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135-8-2_ メモリア・イルス・ディア

 魔力を流す方法は、足元の石から地中を通して、四隅の石に流していくようにイメージする。そして、魔力を流し始めた。すると、すぐに変化は起きた。青い石は、魔力に反応して震え出し、そして、周囲からは、唸るような音が鳴り始めた。その音は、一定の単調な低音で、それらの音が頭の中でブーンという音として反響する。


 意識が遠くなりそうだ。それに……なんだか……リラックス……してくるよ……。


 一瞬、意識が飛んでいたかもしれない。そして、ぼんやりと意識が戻ってきたものの、そこは、今いた広場ではなく……。


 あれ? 水の……中……? これって……夢か……。水が……流れてるね……。


 自分が水の流れの中にいる。


 何だ……ろう……流れに逆らえないよ……。


 此処がどこか、何処から来て何処へ流れている水なのか分からない。それに、自分で動くことも、流れを止めることもできない。ただ、あるがままに、流れている。


 僕は……水だ……。


 しばらく、流れに任せていると、急に温かさを感じ出した。それとともに、周囲が淡く朱色に染まってきて、流れに勢いが付いてくる。


 あれれ……目の前が……真っ赤になっちゃったな……。


 そして、突然、広い場所に飛び出ると、そこから、一気に勢いが増し、また、流れに乗って進む。


 ん? 何だか、鉄っぽい匂いがするよ……。


 すると、段々、意識がはっきりとしてきて……。


 これって……もしかして……血液……?


 間違いない。さっきまで水だったのが、今は血液になっている。そして、勢いよく血管の中を巡っている。匂いや温かさも感じる。


 う〜ん、どこかで見たような……あっ、そうだ、あの時だよ!


 今見ているイメージは、満月の夜にイグニス山で、突然身体が成長した時に見た映像に似ている。


 えっ? もしかして、また身体が成長しちゃうの?


 そう思ったけれど、今のところ、その気配はしない。そして、そのまま流れに乗っていると、だんだん細い管の中に入り込んできた。流れの勢いが増す。すると、今度は、周囲が明るくなり、さらに、その明るさが増していく。


 次の瞬間!


 眩しいっ!? 光?


 そのまま、激しい力で、掌から一気に外へと押し出されたっ!


 何?


 それは、光となった自分が外に向かって放出された瞬間だった。しかし、その時、とてつもなく莫大な魔力が周囲にあふれていることも分かり、自分がそれらの魔力の核となって、急速に空へと上昇していった。


 なんだろう、これ? もしかして……魔法?


 突然、言葉が浮かぶ。


「メモリア・イルス・ディア……」


 インスピレーション? でも、何だそれ?


「救済の魔法……」


 救済の魔法? どういうこと? 


「エリアの記憶。八柱の精霊、八人の巫女……」


 インスピレーションが、立て続けに浮かんだ。


 八柱の精霊と八人の巫女? 巫女って言うのはピュリスさんみたいな人? だよね?


「……」


 ところが、そこで、インスピレーションが、働かなくなってしまった。まるで、自分の言葉のようだけど、明らかに自分が考えたものではない。インスピレーションはそんなふうに、突然やってくる。しかし、途絶えるのも突然だ。これも、加護の権能なんだろうか?


 インスピレーションが途絶えると、今度は、真っ暗な空間に自分がいることに気が付いた。


 イメージも消えちゃったけど……。


 今のインスピレーションを思い返す。


 メモリア・イルス・ディア……。思い出せってことだよね?


 エリアの記憶、八柱の精霊と八人の巫女。それに救済の魔法。


 どんな魔法だろう? 何のために使うんだ? 人類って、一体、誰を救済するために? まさか、全人類なんてこと無いよね。


 それは少し壮大すぎる。でも、何も分からない。今のが、僕の目指すものなのか……? 


 初めて受け取った使命のようなメッセージ。ちょっと、困惑する。転生を決めた時からそう考えていたけれど、この転生は、僕が心のままに行動することでこの世界に何らかの影響を与えることが目的、くらいに思っていた。しかし、今のインスピレーションは、僕には、成すべき具体的な事があるというメッセージだ。


 確かに、レムリアさんは、地球とガイアの未来が僕の肩にかかっているというようなことも言っていたけど……。


 考え込んでいると、また、突然、頭に声が聞こえた。


 今度は、念話だ!


