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感冒①

 すでに伝説となっていた城塞都市ケルニヒベルグ周囲の呪われし大地、これが小夜に破傷風菌によるものと看破(かんぱ)され、それは呪いではなかったことが兵士たちを安心させた。しかしながらこの破傷風菌を除去するのは難しいため、破傷風菌に汚染された土壌が雪と氷に覆われる冬まで城塞都市ケルニヒベルグ攻略は延期されることと決まった。そしていつの間にか城塞都市オストプロシアに秋が訪れていた。



≪この世界にも美しい四季があるのだなぁ。≫


 窓から見える落葉樹が赤や黄色に染まり始めているのを見て、小夜はしみじみと実感した。小夜の体感的に短い夏が終わり、エルフェリンの集めてくるどんぐりが増えるのを微笑ましく見つめながら、冷える朝晩には欠かせなくなった暖炉にあたる小夜。ベッドの中では驚くほどに温かいエルフェリンが、小夜の体にその余りある温もりを分けてくれていた。このところ猪頭鬼(オーク)の襲来も少なくなり、遠征も行われないから療養院は暇であった。とはいえ昼にはヴェルナーとテオドール、ヴィルヘルムと療養院で昼食を摂る、それが小夜とエルフェリンの日課であった。


「そろそろ出かけるよ。エルフェリン。」


 嬉しそうについてくるエルフェリンは配給された厚手の外套を嫌って、黒いワンピースに身を包み白いエプロンを下げた、会ったときと同じ格好をしていた。小夜が余り衣で作った即席マフラーすらエルフェリンは巻く事を拒んだ。


「風邪引いたって知らないからね。」


 エルフェリンは、大丈夫だよと言わんがばかりにそのモフモフした尻尾を振った。


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