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燃える水差し③

 現在小夜たちがいるこの世界において世の中を照らすものと言えば、昼は太陽、夜は月、室内を照らすのはランプやろうそくだった。ランプに使われるのは主にオリーブオイルだったが、室内で使うには(すす)がでるし匂いもあった。ろうそくに至ってはその主成分は獣脂(じゅうし)であり、それこそ煤も匂いもきつかった。このためこの世界では活動は昼のみに行い、夜には淡い月明りを頼りに生活するか、さっさと寝てしまうかの二択を迫られていた。しかしこの世界に比べて明るい夜になれていた小夜にはどうにも不便で、消毒用に作っていたアルコールの一部を療養院や小夜の館での照明に利用していた。アルコールランプはオイルランプやろうそくに比べて圧倒的に煤も匂いも少ない。そして城塞都市オストプロシアの建物は城壁と一部の建物以外はその基礎を木材に頼っていたため、小夜は火災が起きないように水を貯めた洗面器にアルコールランプを浮かべて利用していた。防火のため用意した水はアルコールランプを浮かべる水面で光を反射し、その明るさを増す効果も得られていた。



「なるほど、さすがは我が導師(メンター)。素晴らしいお考えです。」


 まるで自分のことかのように胸を張りながらヴィルヘルムが誇らしげに語った。小夜に教えられて療養院でいつもこのアルコールランプを使っているヴェルナーとテオドールは口を挟むのを辞めておいた。ヴィルヘルムがあまりに得意気であったので。


 しばらくの沈黙の後、ゲオルグが口を開いた。


「アルコールは燃えるのですか?」


「はい、ご覧になりますか?」


 小夜がアルコールを取りに行き、ヴェルナーが厨房へ種火を取りに行った。そして療養院の石畳にアルコールを少量垂らし、そこに種火を近づける。すると幻想的な青と橙を混ぜたような炎が石畳の上で踊った。


「なんと!!」


 ゲオルグは先ほどと同じ感嘆を口にした。どうやら彼の脳裏に何かが閃いたようだ。

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