燃える水差し⑥
「以前は同じものを油で試してみたのですが、うまくいかなくて。油に引火しなかったり、水差しの表面にへばりついていた油に火がついて火傷したりで。」
新しい武器の開発に有頂天になるかと療養院の皆に期待されていたゲオルグは意外にも冷静だった。兵としての彼は沈着冷静なのかも知れないと小夜は思った。小夜たちがみるゲオルグとは違って。小夜はアルコールの揮発性を考慮し、栓をした布に火をつけるのは敵に投げる直前が良いとゲオルグに助言した。アルコールが温まると瓶の中で液体から気体に変化し、内部の圧力が上がって栓が飛び出してしまうのを避けるためだ。
「導師・・・・・・。」
先ほどまで冷静であったゲオルグは消え去り、いつもの激情家に戻った彼は小夜の助言に涙を零した。ヴィルヘルムはどのタイミングでこの会話を遮ろうかと模索しつつも、ゲオルグの閃きには素直に感心していた。
ゲオルグの画期的なアイデアによる新兵器、燃える水差し。将校たちもその有用性に驚き、結果領主自慢の蒸留所はしばらく高濃度アルコール製造専用となった。
まもなく城塞都市ケルニヒベルグ周辺の呪われし大地は雪に覆われ、破傷風によるその毒を封印される。いよいよ城塞都市ケルニヒベルグ攻略戦を再開する日は近い、そして新たな兵器を手にした彼らは決意を新たにするのだった。