「もしもーし、エリア、聞こえる?」


 これは、レムリアさんだ。


 おぉ! やっとだよ。やっとレムリアさんに連絡取れた! それにしても、電話じゃないんだからね、まったく。


「レムリアさん? 良く聞こえるよ」


「あなた、もっと早く連絡してよ、もうっ!」


 いきなりダメ出しっ! 


 レムリアさん、何だか機嫌が悪いみたいだね。


「ごめんなさい。でも、今日、やっとここに来れたんだよ」


「まぁ、いいわ。それで、どう? 調子は?」


 いいのかっ! それに、調子って……。細かく尋ねることが面倒なんだよ、きっと。ホント、大雑把な人だ! 何をどう答えればいいのか分かんないね、まったく!


「とりあえず、落ち着く先はできたよ。ボズウィック男爵の家だけど」


「あらそう、良かったわ。そんな小さな女の子じゃ生活できないものね」


 うっそ!? やっぱ、分かってたんじゃないの。性格悪いよ、ちょっと!


「あんまり長く話せないから、一言だけ言っておくわ。身体を大切にしなさい!」


 何それ? 母親か!? もっと大事な事があるでしょ!


「レムリアさん、いろいろ聞きたいことがあるんだけど、あのね、身体が大きくなると、気持ちまで……」


「ごめんなさい、エリア。もう、切れちゃいそうでダメみたい。あっ、そうそう、この塔を使った念話ってね、次は、別の塔からしかできないから。じゃぁ、またね」


「えっ? え~~~! ちょ、ちょっと、レムリアさんっ!」


「……」


 ダメだ。切れちゃった。


 その途端、急速に意識が身体に戻ってしまった。


「何なんだよっ! レムリアさんってば、まったく! 全然、聞きたいこと聞けなかったよ。一人でしゃべっちゃってさ……」


 ここに来るまでに、結構苦労したんだからね、僕なりに! 聞きたいことだってたくさんあったのに!


 加護の権能のことやガーディアンのこと。それに、精霊化する人間や女神の巫女の事。寿命の事も。何一つ聞くことができなかった。


「一番聞きたかったのは、気持ちまで女の子になっちゃった事だよ! あれ、クリトリアの種のせいでしょ? そんな事聞いてなかったと思うんだけどなぁ〜、手違いだよね、絶対! まぁ、嫌だった訳じゃないし、って言うか、むしろ、よ、良かったと言うか……。兎に角! 次は、別の塔からしか連絡出来ないって、どう言う事!? それじゃ、ここに来た意味無いっての! ムゥ~!」


 愚痴っていると、カリスが側に寄ってきて声を掛けてくれた。


「いかがでしたか?」


「あぁ、カリス。レムリアさん酷いんだよ、ホント……」


 いや、もう、レムリアさんの話はいいか。


「ええと……あのね、とても不思議な体験だったよ。やっぱり、この塔は通信設備のようだね。僕を転生させたレムリアさんという人と念話をすることができたんだ。時間が無くて、何も聞けなかったけどね。それから、別の存在とも話ができたんだ……」


 その存在から聞かされた、メモリア・イルス・ディアという魔法。どうやらその魔法を思い出すことが、この転生の重要な目的の一つのようだ。


 そして、あのインスピレーションが告げたこと。


 八柱の精霊に、八人の巫女か……。それと、エリアの記憶……救済魔法のこと?


「エリア様? 大丈夫ですか?」


 カリスが、また、声を掛けた。


「あ、ゴメン。考え事をしてしまっていたよ」


 それにしても、あのインスピレーションの声の主は、僕の事が全て分かっているような視点を持っていそうだ。


 もしかして、ガーディアン?


「そうだ、カリス、メモリア・イルス・ディアっていう魔法知らないよね? 僕は、その魔法を思い出す必要があるみたいなんだ。どうやら、僕の中にあるエリアの記憶らしいよ」


 カリスの後から、ヴィースもやってきた。二人とも顔を見合わせて、首を横に振った。しかし、そこで、ヴィースが気になることを言った。


「エリア様。ウィンディーネ様は、過去に女神様がご降臨なされた時、その女神様が真の力を得るために、水の精霊様のご加護を与えたと仰っていました」


「水の精霊の加護を与えた?」


「はい……」


 ヴィースは、真の力というのがその魔法の事ではないかと言った。


 なるほど。真の力を得るための、水の精霊の加護か。何にしても情報を集めないといけない。やはり、ウィンディーネを探す必要がありそうだ。


 その時っ!


「はっ? 誰かいるっ!」

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