130-7-11_魅惑の変身(挿絵あり)
ダイニングルームでは、もう、朝食が始まっていた。遅れて部屋に入ると、男爵とローラ夫人が頷いてくれて、アリサに案内されながら席に着いた。アリサを通じて、モートンから男爵夫妻に僕が遅れるという報告をしていてくれたようだ。
テーブルでは、いつもの面々に加えて、ピュリスも一緒に朝食を取っていた。朝食時に、一番、話題を集めたのは、もちろん、サリィの変容ぶりだ。サリィが、僕と一緒にダイニングルームに入ると、みんなの視線を独り占めにした。もちろん、アリサやモートンから、事前に、男爵夫妻には報告がされているだろうけれど、本人が、みんなの前に姿を見せるのは初めてのようだ。
サリィは、昨日まで、非常に地味な存在だった。当然、それは、彼女の抱えていた問題に起因するものであり、これまで、サリィは、目立たないように大人しくメイドの仕事を続けて来たのだ。しかし、だからと言って、彼女の存在感がなかった訳ではない。サリィは、既に他のメイドとともに一人前のメイドとして男爵家を支えてきた。しかし、サリィは、想像を超えて、変身していたので、みんな、驚きを通り越して感動していたのだ。
「サリィ。あなた……」
ローラ夫人は、いつもの位置で控えたサリィに声を掛けようとしたが、手で口を押えたまま次の言葉が出てこず、そのまま涙を流し始めた。
「ゴ、ゴメンなさいね。私、とても、嬉しいわ。サリィ、後ほど、私の部屋に来て頂戴」
「は、はい。かしこまりました」
サリィは緊張しながら返事をした。
「モ、モートンから、報告を受けたが、サリィ、大変だったようだな。気付いてやれんですまなんだ」
男爵も、ローラ夫人に絆されて目に涙を滲ませている。
「と、とんでもございません。か、感謝いたしております」
サリィは、とても恐縮しているようだ。そして、イリハも、サリィを見て言った。
「サリィの足、とても綺麗だよ。スカート短い方が絶対いいよ」
「あ、ありがとう、ご、ございます……」
とうとう、サリィは下を向いてしまった。
サリィって褒められると、弱いタイプだね。
そして、その次に話題を攫ったのは、もちろん、僕だ。
イリハが、言った。
「それとね、エリアの今日のスカート、可愛いんだけどその下はどうなってるの?」
イリハに指摘されたので、ここぞとばかりに席を立った。
ちょっと、お行儀悪くてごめんなさい。
「どう? 可愛いでしょ? イリハもこんなの履いてみたいでしょ?」
「履きたい! でも、下着、見えないね。ちゃんと着けてるの?」
ラヒナも椅子の上から振り返って見ている。
「ウフフフ。はしたないけど、先に謝っとくね。ごめんなさい、男爵様、ローラ夫人」
そう言ってから、足をクロスにし、男爵とローラ夫人の方を向いて笑顔を向ける。そして……。
「ほらっ!」
スカートの裾を摘まみ、身体をグルっと一回転させると同時にスカートをサッと捲り上げて、裾から手を離したっ!
「まぁ、何てことっ!」
ローラ夫人は、驚いて、僕を窘めようとしたようだ。けれど、ショーツのデザインに驚いて、注意が全部そちらに向かってしまった。
「えっ!? エリアさん? その下着、どうされたのですか?」
もう一度、スカートの裾をつまみ、ショーツを露にした。
「これね、ショーツって言うんだ。可愛いでしょ。それに、とっても履き心地がいいんだよ。サリィに作ってもらったんだ。今ね、アリサがサリィに言って、みんなの分を作ってもらってるからちょっと待っててね」
「ん、んんっ!」
男爵が咳ばらいをした。
「ごめんなさい」
つまんでいたスカートの裾を離す。
「いや、いいのだ、エリア。しかし、人にだな、そ、その、ズボン下を、見せるというのは、い、いかんと思うぞ、うん。そうだな、モートン?」
モートンは、軽く会釈をしただけだ。
男爵は、いいのだ、と言いながら、いかん、と言ったよね。何が言いたいのか分からないよ、まったく。ショーツを自分からみんなに見せたことがいけなかったの? だいたい、モートンに同意を求める辺りが意味不明だ。女性陣は、みんなショーツに感心しているのに、つまらない事言っちゃって。
男爵が続けた。
「ヴィ、ヴィースもそう思うであろう?」
えっ? ヴィースに聞く、普通? ヴィースがそんなことに関心あるわけないじゃない。
すると、ヴィースが答えた。
「エリア様、そ、そのような行為は、慎んでください。と、特に、屋敷の外では……」
「ヴィース?」
何だよ、ヴィースまで。僕のショーツを他の人に見られるのが、そんなに嫌なのっ?
その様子を見ていたピュリスが、笑いながら言った。
「ワハハハ。男どもは、恥ずかしいのさ。それに、エリアちゃんもサリィも、とっても可愛い恰好しているから、誰かに取られたくないんだろうね」
「んんっ!」
男爵は、また、咳払いをした。
「それにしても、エリアちゃんの下着、ショーツだったかな。誰かに見せたくなる気持ち分かるよ。それさ、王都で売れば人気出るんじゃないか? 私も履いてみたいな」
ピュリスが、いいこと言った。
「ピュリス様、私も、女性が喜びそうな下着だと考えてましたわ。今、出回っている物は、何んといいますか、女性の魅力を下げているように思えていたのです」
ローラ夫人もピュリスの意見に賛同しているようだ。
「兎に角、サリィに試作していただいたものを着用して、早く、確かめてみたいものです。サリィ、よろしくね」
ローラ夫人は、そう言って、サリィに微笑んだ。サリィは、ローラ夫人の期待に応えるように返事をした。
「は、はい。も、もう、間もなく。明日には出来ると思います」
「楽しみね」
すると、イリハが嬉しそうにして言った。
「ヤッター。私も、エリアみたいに短いスカート履いてみたい。ねぇ、ラヒナもそうでしょ?」
「う、うん、そうだね。イリハちゃんなら良く似合うと思うよ」
ラヒナは微妙な反応だ。短いスカートを履くのが恥ずかしいのだろうか。そういうラヒナの気持ちを感じ取ったように、イリハがラヒナに言った。
「ラヒナだって似合うよ。可愛いもん」
「あ、ありがとう、イリハちゃん」
ラヒナが照れていた。するとその時、僕の背後に光の粒が現れて、それらがまとまっていくと、薄手の白いドレープを纏ったセイシェル王女と、もう一人、エイルが姿を現した。
「あらあら、みなさん、楽しそうなお話をされてますわね。つい、出てきてしまいましたわ」
「私もいるわよ」
エイルは静かに羽ばたくと、ラヒナの所に飛んで行き、彼女の肩に止まった。
セイシェル王女が言った。
「私は、ニンフといたしまして、女性の魅力を伝える責務がありますわ。エリア様が率先されて、このように素敵な下着の普及に努めていらっしゃるのであれば、私も、エリア様の愛の伝導者としての努めを果たさねばなりません……」
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今日のコーデ(エリア)
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