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132-7-13_アリサの願い

 サリィはそう言って、両手を軽く広げ、掌を向かい合わせると、腕に魔力を込め始めた。すると、サリィの手のひらから細い糸が現われ、空中で布が織り上げられていく。その光景は、編み物の機械が自動で、どんどんと衣類を編み上げていく様子にそっくりだ。


 凄い! ん? おぉっ!


 サリィが作ったのは、王女が履いていたのと同じようなデザインのパンティだ。


 早速、デザインを覚えたんだね。


 でも、色はパステルブルーにしてある。


 流石はサリィだ、もうアレンジしているね。


 彼女の織り上げるパンティは、生地が薄く少し透けている。


「で、出来ました!」


 サリィは、出来上がったパンティを持ち上げてみんなに見せると、自分の腰に当て付けた時の感じを確かめている。


 セクシーっ! とってもいい!


 しかし、男爵はというと……。


「……」


 腕を組んで、目を閉じていた。


 見てないフリだ。一方、パンティをガン見して、とても興奮している者が一人いる。ピュリスだ。


「凄いね、サリィっ! 何て綺麗な下着だろう。それ、欲しいっ! 私が貰えないか?」


 ピュリスは、手を上げてサリィにアピールした。


「ピュリスさんって、精霊なんだから、服なんて好きなように出来るんじゃないの?」


 彼女にそう言うと、眉毛を寄せながら、自分に呆れているみたいに言った。


「いや、まぁ、そうなんだけど、私には、ファッションセンスがないからね。赤い戦闘服を考えるのが精一杯だよ。こんな女の子っぽいの思いもつかない。私も、一応、女だからね。可愛い恰好もしてみたのさ。ハハハッ」


 あ、あれね。竜戦士のコスプレみたいなやつのことだ。


「ど、どうぞ」


 サリィがパンティをピュリスに渡すと、ピュリスは。「早速、履いてくるよ」と言って、談話室を飛び出していった。やはり、女の子は、こう言うファッションの話が盛り上がる。しかし、男爵は、所在なさげで居心地が悪そうだ。

 

「ん、んんっ」


 男爵が咳払いをして、みんなの注意を集めると改めて話し始めた。


「サリィ、何にしても、社会の役に立ちそうな能力だな。新しい力を得たのだから、それこそ、生まれ変わったと思って、その能力を存分に活かしていくと良い……」


 男爵は、サリィに対し、自分の心に従って、その力を積極的に使うようにと言った。


「あ、ありがとう、ご、ございます」


 サリィは、男爵に九十度のお辞儀をした。そして、男爵は、次にアリサに対しても尋ねた。


「アリサ、お前も、エリアとの絆が深いようだ。もし、サリィのような機会があるのだとすれば、どうしたいのだ?」


 男爵は口に出して言わないけれど、アリサが持つ女神の絆加護について何となくその雰囲気を感じているかもしれない。アリサは、上半身を九十度曲げてお辞儀をし、男爵に返答した。


「私は、もし、そのような機会があるとすれば、エリア様をお支えしとうございます。そして、もし、私の様な者の希望が許されるならば、このまま……」


 アリサは、引き続き、僕の世話をメインにボズウィック家のメイドとしてやっていきたいと言った。彼女は、メイドの仕事に人一倍誇りを持っているようだ。もちろん、サリィが、メイドの仕事を疎かにしているわけではない。彼女も、ボズウィック家のメイド職から離れる事は考えていないだろう。ただ、男爵の言い回しからすれば、サリィは、蜘蛛精霊としての得意な分野からボズウィック家に貢献する道もありそうだ。しかし、アリサは、あくまで、メイド業務を中心に据えていると言っている。


「つまり、サリィのように、精霊になったとしても、メイドを辞める気はないということだな?」


 男爵は念を押して、アリサに聞いた。


「はい」


 アリサは、お辞儀の姿勢を崩さずに答えた。


「そうか。よろしい。しかしだ、アリサよ、エリアを前にして何だが、ワシとしては、エリアと話していて、たまに、男の子と話をしている様な気になる時があるのだ。その事は、悪いとは言わんが、いずれは、エリアをボズウィック家の長女として、周辺の貴族や領民に披露目をする機会を設けるつもりだ。そこでだが、アリサには、これまで以上にエリアに付き従い、色々と、つまり、女の子としてのだな、所作振る舞いを教えてやって欲しい。ワシは、その役目は、アリサが一番相応しいと思うておる。アリサが精霊になったとしてもだ。なぁ、エリア?」


「何だよ、男爵様、僕の事そんなふうに思ってたの?」


「ハッハッハッ!」


 男爵は高笑いだ。


 でも、ちょっと驚いた~。僕の中身が男だってバレてるのかと思っちゃったよ。きっと、こう言う話し方がダメなんだろうね。まぁ、自分でも自覚のある事だし、少しくらいは女の子らしくなれる様に頑張らないといけないね。あんまり、自信ないけど……。


「頼んだぞ、アリサ」


 男爵は、何故かご満悦だ。


「ありがたきお言葉、大変感謝いたします。エリア様の美しさは、私が、よく存じ上げておりますので、旦那様のご期待にお応えできるよう、精一杯努めます」


 アリサは、そう言うと、姿勢を正した。彼女が上体を上げた時、目が合った。アリサは、少し潤んだような目で、優しい眼差しをこちらに向けていた。


 ドキッ!


 また、湯あみの時の事を思い出してしまいそうだ。


 アリサ、今度は何を考えてるの……?


 男爵は、アリサの返事を確認すると、アリサに、ピュリスの着替えを手伝うように指示を出した。


「はい。かしこまりました」


 アリサは、そう言うと、談話室を後にした。

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