絞殺
この世には様々な死因が存在する。射殺、刺殺…
"自殺"
そしてここに自殺をしようとする人間がいた。
…縄…案外、頑丈なんだな…。
スッ…フゥゥゥォォ…あとは、首を通すだけだ。
首を…通すだけ…首……通す…だけ…
あれ、俺なんで泣いて…
や、やっぱり明日にし…
[ガッと足が落ちる。]
はッ…ヒュ……ぅえ゛…
ん゛ぐ…ふ……っ゛ぁ…
[彼の脳内に恐怖が湧き出てくる。背中がゾクッとして痒くなる。全身が一気に冷えてくるのに顔が熱くなる。]
ぃ゛……ぁ……ぁぁ゛ッ……
[もがくほど縄が締まり、息を吸うほど咳き込む。]
(ごぷぽっ……ごぽぽぽ…)
[そして彼は死んだ。]
……んー…はぁっ?!
っはぁ…っはぁ……
あれ、今…何時…?
12:00!?やべぇ、早く出勤しねぇと…いや、連絡…
あ…これ、縄…
っ…!
(おぶっ……ぼべ……ぼどどど…)
はぁ…っがぁ…そうだ。そうだよ俺は…!俺は死んだんだ!
という訳なんです。
「はぁ…自殺して死んだと。いやぁ、でもねぇ?何度も言ってる通り身体に何も以上は無いんですよ…」
で、でも!ほら!ここに痕が残ってるじゃないですか!
「残ってますけど…でも今あなたは一般成人男性の平均よりすこぶる調子が良い状態ですよ。
とりあえずこちらでできることはございませんので、痕が痛くなったりしたらまた受診してくださいね。」
はぁ…どうなっちゃったんだよ俺の体…
どうせ死ぬと思って会社もやめたし…
スマホ解約しちゃったし…
あー!クソ!こんなん生殺しだろ!
こうなったら、ここの交差点で…
(キュルルル…プァー!…プァープァー!)
ナイスタイミングで…って?!お、おい!そこの人!危ないぞ!
聞こえてないのか?クッソ!
[彼が手を伸ばす。その距離20m程。ただ、届かない。…その筈だった。]
(ギチチチ)
…え?な、なんか…掴んでる?
(グググ…グチチチ)
引っ……張れ…!…っらぁぁあ!
(キュルルルルッ!ルルルルッ!…キィィィ……)
はぁ…はぁ……は、どういう事だよ…はぁ…。
手から何か出…ては無いもんな。
なんなんだよ、もう…
…おら!
(…)
…ふん!ほっ!はぁ!
(…)
何も出ない…さっき俺、どうやってやったんだ?
たしか…
んぐぐぐ…力を…込めて……
(ベコッ)
おぉ!空き缶が凹んだ!
まだまだ…ぎいいいい!んごぉぉおお!
(バゴンッ)
ふぅ…はぁ…ひぃ、疲れる…疲れるけど…なんか使えるようになってる!
ってまぁ、こんなの何に使うんだって話だよな…
いや待てよ、コレを利用したら力仕事が楽に…?
新しい稼ぎ方が見つかった!
「その必要は無いですよ」
そっかそっか、そんな必要ないかー
…って誰!?
「私は自死能力者です。貴方の保護に来ました」