感冒③
ゲオルグがうがいと手洗いの重要性を説いて回った結果、兵士たちはそれをすぐに受け入れた。体力のある若い彼らではあるが、やはりインフルエンザの高熱や咽頭痛、倦怠感には悩まされていたようだ。とは言え集団生活を兵舎で行う彼らは次々と感染していっているらしい。そしてゲオルグからの話を聞いて小夜は驚いた。
「誰が教えたか知りませんが、熱が出るとみんな柳の樹皮を齧るんですよ。」
どうやら柳を齧ると熱が下がってのどの痛みが緩和されるらしい、それが過ぎると腹の痛みを訴えるものもいるようだがそれなりに有効であるようだ。
≪そう言えば柳の楊枝を使うと歯の痛みが止まるって愛用してた患者さんいたな。後で病棟薬剤師が説教してたっけ、柳にはアスピリンの類似成分が含まれているからやめなさいと。≫
人間は科学が発達していなくてもその経験から薬効を学ぶことができる。それは小夜のいた世界でも、そしてこの世界でも。小夜は改めて感心した。そして感染が拡大している兵舎に何度も出入りしているのに、全く感染する気配が見られないゲオルグ。
「ゲオルグ殿はきっと風邪を引かない特異体質をお持ちなのですよ。」
ヴィルヘルムの嫌味を誉め言葉と捉えて笑うゲオルグ、その光景を見て小夜は、小夜のいた世界でも、そしてこの世界でも同じようなことわざがあるのだろうと理解した。




