感冒⑥
エルフェリンの容態は改善せず、悪化の一途をたどった。柳の樹皮は見るだけで嫌がり、決して口にしようとはしなかった。そして何より小夜を困らせたのは、食べ物も飲み物も受け付けないことだった。喉が痛むのか食べ物を口に入れるのも嫌がり、痛む首を振るのに代わり手で食べ物を押しのけてしまう。せめて水分補給をと口に水を含ませても、呑み込めず口からだらだらと吐き出してしまう。このままでは髄膜炎が治癒する前に脱水や低栄養でエルフェリンの体が参ってしまう。
≪胃瘻かな?≫
体表から胃に穴をあけて管を通し、栄養や水分の代替輸送路となる胃瘻、これで経口摂取が難しくなった兵士たちを救ってきた小夜。点滴が手に入らないこの世界では、経口摂取ができないエルフェリンに水分や栄養を与える方法は小夜にとってこれしかないと考えられた。エルフェリンは高熱が続き水分も取れていないことからエルフェリンはじょじょに呆然とし始め、口から何か入れようとする時以外はされるがままだ。胃瘻造設の際に暴れることもないだろうと小夜は高を括っていた。エルフェリンの涙は流れてこなくなり、眼窩は落ちくぼんでいるように見える。脱水が進行しているのは明らかだった。小夜は二階の窓から顔を出し、ヴィルヘルムを呼んで欲しいと通りすがりの人に依頼した。
≪エルフェリン、きっと大丈夫。≫




