131-7-12_ニンフのファッション・ショー
王女はそう言うと、彼女が着ているドレープの両端を摘み、その裾を、ジワリと上げていった。
お、王女……。
みんなの視線は、王女の足元に集まっている。彼女の、細く透き通るような足首が、とても美しい。その光景に、誰もが言葉を失った。
ちょ、ちょっと待てよ。王女って、下着付けてんの?
ローラ夫人は驚きのあまり、手を口に当てたまま、息を飲んだ。男爵はというと、既にテーブルに突っ伏している。
王女のドレープが徐々に上がり、ふくらはぎが露わになった。ピュリスが、ゴクリと息を飲み込む。
ほっそりとして、とても清楚なスネとふくらはぎだ。
さらに王女は、ドレープの裾を捲り、彼女の太ももの大部分が現れた。
しなやかで瑞々しく、スベスベとした白い太もも。
「お、王女様……」
ローラ夫人がようやく言葉を口にした。イリハとラヒナは、身体ごと振り返り、セイシェル王女をガン見している。
パ、パンツ履いてるんだよね……?
事故が起こらないように祈りたい。
王女がニッコリと笑う。
キ、キュートだね。
そして、さらにドレープが引き上げられる。
お、王女の、内ももが……。
彼女の内ももは、その輪郭が柔らかなカーブを描いて膨らみ、足の付け根に向かって角度を変えるとキュッと丸みを帯びている。すると、両太ももの間には三角形の隙間が現われ、後ろから光が差した。その三角形の上辺は、ピンク色の薄い生地が皮膚にピッタリと張り付いて、プクッとした膨らみと中央の窪みが強調され、くっきり盛り上がっていた。
エ、エロ可愛……。ダ、ダメ、妄想が膨らんじゃう……。
ゴクリと息を呑む。子どもたちは、目を丸くして、一点を見つめている。
教育上の配慮、一切無し!
ま、まぁでも、一応はホッとした。
セ、セイシェル王女、パ、パンティ履いてて良かったよ。
王女は、そこで、一旦、動きを止めた。
「フフフッ」
王女が柔らかく微笑んだ。誰も、言葉を口に出来ない。そして、彼女は、さらに口角を上げて目を細め、首をかしげる様にしてポーズを取った。そして……。
「さぁ、ご覧くださいっ!」
セイシェル王女はそう言って、ドレープを完全に引き上げた! そして、とうとう、下半身のおへそから下が、全て露になった!!!
「……お、お美しい……」
ローラ夫人が、感嘆の声を上げた。ピュリスもローラ夫人に続いて、呟く。
「王女。その素敵な下着は……」
王女は、足をクロスさせ、最高の笑顔で微笑んだ。
「エリア様のアイデアですわ」
そう言って、王女は、くるりと身体を一回転させた。彼女が身に付けている薄い下着は、王女のヒップラインを、一層、強調させる。王女のお尻は、太ももの付け根から臀部の盛り上がりにかけて、締まりがあってキュッとアップしてハリがいい。
な、何て綺麗なお尻……。
そして、王女は、そこにいる面々に、彼女の魅力的な下半身を存分に披露した後、指をサッと離すと、ドレープの裾は、海中を漂うクラゲの傘のように、ふんわりと広がって下に降りた。
ふぅ〜。
刺激が強すぎて冷や冷やしちゃうよ。それにしても僕のアイデアって、さっき、サリィに書いたばかりのデザインの事か……。
王女が身に着けていた下着は、サリィに、簡単に書いてあげたハイレグのパンティだ。そして、今、王女が着けていたものは、淡いピンク色のものだった。
「セイシェル王女、その下着、パンティって言うだよ。サイドが切れあがってて、とってもセクシーでしょ」
「あら? 名称もすてきですわね」
セイシェル王女は、僕の脇に立つと、肩に手を置いて、耳元で囁くように言った。
「エリア様、もう一つのアイデアの方は、いかがなさいますか?」
「もう一つのアイデア? それって……」
ティ、Tバック!
