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破綻する進行  作者: 彼岸花


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06

 シンギュラー発見から一千年後。人類文明は、いや、生命は絶頂期を迎えた。

 人類社会は絶え間なく発展した。縦に積み上がる高層都市は、ついに宇宙まで進出。膨大なエネルギーと資源を日々生み出す。更に数十万人が生涯を通して生活可能な、巨大宇宙コロニーの建造も達成した。

 また、この時代の人類は鉄よりも重い原子も(簡単ではないが)核融合により作れるようになった。重元素を用いた多様かつ高性能な素材の量産も可能となり、新たな超硬度素材も続々と開発。コロニー内部でもシンギュラー栽培と核融合が行われ、生産された資源を用いて新たなコロニーが建設・増築されていく。

 おまけに自然環境も回復した。

 惑星上の人類社会が『縦積み』となった事で、人類が占有する土地面積はほんの少しで良くなった。解放された土地は野生生物保護区となり、人類が開拓する前の環境へと調整された。人間が『手動』で気候をコントロールするよりも、生態系に任せる方が安価で安定しているという計算結果に基づく判断だ。

 自然の回復力は凄まじく、百年もすれば多くの土地が原生の環境へと回帰した。厳しく言うなら、完璧な回復とは言えない。長年続いた環境破壊によって絶滅した種はあまりに多く、いくつかの外来種による生態系の乱れも残っている。だが、明らかに一千年前よりは、かつてこの星を覆っていた、豊かな生態系が戻りつつあった。

 自然環境の回復は人類にも恩恵をもたらした。魚介類などの天然資源が回復し、比喩でなく取り放題となったのだ。今の人類には優れた養殖技術があるので、今更天然資源に頼らなくても良い。生きるだけなら農作物と家畜のみでも十分なので、魚介類に拘る必要もないだろう。しかし丸々太った魚や貝の美味しさは、他に変えられないものだ。それが豊富に食べられる事は、人々にとって幸福な出来事に違いない。山菜や珍味にも同じ事が言える。

 無論増えに増えた今の人類が本気で乱獲すれば、回復した天然資源はあっという間に壊滅してしまう。だから科学に基づいた制限は必要だ。しかしいずれはそれも必要なくなるだろう。

 何故ならコロニー内に自然環境を再現出来るからだ。シンギュラーによって作り出された大量の水、その水を燃料にした核融合のエネルギー、そして無から創り出されるあらゆる原子……理論上人類は無から自然を、その集合体である『星』を作れるようになったのだから。

 今はコロニーの一部で小さな自然公園を作るのが限度。しかし時間さえ掛ければ、いずれ大自然が生まれる。普通であれば無から有が生まれる事がないように、()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 それを果たすのは百年後か、二百年後か……どれだけ時間が経っても、それすら大した問題ではない。資源の枷を取り払った今、人間という種に寿命はないのだ。無限の資源が永遠を保証する。例え恒星が燃え尽きても、母なる星が砕け散っても、シンギュラーさえあれば新たに創り出せる。

 シンギュラーによって、人類に際限のない繁栄を手に入れた。

 誰もが、そう信じていた時代だった。

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― 新着の感想 ―
ここまで一気に読ませていただきました。 まさに『人類大繁栄』な感じですが、この回の最後の一文がどうにも引っ掛かりますね(;^ω^)
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