感冒⑬
「この配分がむずかしいんだよな。」
小夜の館その一階にある暖炉の前でヴェルナーがぶつぶつとぼやいていた。ヴェルナーは感染後三日ほどで本調子を取り戻し、すぐに仕事を再開した。続いて熱に倒れたテオドールの代わりに。
腹腔内水分投与にて脱水が改善されたエルフェリンは、まだ頭痛と咽頭痛、繰り返す咳に苦しめられてはいたが、どうにか経口摂取が出来る様になってきた。領主が心尽くしの贈り物としてくれた貴重な蜂蜜を、小夜の指示通り解熱鎮痛剤効果がある柳の樹皮を煮出した湯に溶かす。脱水の危機は回避されたものの、いまだ頭痛とのどの痛み、咳に苦しむエルフェリンではあった。ヴェルナーを困らせているのは、煮出しに使う柳の量が多いと嫌がってエルフェリンは飲まないし、柳が少ないと効果も薄いという事実。なにしろ今のヴェルナーは忙しい。エルフェリンは回復にむかっていたのだが、そのあと熱に倒れたのはテオドールとヴィルヘルム、そして小夜。ヴェルナーはみんなの世話をその一手に引き受けていた。ヴェルナーが作った柳煮出しの蜂蜜湯を値踏みするように眺めるエルフェリン、受け取っても飲むのを躊躇している。
「飲みなさい。」
普段とは打って変わったガサガサ声で小夜が言った。今度は小夜がベッドに寝かされ、エルフェリンが椅子で毛布にくるまっている。小夜の声に首を竦めたエルフェリン、回復した彼女の首は柔軟性を取り戻していた。そしてエルフェリンは仕方なく柳煮出しの蜂蜜湯を嫌そうに啜り始めた。




