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100-6-5_王家の秘宝

 マジで! でも、そう言われても、ウィルと普通に話すと会話がはかどらないのは何故だろう?


「どうして、君との会話は念話でしかできないの? それに、ウィルが少女の魂というのなら、ウィルと話せば、少女と会話ができそうなもんだけどね?」


 そう言うと、女性の声は言った。


「あの……これをご覧ください……」


 ん?


 彼女からイメージが伝わってきた。それは、湖底の洞窟の奥にある古めかしい木製の黒い箱の映像だ。


「何だ? 湖底の洞窟だね」


 カリスの方を見ると、彼女も不思議そうな顔をしている。すると、女性の声は言った。


「……この箱がある場所は、少女の呪いせいで、誰かに見つけられないように認識が阻害されてしまっているのです。こうして、敢えて存在をお示ししない限り、そこに箱があるとは、誰にも気付かれないのです」


「そうなんだ……」


 でも、この箱がどうしたというのだろう?


 女性の声は続けた。


「……少女は、ある国の王女だったのです。彼女の意識は、この箱の中にある首飾りにその大半が囚われているあまりに、ウィル・オ・ウィスプを通して表現できる彼女の意識は、夢うつつのように、常にぼんやりとしか現すことができないでいるのです。そのため、ウィル・オ・ウィスプには、王女だった自覚はありません。そして、私も、彼女の強い呪いにより、僅かに念話が可能な程度なのです」


 まだ、良く分からないけど、彼女の言う通りだとすると、妖精と人間の魂が融合しているってことなんだよね? ホントにそんなことがあるのか?


 女性の声が言った。


「この箱は、少女の呪いによって固く閉じられており、誰も開けることができないのですが、しかし、女神様のお力であれば、彼女の呪いを解呪し、この箱を開けることができるでしょう……」


 そうすれば、少女の魂も救われ、声の女性、妖精ニンフも解放されるかもしれないと、彼女は言った。


 なるほど、そういうことか。


 アムが、不思議そうに僕やカリス、そしてヴィースの顔を順番に覗いている。


「ごめんねアム。アムだけ分かんないよね。どうやら、目の前のこの子は、少女の魂と、妖精ニンフが合わさっちゃってて、それで、レピ湖のどこかの洞窟の中にある呪いの掛かった箱を開けて、二人を助けて欲しいって言われてるんだよ……」


 アムに彼女たちの話をしてあげると、アムは、耳をピンと立てて尻尾をゆっくりと振り、「へぇ~」と驚いた。アムに説明した後、ニンフに、「何でそんなことになったのさ」と聞いた。


「……五百年ほど昔の話でございます。一人の少女がこのレピ湖にやってまいりました。彼女は、自分のことをクライナ王家の王女だと話し、妖精を呼び出す儀式を行ったのでございます……」


 女性の声によると、当時のクライナ王国の王女は、魔法の適性が高く、様々な妖精を呼び出すことが出来たと言う。そして、王女の儀式に答えたのが、彼女だったのだそうだ。


「クライナ王国の王女?」


「はい。王女は、満月の夜に、一人、船を漕ぎ出し、レピ湖の中ほどまでやってくると、呪文を唱えました。私は、彼女と相性が良かったのでしょう。彼女が唱えた呪文の波長に同調し、彼女の目の前に姿を現しました……」


 王女がニンフを呼び出したのには、王女の切実な願いがあったのだそうだ。

 

「……彼女は、国王の跡目争いの渦中にあったようです。今まで姉のように慕っていた従姉が、彼女の命を奪うために、彼女に刺客を差し向け、命を狙われたと言っていました。しかし、王女の側近たちは、刺客から王女を守り、反対にその従姉を捕らえたようです。そして、悲しいことに、その従姉は王女を殺そうとした咎で公開処刑されてしまったようでした……」


 公開処刑なんて……。


「……しかし、王女は、自分を責め、自分のことを赦すことが出来ずに、私にこう言ったのでございます。『私は王家の秘宝とともに自らに罰を与えます。湖の妖精よ、願わくば、二度と悲劇が起こらないよう、この首飾りを私の魂とともに、永遠に封印して欲しい!』と……」


 そして、王女はクライナ王家の秘宝とされる首飾りとともに、湖に身を投げたということだった。そして、王女と同調してしまったニンフは、彼女の強い願いに引きずられ、その魂と融合してしまったと言う。


 悲しい話だね。あっ! 男爵がレピ湖の言い伝えって言ってた王家の財宝の話……? う~ん、ちょっと違うか。男爵は金銀財宝って言ってたもんね。


 王女の魂と融合した後、ニンフは、王女の思いをさらに詳しく知ったと言った。


「……王女を苦しめた跡目争いは、決して彼女たちが望んだものではございません。ただ、周囲の取り巻きに翻弄されただけなのです。王女が封印を願った王家の首飾りは、女神ガイア様からの授かりものとして、クライナ王家に代々伝えられてきたものであり、それを所有する者こそが、真のクライナ王である証とされてきたようでした……」


「そうなんだ。その箱の中にね〜。でも場所がどこか分からないんだよね」


 そう呟くと、カリスが言った。


「私ならその場所が分かります」

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