123-7-4_メイド少女の苦悩(挿絵あり)
部屋の扉を開けると、サリィの姿を見せてくれた蜘蛛が、真っ暗な廊下を一目散に走って行った。それを見送った後、サリィの部屋に一瞬で転移する。部屋の中は、扉付近に小さな明かりが灯してあり、ベッドの脇には、アリサが椅子に座ったまま眠っていた。
サリィは?
彼女は、まだ布団の中で寝息を立てていた。少し心配したけれど、魔法が効いているようだ。ちょっと安心した。すると、僕の気配に気付いたのか、アリサが目を覚ました。
「あっ、エリア様。……すみません。少し眠っていたようです」
彼女は、直ぐに椅子から立ち上がった。
「いいよ、アリサ。椅子に座ったままで。ごめん、起こしちゃったね、大丈夫?」
「私は、大丈夫です。それより、何かありましたでしょうか?」
アリサは、膝を付いてしゃがみこみ姿勢を下げてかしこまった。
「いや、大丈夫みたいだ。ちょっとサリィの様子を見に来ただけなんだ。それにしても、アリサ、僕と二人でいるときは、そんなにかしこまらないでいいよ……」
サリィを起こさないように、ひそひそ声で話す。
「……僕は、アリサの事をパートナーって思ってるんだからね。僕は、今、子どもだけど、この身体の成長を一緒にケアしてくれるんでしょ?」
そう言って手を伸ばすと、アリサが僕の腕を取り驚いた顔をしている。
「パ、パートナー? エ、エリア様、ほ、本当ですかっ!? こんな私を、パートナーと……」
アリサの顔が、ときめき出した。少し声が興奮している!
「ちょっと、声が大きいよ」
アリサが両腕を広げる。もちろん、アリサの胸に吸い寄せられ、抱きしめられた。
幸せ。
って、いやいや。今は、アリサとハグハグしている時ではない。すると、アリサは、自分が座っていた椅子を移動させ、僕を座らせた。
「でも、このような時間にお越しになるなんて、いかがなさったのですか?」
「うん。ちょっと確かめたいことがあってね。アリサ、サリィって身体に火傷を負っているかもしれないんだけど、何か知ってる?」
そう言うと、アリサは心配そうな顔になって言った。
「エリア様、私も理由は分からないのですが、実はこの子、決して他人に肌を見せようとしないのです……」
アリサの話では、サリィはいつも丈の長いメイド服を着用し、使用人同士であっても、決して、人前で脱いだりしないそうだ。そして、湯あみは行わず、身体のケアは、一人、自室で行っているとのことだ。彼女は、夏でも長袖で過ごし、長い靴下を履いているらしい。
「ただ、一度だけあの子の右足のふくらはぎに、火傷の傷があるのを見たことがあるのです。その時、あの子は慌てて裾を隠し、小さいときに、誤って火のついた薪が当たったと笑っていました」
「そうなんだね……」
やっぱり、サリィには何か人に言えない事情があるに違いない。アリサを見ると、彼女も今のやり取りで状況を察したようだ。
「もう少し、私がサリィから話を聞いてあげるべきでした……」
アリサはそう言って、眠っているサリィに視線を向けた。
「サリィが、何か心の傷を抱えてる事は間違いないよね。とは言え、う~ん、いきなり火傷の話を切り出すのもどうかな……」
本人が隠したいと思っているのに、いかにも、知っているというように言っても、彼女を傷つけてしまうだけだ。
でも、このままでもいけないよね……。
あまりいいアイデアも浮かばず、二人で、サリィの寝ている姿を眺めていた。彼女は、布団にくるまり、背中をこちらに向けて眠っている。しかし、その時、風も吹いていないのに、ランプの火が揺れて……消えた。
「あれ? 何だ、消えちゃった。真っ暗だよ。明かり、魔法、魔法」
少し慌てて、魔法ライトを掌に灯した。突然だったので、明るさの加減を誤って、部屋が眩しいほどに明るくなってしまった。すると、サリィが寝返りを打ち、眩しそうに目をしぼめ、そして、目を覚ましてしまった。
「んんっ、あ、あれぇ、ここは?」
サリィは、手で光を遮るようにしてそう言った。
「あなたの部屋よ」
アリサがサリィに声を掛ける。
「ア、アリサさん。お、おはよう、ご、ございます。……あっ!?」
サリィはアリサに返事をすると、すぐに僕に気が付き、布団を捲り上げ、慌ててベッドの上で正座をした。
「ご、ごめんなさい。エ、エリア様、そ、その……」
「大丈夫だよ、サリィ。気分はどう?」
そう言うと、サリィは恥ずかしそうにしながら言った。
「あ、あの、よ、良く眠れました」
「それなら良かったよ。ところで、サリィ、突然なんだけどね、一つ聞いてもいいかな?」
少し悩んだけれど、やはり、火傷のことは、知らない振りを続ける訳にはいかない。彼女には辛いだろうけど、先程、蜘蛛に見せられたサリィの表情が頭から離れない。
「は、はい」
彼女は肩を寄せ、小さくなっている。
「突然なんだけどね、サリィは、身体に火傷の痕があるよね?」
「……」
サリィが黙り込んでしまった。
やっぱり、ちょっと、慌て過ぎたかな?
しかし、サリィは、突然、作り笑いを浮かべた。
「い、いえ、た、大した怪我では、あ、ありません、エヘヘ~」
アリサは、それまで黙ってサリィの言うことを聞いていたけれど、サリィが怪我の事を否定すると、優しい口調でサリィを諭した。
「サリィ、あなた、本当は何か辛い思いを抱えているのでしょ? 私も、そうだったけど、エリア様は全てを受け止めて下さいます。あなたの心も身体も。もう、これ以上、我慢しなくていいの」
アリサは、母親のような眼差しでサリィを見つめている。しかし、サリィは、黙ったまま首を横に振った。サリィの場合は、少し時間が掛かるのかもしれない。ところが、その時、サリィはベッドの上で立ち上がり、長袖スリップの背中のボタンを外そうとした。
「えっ? えっ? わ、私、ど、どうして? な、何で、か、身体が、勝手に?」
「サリィ、どうしたの?」
サリィは、自分でスリップを脱いでいく。
「か、身体が、勝手に、う、動くんですっ! えっ ど、どうしようっ!?」
彼女は背中のボタンを外し、スリップをすっぽりと脱いでしまった。
「ん?」
スリップを脱いだサリィの恰好は、胸にサラシをグルグルと撒いていて、そして、パンツが、な、何んと、現代風のスポーツショーツを履いていた。
へぇ~、サリィのショーツ。いいよね。
「サリィ。それ、サポートタイプでしょ? 色はちょっと地味だけど、でも、カッコいいよね」
「本当ですね。サリィ、あなた、とっても素敵な下着を履いてるのね」
確かに、彼女の身体には火傷の痕があちらこちらにあった。しかし、サリィが、この世界の下着には無いデザインのショーツを履いていたので、そちらに気を取られてしまった。
「は、恥ずかしいっ!」
しかし、サリィの動きは、まだ、止まらない。今度は、胸の晒しを解いていく。
「ちょ、ちょっと、ど、どうしよう、い、いや、いやですっ! も、もう、悪い子には、なりませんっ! ゆ、赦してっ! お、お母さんっ!」
「お母さんっ?」
「お母さんっ?」
ーーーー
へぇ~、サリィのショーツ。いいよね。
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