「ダ、ダメダメ、あれは、まだ早い!」
あれを王女が履いて、今のようにドレープを捲り上げると、卒倒する者が出てきそうだ。すると、後ろから、サリィがやってきて、王女に言った。
「セ、セイシェル王女様、で、できましたら、後ほど、細部を、お、お見せいただけませんか?」
「もちろんですわ、サリィさん。一緒に、女性の魅力を広げて参りましょう!」
そう言うと、王女は、光の粒になってキラキラと消えて行った。サリィは、セイシェル王女に九十度のお辞儀をして彼女を見送った。それを見ていたラヒナは、目を丸くしながら感心する様に言った。
「ニンフさんて、凄いんだね」
「エッチなだけよ」
エイルの反応は、素っ気ない。
セイシェル王女の刺激的なパフォーマンスの余韻が残る中、誰も、何も話し出そうとはしない。しかし、男爵は、空気が緩み過ぎだと言わんばかりに、難しい話を切りだした。
「皆、知っている通り、朝食が済んだら、ピュリス様とワシは王都へと向かう。分かっておると思うが、この先、ボズウィック家は、アトラス派との敵対関係が鮮明となる。何があるかもしれん。注意は怠らぬように。それと、この後、エリアとアリサ、それに、サリィは談話室に来てくれ。話しておきたいことがある。エリア、ヴィースとアム君にも声を掛けてくれんか?」
男爵の話しておきたいことというのは、恐らく、男爵が留守になる間の屋敷の護衛のことだろう。
「うん。分かった」
男爵も無粋だね。つまんない話なんかしちゃって。
今度、女子会を提案しよう。もちろん、ヴィースには声を掛けない。
少し、お行儀の悪い朝食は、男爵の一言で終了した。男爵の心配も分かるので、直ぐに、談話室に向かう事にした。サリィにお願いしてアムを呼びに行ってもらったので、二人が戻ってくるのを待って、談話室に入る。
談話室では、既に、男爵とピュリス、そして、モートンが先に来ており、僕たちを待っていた。僕が席に着くと、男爵が話を始めた。
「ピュリス様、お時間を取っていただきまして、恐縮でございます。そして、皆も、時間を取らせてすまんな。この後、ピュリス様とワシは王都へ向かう。先程も言ったが、王都でのワシの動きにより、いよいよ、アトラス派と正面から対峙することとなるだろう……」
そして、男爵は、今回、直接、向き合うこととなるのは、アトラス派の主要人物であるため、十分、注意が必要だと念を押すと、話し方の雰囲気を変えた。
「と、まぁ、懸念はあるのだが、しかしだ。エリア。今回、ワシが、こうした決断を行った理由は、エリアがこの屋敷に来てくれて、ワシらに希望をもたらしてくれたからに他ならん。そして、その希望は一層膨らみ、王国の懸念さえ、打ち払えるのでは無いかと思えるようになった。ピュリス様が火の竜のお力を得られたことも、セイシェル王女様が、あのように魅力的な妖精となられたことも、エリアの力だ……」
男爵様、しっかり見てたんだね。セイシェル王女のピンクのパンティ。
男爵の話は続く。
「そして、サリィの事だが、モートンの報告では、蜘蛛の妖精様と一体となり、ピュリス様と同様に、精霊の力を得たと聞いた。ワシは、エリアが持つ女神様のご加護について詳細は聞くまいと決めておる。しかし、一つだけ教えてくれんか。エリアは、どのような時に、人に力を与えようと考えるのだ? 昨日も伝えたが、ワシも、エリアの力になりたいのだ」
男爵は、父親が子どもを見守るような表情をしている。
「男爵様。僕はただ、これまで出会った人たちが、理不尽に辛い経験をしていたことを知って、力になりたいと思っただけなんだ。僕の力は、そうした人たちを救済するためにあるって思ってるからね。特に、女の子たちには、元気になって欲しいと思ってる。男爵様と同じだよ」
男爵が、ハッとした顔をした。
「そ、そうか?」
「みんな、男爵様には感謝してるよ。女の子たちはみんなそう言ってるしね」
「そ、それなら、良いのだ」
男爵は照れながらが、嬉しそうにニマニマとしている。
何だ、誰も、今まで、男爵にそういう事言ってなかったのか?
しかし、使用人が、主人にそういう話をすることは難しいかもしれない。使用人は、主人から聞かれたことに応えるのみだ。主人から聞かれてもいないのに、使用人が自らの気持ちを話すなど、恐れ多いことだろう。それに、男爵自身が、奴隷を持たない理由をセリア教の教えだからと言っていたのだから、彼女たちを奴隷から解放した理由が、単に、宗教上の理由だけだと自ら嘯いていていたようなものだ。男爵は、必要な人材を奴隷商から引き取る時に、不可抗力で奴隷落ちした者を選択していると言っていた。メイドの女の子たちはみんな、本当に、とても感謝している。男爵が、奴隷から彼女たちを解放し、自らの力で生活をさせようとする気持ちは、使用人たちにしっかりと伝わっているのだ。
でも、お互い、たまには口に出して、直接、気持ちを伝える方がいいかもね。
男爵が、サリィを見た後、僕に言った。
「すると、サリィだが、サリィは自ら望んで精霊になったのだな?」
「そうだよ」
「そうかそうか。サリィ、今、どんな気分なのだ?」
男爵が、満足そうな顔でサリィを見た。彼女は、突然、男爵に話を振られて焦っている。
「あ、あの、だ、旦那様、わ、私……」
おどおどするサリィに、アリサが、彼女の肩を抱いてあげた。
「サリィ、旦那様に、あなたがどう変わったのか言ってみなさい」
「は、はい。わ、私、か、身体に火傷の傷が、た、たくさんあって、で、でも、エ、エリア様のキスで治していただいて、お、お胸もお尻も、き、綺麗になりました」
そう言って、サリィは、メイド服の背中のボタンに腕をまわして言った。
「ぬ、脱ぎますか?」
「ゴホッ、ゴホッ、ブハァッ! ぬ、脱がんでよいわっ!」
本当は、見たいくせに……。でも、男爵は、さっきも、サリィの事をじっと見ていたんだよね。父親のような目で。
サリィはスタイルいいし、男爵様は心配なんだろうね。
「ま、まぁ、サリィの性格も、明るくなったようだな。エ、エリアに、キ、キス? い、いや、治療をされたのか。それで、どんな力を身に付けたのだ?」
男爵は、取り繕う様にそう言って、彼女の能力について聞いた。
「は、はい。い、今、お、お見せします」