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099-6-4_ウィル・オ・ウィスプ

「僕に会いたい人? ウィンディーネじゃ無いよね?」


「はい。ウィンディーネ様ではございません」


 誰だろう? まぁ、どちらにしても妖精か精霊の類だろうけど……。


 アムがニコニコしながら尻尾を振っている。


 あっ、そうだね。 


「アムは遺跡に入れるのかな?」


 すると、カリスが答えた。


「エリア様と一緒なら大丈夫でしょう……」


 カリスの話では、転移魔法で行けば、アムも遺跡には入ることができるようだ。アムは、背中で手を組んで、覗き込むように僕を見た。


「それなら、アムも一緒に行く?」


「はい、行きます! ヤッター!」


 アムの尻尾が激しく揺れる。それなら、四人で行くとしよう。 

 

 ーーーー。


 転移すると、一瞬で空気が変わった。水の古代遺跡は、相変わらず清浄な気で満ちていて、水が流れるコロコロという音が耳に心地よい。


「へぇ~、何だか気持ちいいところですね~」


 アムが不思議そうに辺りを見渡している。彼女の横で同じように景色を見ていると、テラスの脇に、水の魔石が無造作に積み上げられていた。


「あれ? そこに積んであるの、水の魔石だよね」


「はい、木箱に入らなかったものは、こちらに置いてあります」


  後ろからカリスが、説明した。


「まだ、こんなにあるんだ」


 魔石の量は、恐らく、木箱十箱分くらいはありそうだ。


「仕方ないね。置き場を決めるまでとりあえず、ここに置かせてもらっておこうか」


 水の魔石の保管場所を見つけないといけないね。そんな事を考えていると、カリスが後ろから声を掛けてきた。


「エリア様、こちらです」


 彼女は、そう言ってガゼボの方を指し示した。


 僕を待っているのはどんな存在だ?


 カリスの案内でガゼボの中に入る。すると、見覚えのあるボヤっと光った存在が、うつ向いたままソファに座っていた。


「あれ? ウィルじゃないか」


 ガゼボにいたのはウィル・オ・ウィスプのウィルだ。ウィルは、以前、湖の主の使いとして屋敷にいる僕のところにやってきた小さな女の子だ。彼女は全身が白っぽく光り、髪の毛もゆらゆらと光りながら揺らめいている。屋敷にやってきたときは、幽霊か妖精の類だと考えていたけれど、本当のところ、ウィルがどういう存在なのか良く分かっていない。


 とりあえず、椅子に座って落ち着こう。


 そうして、ガゼボに設えている木製のソファに、ウィルと向かい合わせで、カリス、僕、アム、ヴィースの順で並んで座った。


「僕に用っていうのは、ウィルだったんだね?」


 そう言うと、ウィルは、ペコっと頭を下げた。


「僕に何か用?」


 そう聞くと、ウィルはモジモジとして、黙り込んだままだ。視線も合わそうとしない。そういや、ウィルとは話が進まないんだった。前の時も、ウィルの説明では要領が得られなかった。彼女は自分から話をすることが苦手なようだ。しかし、それでは、話が一向に進まない。腕組して、「う~ん」と思案していると、隣からカリスが言った。


「エリア様。ウィルと話すときは、念話で行ってみてください」


「念話?」


 目の前に本人がいるのに念話か? まぁ、カリスがそう言うからやってみるか。


 そして、今度は念話でもう一度、「僕に何か用?」と尋ねてみた。すると……。


「女神様……。私は、湖に住む妖精のニンフでございます」


「えっ?」


 会話ができた!? 


 カリスがこちらを見て頷いた。カリスにもこの声が聞こえている様だ。


 それにしても、どういう事だ? 女性の声は自分を妖精のニンフだと言ったけど?


 女性の声に向けて念話で聞いてみた。


 ウィルじゃないの?


 声が頭に響く。


「はい。ウィル・オ・ウィスプは、私ではございません」


 自分のことを妖精のニンフだと言った女性の声は、落ち着いた大人の雰囲気を持っている。


 う~ん、意味が分からないんだけど……。


「ウィルが自分のことウィルじゃなくて、ニンフって言ってるよ。ちょっとヴィース、ニンフって何?」


 ヴィースは湖の主だから、ニンフの事を知っているだろう。


 そして、ヴィースが淡々と答えた。


「ニンフは、裸の女の妖精です」


 カリスもアムも、「うんうん」と頷いている。


 裸の女っ!? よ、余計に意味が分からんっ!


「カリスもアムも知ってるの?」


 そう言うと、アムが教えてくれた。


「あたしも会った事ありますよ。ツンドラ大森林の奥に、妖精の国への入口があるんです。オンガ様に、一度連れて行ってもらいました。そこに、ニンフの村がありましたよ」


「本当っ!?」


 すると、カリスも言った。


「妖精の国の入り口は、このレピ湖にもございます」


「妖精の国の入口!」


そうすると、ニンフの村というのは、裸の……。


「そ、そ、そ、そんな国が、あ、あるんだね」


 そこは、天国に違いない! ぜ、絶対、行くべきだっ! 


 頭の中が妄想で満たされる。


 ダメだ! 今はウィルの事を考えないと。この際、ニンフの事は後回しだ。でも、ホント、絶対、行きたい! 今度、ゆっくり時間がある時に、妖精の国を冒険しに行こう。だから、今は、目の前の問題に集中だ。


 頭に響く声に向かって言った。


「えと……それなら、ウィルは誰で、君はウィルの何なの?」


 女性の声には、しっとりとした優しい響きがある。


「はい。少し、説明が難しいのですが、ウィル・オ・ウィスプは、人間の少女の魂なのでございます。そして、私は、ニンフという妖精でございます。しかし、今は……」


 彼女によると、遥か昔、ある出来事があり、人間の少女の魂と融合してしまったのだそうだ。そのため、今、目の前にいるウィルは、ニンフの身体に人間の少女の魂が溶け込んでしまった姿だと言った!


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