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城塞都市ケルニヒベルグ⑩

 その祝勝会はまさに街を上げての大宴会だった。城塞都市オストプロシアに小夜やエルフェリンを除いて軍属でない者はいない。さらには全員男性、そして多くは若者。そこでの酒宴となればまさにやんちゃなバカ騒ぎ、この極寒のなか裸になり、ビールを浴びせあう兵士たち。周りに煽られ無駄にとんぼ返りを繰り返し、胴上げではお約束のように胴上げしたものを下に落とし、その姿に笑い転げる。男子中学生が羽目を外しているような光景が小夜の眼前に現れた。


≪このお祭り騒ぎも生きてこそ。生きていられたからこの瞬間を謳歌している。≫


 小夜は生命そのものとも言えるような若い男たちと救えなかった兵士たちと対比しそれを悼んでいた。


 そして広間には領主の計らいで取り寄せられた塩漬け肉や腸詰肉や干し肉が焼かれた。そのそばに設置されたテーブルには干しブドウや(あんず)、ナッツが所狭しと並べられた。樽になみなみと入ったワインがその(かぐわ)しき芳香(ほうこう)を振りまき、貴重な火酒が惜しげもなく振る舞われていた。街をあげての大宴会、そしてこのお祭り騒ぎをにこやかに眺める小夜。数珠つなぎの腸詰肉を釣り糸のように垂らし、それを釣られた魚のように下から食いつくエルフェリン。己が導師(メンター)の食べ物や飲み物を絶やさぬよう、小夜の所と宴会会場中心を行ったり来たりするヴィルヘルム。そんなところへ療養院のヴェルナーが呼びに来た。


「すみません。看て欲しい人が。」


 小夜は即座に反応した。


≪わたしはこれからも頑張る。救えなかった命のためにも。≫


 腸詰肉に夢中なエルフェリンを宴会場に残し、ヴィルヘルムと小夜はヴェルナーの後を追った。

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