女性たちを救済して、この世界の価値観に影響を与えるために、ここにいるのでしょう? このイニシエーションは、あなたが転生した意味を、水の心の視点から俯瞰しなければ、失敗に終わるかもしれません。過去の転生者の方には、途中で、それ以上進めなった方もいたのです。もちろん、もし、無理だと思ったら、引き返しても良いのですよ」


 水の心の視点なんて、とても抽象的な言い方だ。そもそも、水の心って何だ?


 アクアディアさんに聞いても、答えを教えてはくれないだろう。


 女の子たちの救済と、水の心の視点か……。


 全く意味が分からない。


 それにしても、過去に、僕と同じ様な転生者がいたんだ? レムリアさんが言っていた隷属の女神のことかな? この世界の女神降臨の逸話だよね。


「あの〜、魔法は使っても......?」


「スキル以外は一切、使えません。これは、女神ガイア様の思し召しです」


 彼女は、そう言って、再びソファに腰を下ろした。


 マジか! 僕のスキルって、和菓子職人だけだ。もの凄くハードル上がったんじゃない?


 しかし、僕の不安を他所に、アクアディアは、にこやかな笑顔でいった。


「エリアさんなら心配ないでしょう? お身体も特別に丈夫でしょうからね」


「あー、竜族の身体ですよね」


「そうです。あの子から聞いていると思いますが、竜族の肉体は、とても強靭ですから、そう言う意味でも魔法の助けはいらないでしょう」


 あの子? もしかして……。


「レムリアさんと知り合いなの?」


 彼女は、苦笑いをする。


「ええ、まぁ、そうなの。たまに、お茶するくらいですけど......」


 お茶友かっ! 飲み友だったりお茶ともだったり、レムリアさんって友達多いんだね。


 やはり、この人たちは知り合いだ。だからと言って、何がどうと言う事ではないけれど。まぁいい。


 そして、アクアディアは立ち上がり、突然、厳かな雰囲気になった。


「これより、水の精霊のイニシエーション、聖水婚の儀を執り行います。女神ガイアの子、エリア・ヴェネティカ・ガイア。そなたの意思は、これを受け入れるや否や?」


 色々と困難な状況があるかもしれないけれど、ここまで来れば、行動するしかないっ!


「はい、受け入れます!」


ーーーー

挿絵(By みてみん)

あれは......。

イニシエーションの地、水たまりの岩屋の入り口です......。

水たまりの岩屋?

AI生成画像

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